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『現場論』

この記事では、「Project Management/チームで仕事を進める」というテーマに関心のある方にオススメの書籍をご紹介します。

「現場力」「ねばっちこい経営」「見える化」など現場を強くする著書をたくさん書かれている遠藤功さんの10年ぶりの著書です。

私が主催する社内の管理職向けの読書会、中尾塾でも「見える化」「ねばっちこい経営」は課題図書にしています。

遠藤さんが代表を務めるローランドベルガー社の方と打合せをする際に、私が本好きで、遠藤さんの本をたくさん読んでいることをご存知で献本下さいました。とても参考になる本で、さっそく企画室の組織長に読んでもらうよう紹介しました。


現場には3つのレベルがあり、現場力は3つのプロセスで進化します。それを6つのケースと15の事例で「非凡な現場」の実践例を紹介してくれます。
現場には3つの能力があります。


1保つ能力(capability to maintain)
2よりよくする能力(capability to improve)
3新しいものを生み出す能力(capability to innovate)

この3つの能力は多かれ少なかれ全ての現場に存在します。ただし、コアの能力がどれなのかにより現場力のレベルは大きく異なります。そして大半の現場は1保つ能力がコア能力になっているのです。そして、これら3つの能力の発揮度合いで現場は3つのレベルに分類が可能です。上位から


1「非凡な現場」(extraordinary gemba)
2「平凡な現場」(ordinary gemba)
3「平均以下の現場」(mediocre gemba)と分類できます。

遠藤さんが様々な良い現場だと言われるところを回って体感したのは「非凡な現場」は、その中でもせいぜい10%程度しか無いそうです。
「平凡な現場」のコア能力は「保つ能力」です。現状を維持することが大半で、より良くする能力を発揮するのは個人の努力に依存しています。そして最低の「平均以下の現場」では、「保つ能力」すら疑問符がつく状態です。

その結果、品質不良や納期遅れなどのトラブルを起こします。最高位の非凡な現場は「保つ能力」に加えて「より良くする能力」「新しいものを生み出す能力」も保有し、競争力強化に繋がっているのです。

遠藤さんは、「平凡な現場」がダメだと言っているわけではありません。レストランに例えると「レシピ」がしっかりしていれば、きちんと「調理」ができ、その味を保つ事が出来るのですから、競争に勝つことができます。ただ、「レシピ」は容易に模倣されることがあり、「レシピ」に加えて現場である「厨房の中」が差別化されていないと「並みのレストラン」になってしまうと言うのです。まったく同感です。

前部署では、これを強く意識していました。「非凡な現場」と「平均な現場」を分けるのは動くと言う「身体能力」に加えて、高い「思考能力」が不可欠だと言います。この両方を保有した「知識創造主体」になること求められます。

このような現場にはナレッジワーカを生み出す「人材育成主体」としての顔、そしてナレッジワーカが継続的改善を行う「業務遂行主体」の顔に加えて、イノベーションを起こし続ける「価値創造主体」の顔があるのです。

これら複数の顔を持つ「非凡な現場」になるためにはどうすれば良いのでしょうか?改善活動を行っている会社はたくさんあります。

しかし、現場にはやらされ感があり、継続すると形式化することも少なくありません。これを防ぐには戦略的必然性(何のために」その活動を行うのか?と信条的必然性(何にこだわってその活動を行うのか)の両輪が必要で、これらにより合理的な必然性が生み出されるわけです。遠藤さんの別著書の「ねばっちこい経営」にもありましたね。

これを第一段階として、成功体験を積む第二段階を経て、第三段階になり組織能力となるわけです。組織能力にできればそれが企業文化として根付き、現場から新たな戦略が生み出されるようになります。
このような段階を生み出すには、現場がより良くする循環を持ち、点の活動を線にして面にできることが必要です。即ち「標準」➡︎「きづき」➡︎「知恵」➡︎「改善」そして➡︎「標準」の循環です。そして、その循環を支える「土台」として「阻害要因の除去」「報酬」「競争」「学習」の4つが必要になるのです。

ケーススタディとしてデンソー、ヤマト運輸、住宅金融支援機構、サンドピック瀬峰工場、良品計画、天竜精機などが取り上げられています。
そして最後にこれらのボトムアップの組織を生み出すためには、理と情のマネジメントを活用しトップダウンからしかスタートしないとあります。さっそく自組織、特にスタッフ組織で実践したいと思った本でした。

お勧めです。




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