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ハイエナに会いに行く。~ハンピ#5~

ハンピという街に4日間滞在してなぜハンピが南インドの観光スポットになっているのか不思議に思っていた

もちろん世界遺産があるからという理由で訪れる人は少なくないだろう

しかし足を運んでみようかという動機にはなるのかもしれないが、失礼だがこれぐらいの世界遺産ならインドの中でも探せばいくらでもあるはずだ

現に滞在した人の中でネットを含め、感想を見聞きした限り世界遺産が見ごたえがあったということを言っている人はほとんどいない

それに世界遺産だけで人を引き寄せられるほどの影響力を持っているならばもっと有名になっていないとおかしい

日本人の中でハンピという村自体聞いたこともない人がほとんどだろう

僕も南インドに来て初めて知った。

そんな無名なハンピという小さな村に訪れた人たちが口をそろえて南インドに行ったならば必ず行った方がいいという理由はなんなのだろうか。

僕はそれを二つ見つけることができた。

一つはやはり人だろう

インドでありながらあざとさが一つもないのだ

インドを旅していると人を信用できなくなる。

それは毎日のようにぼったくられたり、騙されたりするからだ

そんな旅の途中でハンピに訪れると今までのインド人との格闘が嘘だったかのように穏やかな気持ちで村人と接することができる

特に僕のようなインド初心者にとっては安らぎの場であった。

もう一つは村全体の営みだろう。

朝の日の出をサンライズの丘で見たときは本当に神秘的だった。

丘の下には大地が広がり大小の岩が一面に転がっている

(なぜこの村にこんなにも岩が転がっているのか未だにはっきりとしたことが分かっていないらしい)

その目線の先には小高い山の稜線が連なりそこから揺れるように昇る朝日を見たときは手を合わせて拝みたくなるような気持になった。

その光景を同じ日に見ていた、白人の少女の涙が印象的だった。

そこから朝が始まり、村中の店が開きだすころから昼過ぎにかけては旅行客でにぎわう

いつもが日曜みたいだ。

しかし落ち着いたもので、バンガロールのように人でごった返すことはない

昼過ぎになると子供たちが学校から帰り、裸足で元気に走り回っている

道を歩いているとぐちゃっという音とともに柔らかい生暖かい感触がサンダル履きの素足から伝わってきた

下を見るとヤギの糞を踏んづけていた

右足がヤギの糞まみれになっているのを小学生ほどの女の子三人に笑われながら近くの宿に駆け込み水くみ場で流してもらう

そんな体験を近くのカフェに入り居合わせたアメリカ人と台湾人と三人で話し大笑いされると、ヤギの糞を踏んづけたことも”うん”が良かったのかもしれないと思う

夕方になるとサルと人間の格闘が始まる

Y字の枝で作ったパチンコを駆使しサルにヤギの餌を奪われないように本気で奮闘している大人たち

大人たちのパチンコ玉をあざ笑うかのようにするすると木から木へと身軽に移動し餌に近づくサルたち

いつも日が暮れる頃には引き分けで終わる戦いを毎日のように繰り返している。

違う日はマータンガヒルに登って夕日が沈むのをサルと共に眺める

こうして一日が終わり、また朝を迎える

何もない村の中で一日一日違った目新しい日を送るのは難しいが、観光客という立場でありながら、村人の実生活を間近で見られるのもハンピならではだろう

インドという国の中で観光客が穏やかに過ごせる場所がハンピという村で、秘境と呼ばれる所以はこういったことにあるのではないだろうか。










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