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2016年 96冊目『新・観光立国論』

※以下は2016年にFBに投稿された内容です。

日本在住25年、ソロモン・ブラザーズのアナリストだったデービッド・アトキンソンさんの本です。

じゃらんリサーチセンターのSさんに紹介してもらいました。

いやー、日本の観光の可能性と、現在のイケテナイ加減と、現在の戦略のマッチの無さがよく分かる目からうろこの本でした。

数字ベースの論理的な分かりやすいストーリーです。

まず、以下の内容をデータで示しています。

・世界の国でGDPを伸ばしているのは、ある程度先進国になっている前提で、人口と相関がある。

・移民を受け入れない(外国人にとっても日本語など壁が高い)日本がGDPを伸ばすのは難しい。

・ただし、人口が減っても大きくGDPが減るわけではない。

・では、どうするのか。短期移民=短期的に遊びに来る観光客を増やすと良い。

■日本の観光収入の現状

・潜在力ランキングは、世界で9位の170億ドル。ただし、上位15位の平均の3分の1の観光後進国。

・国際観光客到着数ランキング(2013年)

 トップ3はフランス、アメリカ、スペイン

  日本26位

アジアでは中国4位、タイ10位、マレーシア11位、香港12位、マカオ19位、韓国22位、シンガポール23位

・国際観光収入ランキング(2013年)

 トップ3はアメリカ、スペイン、フランス

  日本21位

アジアでは中国4位、マカオ5位、タイ8位、香港9位、マレーシア14位、香港12位、韓国17位、シンガポール18位

世界で認められるアジアの観光立国は、中国(香港、マカオ含む)、タイなのです。

■市場規模

・観光業は世界のGDPの9%。雇用もほぼ9%。輸出額の6%(全サービス輸出額の29%)

・国際観光客数は年平均3.3%増加。2030年には現在の1.7倍、年間18億人規模。=成長が約束されている

・日本はGDPの0.4%

■観光立国の4条件

・気候、自然、文化、食事・・・それぞれが多様であることが重要「・・・・もある」

 ・アメリカ、フランス、スペインは4条件。

 ・中国は4つだったのが、自然環境破壊が足を引っ張っている。

 ・タイは気候のみ単一だが、他は多様。

 ・日本は4つを充たしている。特に以前の文化を残して、更に加えているのは珍しい

■日本の観光の勘違い

・文化財への投資が1ケタ少ない。観光資源がまったく整備されていない。
→産業として下に見ている。

・国や大手企業のホームページで

 「国の知名度」「交通アクセス」「治安のよさ」が重要とあるが、これを理由に観光客は来ない

例えば治安の良い国ランキングのトップ10(日本は8位)で多くの観光客を集めているのはオーストリアのみ

 例えばおもてなしもピントはずれ

日本のおもてなしは、一般の人が親切という事。
ホテルやレストランの接客レベルが高いわけではない。

また、おもてなしは、国によって大きく感覚が違う

■観光立国に必要な事

・すでにある観光資源の魅力を引き出し、観光客が求める事をやる・・・効果が出る。大事なのは総合力。

■観光客を知る

・日本に来る外国人観光客トップ5は台湾、韓国、中国、香港、アメリカ

  国ごとにニーズが異なる。

  台湾:テーマパーク、旅館

  韓国:日本食・・・観光に興味なし

  中国:ショッピング

  アメリカ:日本食、自然(体感、ツアー)、歴史(体験、鑑賞)

・上客が来ない(1人あたり観光支出ランキング)

  トップ5はオーストラリア、ドイツ、カナダ、イギリス、フランス

  日本には来ないがタイには行く。

中国は1国で見るのではなく、省別で大きく異なる

・滞在日数が増えると、観光客は支出する

・各国の官公庁は、国別の対応マニュアルを作成している

 イギリスの例

 ・カナダからの訪問客をアメリカ人と呼んではいけない

 ・面識のないフランス人には微笑みかけたり、目をあせたりしてはいけない

 ・日本人にははっきりノーとは言わず、別の表現を使う

・ツーリストトラップ(行ってみたらイマイチだった)

 ・ワースト6位は東京:コンクリートだらけで日本らしさや歴史が無かった

・外国人向けの不足

 ・税関のカウンター(日本向けがガラガラでも外国人向けに開放しない)

 ・飛行場からの終電の早さ(都心に行けない)、始発の遅さ(間に合うけれど買い物できない)

 ・チケットを日本の小銭でないと買えない(カードで買えない)

 ・外国人向けのHPのイベントは直近のみ(平均112日前に検討しだす)

 ・観光地でごみを捨てる場所が無い

 ・価格の多様性が無い

   金持ちにも並ばせる、ホテルも高いのが無い

 ・観光地の説明不足

   説明看板、多国籍ガイド、高度なガイドが無い

■イケテイル兆し

・根津青山美術館:充実した外国語の説明

・日光東照宮:多国語対応のガイドブック

・ニセコ:一大リゾート

・桂離宮:充実した外国語の説明・・・無料なのはもったいない

・奈良:ソフトバンクと組んで、アプリで説明

・Gear京都:夜に各種シアター

日本は 外国人観光客を次のように増やす計画をしています

 2015年:2000万人:3.5兆円:@17.5万円

 2020年:4000万人:8.0兆円:@20万円

 2030年:6000万人:15.0兆円:@25万円

国内観光の規模が20兆円ですから、大幅に伸ばそうと考えています。

きちんとセグメントをしてコンテンツを整備してプロモーションが必要ですね

しかし、これ読むと、我々のトンチンカンさがよく分かります。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。


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