山田詠美さん著「ぼくは勉強ができない」 小説で心が少し軽くなったこと

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現在3歳の息子は、生後8ヶ月の頃から保育園に通っていましたが、親である私が会社を退職したのもあって(引っ越しなどの家族の事情のため)、約2年間通った保育園も辞めてしまいました。

保育園に通っていた最後の半年は、毎朝のように号泣し「保育園に行きたくない!!」と言い張って、必死に抵抗する息子を置き去るように預けていました。それでも、迎えに行く頃には毎回ケロッとした顔で、友達や先生とそれなりに楽しんで過ごした様子で、これは朝だけのちょっとした苦行なのだと自分に言い聞かせていました。

ただ、そんな朝のイヤイヤだけではなく、年に1回の文化祭では、みんなが歌ってお遊戯している最中にも、1人だけステージで泣き叫び、こりゃ無理だと判断した先生が私の元へ駆け寄ってきて、私もステージへ登壇するはめに。他の親御さんがカメラを回して子どもの晴れ舞台を撮っている最中、いきなり登壇している大人はもちろん私だけで、いったい私はどんな風に人のお宅のカメラに写っているんだろうと、泣きたい気持ちを抑えて笑顔を作るのはそれこそ苦行以外の何ものでもありませんでした。

夏祭りだって楽しいイベントであるはずなのに、1人だけ親にしがみついて離れられないし、偏食で野菜も果物もなかなか食べられなし、人見知りはすごいし。

なぜうちの子だけこんなに育てにくいのだろうか・・・保育園に通ったからこそ分かった、他の子との違いが成長と共に嫌でも見えてくる時期でした。

だけどそれでも、息子なりに、そして私自身も新米ママなりにがんばって通った保育園は、今となっては全てがいい思い出と言えます。家庭以外の息子の世界を広げるきっかけになったし、家の外にはいろいろな人が一緒に生活していることや、親以外の人との関わりを学ぶ場となりました。先生やクラスの友達には感謝しかありません。

そして現在、約半年のブランクを経て、息子は週に1回程度ですが一時保育を利用し始めました。私が就職活動を始めたのもありますが、4月から本格的に始まる新しい保育園への順応を、少しでも早くさせるべきかなと思ったからです。とりあえず半日からスタートしました。

すでに3回利用したのですが、まぁ、相変わらず以前と同様大泣きです。玄関では母にしがみつき、「ママと帰る~!!!」と毎回泣き叫んでおります。でも、迎えに行くと、「今日はがんばれたね!」と誇らしそう。息子は息子なりにいろいろなことに葛藤し、努力もしながら、日々成長しているんだなと感じます。

さて、本題はここからなのですが(前置き長すぎ!)、最近、山田詠美さんの小説『ぼくは勉強ができない』を読みました。この小説、著者の山田さんがあとがきで「大人に読んでいただきたい」と書いていらっしゃる通り、高校生だった自分が、いやこれは中学生の時の自分、これは大学生の時、これはあの時、、、などと過去の自分がリアルに感じて、でもその時は的確に言葉で表現できなかった気持ちや思考が見事に主人公の男子高校生によって表現されていることが多くて。懐かしさと切なさと、なんとなく嬉しさもまじった気持ちで夢中で読み進めました。

主人公の男子高校生が私の過去の気持ちをたくさん呼び起こしてくれたので、心に刺さる部分が多かったのですが、中でも、主人公のお母さんが小説の終盤、主人公の高校生を嫌う学校の先生に対して言った言葉が私の胸にグサリときました。

ぜひとも小説を読んでいただきたいので、本文を丸ごと抜粋はしませんが、要約してみたいと思います。

『息子には、社会の枠組みに外れないように生きることばかり考えて、そこから外れることに怯えて、自分自身の価値観を枠組みに当てはめる人間にはなって欲しくない。人と同じ部分も、人と違う部分も素直に認めて、自分は自分であることを解ること。なにかが起きたとき、世の中の正解から答えを探さず、きちんと自分の頭で疑問に思い解決できること。』

うちの子だけだな、他の子と違って恥ずかしいな、上手にできないのは親である私のせいかな・・・そう感じて息子の行動を恥じてしまった自分。これを読んだとき、私自身が主人公のお母さんに叱責されているように感じ、なんだか目頭が熱くなりました。

保育園が嫌いだって、ステージに上がりたくなくたって、給食の野菜が食べられなくたって、息子は息子。全部上手にそつなくできたら、私は満足なのだろうか・・・。それって私自信は満足でも、息子の気持ちは何一つ尊重できていないのではないか。私の価値観を押しつけて、私の正解を押しつけて、息子の気持ちを置き去りにしてしっかり寄り添ってあげられていなかったと。。。

100人いたら100通りの個性があり、100通りの考えがあり、100通りの行動があって当たり前。

そういうことを、小学生の頃から、恐らくもっと前から集団生活の中で学んできたはずなのに、時折、人との違いがとても深刻で、辛くて、不安や悩みの種になることがあります。そういうとき、知らず知らずのうちに心の視野がとっても狭くなっていて、広い視野でものごとを考えられなくなっていたり、『自分は自分であり、人と違ったっていい』という大切な事実を忘れてしまっていたりします。

私は、この主人公のお母さんのひと言に、心がふわっと軽くなりました。

『息子は息子のままでいい』

子育てで、そして自分が生きていく上で、改めていつも心に留めておくべき大切なことを、この小説が教えてくれました。

ぜひ、一読してみてください。



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