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2016年 46冊目『2020年世界経済の勝者と敗者』

※このブックレビューは2016年にFacebookに投稿された内容です。

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とアベノミクスの理論を考えたと言われるイェール大学名誉教授の浜田宏一氏の対談をまとめたものです。

ちょうど、先日安倍晋三首相が消費税率引き上げを延期すると決めたらしいという記事が載っていました。まさに彼らの意見通りです。

2人は1970年台前半にマサチューセッツ工科大学(MIT)で共に学んでいたそうです。当時のMITはハーバードと双璧の経済学の殿堂になっていたそうですね。

本書には、4つのテーマが書かれています。それは、アメリカの出口戦略、日本のアベノミクス、ヨーロッパの解体、中国バブルの深度についてです。
アメリカの出口戦略の章で興味深かったのは

・20年以上前のこと。経済学者のデヴィット・カードとアラン・クルーガーは、それぞれの州が最低賃金を引き上げると、それが実質的に労働市場の実験となることを発見しました。最低賃金の引き上げをしなかった近隣州が対照群となるわけです。この分析の結果、都市伝説の最低賃金を上げると職が失われるという証拠は、一切見られませんでした。

労働者はモノではなく人間なので、より多くの賃金を支払えば、モラルの向上や離職率の低下、生産性の上昇といったメリットがあるわけです。

こうしたメリットは、労働コストの増大が生む直接的な影響を相殺するモノなので、結果、最低賃金の引き上げが職を失うことにつながらないのです。実感と合っていますね。

日本のアベノミクスの章で興味深かったのは
・女性活用とシニア活用で労働力減少を少しでも軽減し、その間に少子化対策をし、移民について検討をすると言う、極めて王道が必要である。
当然ですね。

・移民については、ゲストワーカープログラムなどから始めると良い。
なるほどですね。
・消費税率引き上げは絶対不可。こうなりそうですね。
・日本はデフォルトリスクがないので格付けはAAA。
・実際日本の利払い額は、フランスのそれより少ない。

ヨーロッパの解体の章で興味深かったのは
・国の運営は別なのに、通貨を統一して運営するのは極めて難しいということ。ギリシャの例が示していますね。打ち手が限られてしまうのです。・ユーロを作った事は、2番目に最悪のことで、最悪のことは今更ユーロを止めることです。困ったものです。

中国バブルの深度の章で興味深かったのは
・中国はバブル崩壊の真っただ中にある。日本がバブル崩壊した頃、「日本は経済をコントロールしている。それが分からないのは、バカな欧米の経済学者だけだ」と言っていた。この日本という言葉を中国に変えた状態がまさに今の状態。
ただ、中国のバブル崩壊は日本に大きな影響があります。
この本では一党支配をネガティブにかいていますが、これが日中の大きな違いです。なんとかコントロールしてほしいものです。

▼前回のブックレビューです。



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