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ハイエナに会いに行く。~ハンピ#2~

まだ日が昇る前にハンピに到着してから村の印象が分からないまま数時間を過ごした

日が昇り村の全容が明らかになると村のあちこちに岩がゴロゴロと転がっている不思議な村だった。

この岩だらけの小さな村は日本ではあまり知られていないが、南インドの人気の観光地らしいのだ。

しかし見た感じ何もない、あるのは岩と人だけである

この岩と人だけの小さな村に観光地としての魅力がどれほどあるのだろうか

僕はそれを滞在した4日間のうちはなんとなく感じただけではっきりと見出すことはできなかった

しかし、今こうして時がたち完全に昇華され、ハンピでの滞在を記す上ではっきりさせたいと思う。

二つ手掛かりになりそうなものがすでに見つかった

一つはハンピに到着して途方に暮れている僕に温かいチャイを出してくれた親切な人間がいるということ

二つ目はサンライズの丘で見た少女の青い瞳から流れる涙

しかし、これらが本当に手掛かりになるのかどうか、それはわからないしまったく関係ないのかもしれない。

それは僕にもまだ本当にわからないのだ。


サンライズの丘で出会ったユウタロウさんと再会したのは昼時で、昼飯を一緒に食べようと誘ってくれたのはユウタロウさんの方だった。

僕はユウタロウさんと別れてから事前に予約してあったゲストハウスにチェックインし早々にベットに倒れ込んだ。

夜間の長距離移動に加え、サンライズの丘を早足で登ったせいで身体があちこち痛く、もう立っているのがやっとといった感じでベッドに突っ伏した

それからは記憶が途絶え、目が覚めた頃にはユウタロウさんから別れ際に交換したLINEのメッセージが入っていた。


昼食を取りながらお互いの経緯を話し、これからどこに向かうのかそれぞれ言い合った。

ユウタロウさんは友人の結婚式でインドまで来たついでにハンピに寄ったという

この後、スリランカによって日本に帰国すると話した。

歳は僕よりも6つほど上で、日本ではエンジニアをしていると話していて、裕福な暮らしをしているようだった

僕とは真逆な堅実な生き方をしてきた人なのだろう、話し方や態度から、知性と教養を身に付けているようで、それでいて厭味のない雰囲気が話しやすかった。

今は独身貴族で、彼女とついこの間別れたばかりだという

なぜ別れたのかと不躾な質問を投げかけると

「結婚はしたくないが、まだ付き合っていたい」と言うとふざけるなと怒鳴られ、そのまま別れることになったらしいのだ。

「そりゃ、そうなるよね」と自嘲した。

なんともユウタロウさんと話していて、雰囲気から伝わってくるものから想像し難いエピソードだが、こういう一面もあるのだと親近感を憶えるとともに僕は爆笑した

その彼女からすればたまったもんじゃないだろが。


そんな話をしていると、隣の席にフランス人の家族がやってきた

四十代ほどの夫婦に、まだ小学生の低学年ほどの娘が二人の四人家族だった。

誰からともなくその家族と話すようになって、ユウタロウさんがなぜここに来たのかと聞いた

すると奥さんがこう答えた

「いろんなところを家族で旅してるの、その中でこの子たちにいろんなものを見せてあげたいのよ、その中の一つにハンピがあったのよ」

ユウタロウさんが僕にそう通訳してくれた。


それから昼食を食べ終え、ユウタロウさんがオートリクシャを雇ってこれからこの辺りを観光するから一緒にどうかと誘ってくれたのでお言葉に甘えて同行させてもらうことにした。


つづく








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