ハイエナに会いに行く。~ハンピ#4~
ハンピの村の男たちには日課がある。
夕方、何もすることが見当たらず屋上で夕日が沈むのを見ていると、足早に宿の主人が血相を変えて階段を上がってくる
よく見ると手には二股に分かれた枝木にゴムを付けたパチンコを持っていて、屋上の床に並べて置いてある石ころを拾い上げおもむろに外に放った
その瞬間キーッという甲高い声と共に大きな木がバサバサと音を立てて大きく揺れるのと同時にサルが隣の木に飛び移った
僕は主人にモンキー? と言うと
イエスと言い、今話しかけないでくれと言わんばかりに何発もサルにめがけて石ころを放った
どうやらサルは家畜のヤギの餌を狙っているようで一向にそこから退散しようとしない
しばらくして主人のほかに別の男たち数人も加わって応戦した
人間対サルの戦いである。
やがて主人のパチンコ玉が一発サルに命中した
しかし、サルは一発当たったくらいで退散するわけもなく、うまく木に隠れながら獲物を狙っている
よく見るとサルは想像以上に多く、いたるところに身を隠していて、中には子供を連れて戦っている強者さえいた
サルも生き抜くために必死である。
サルがヤギに近づいたかと思えば男たちが一斉に石を放つ、するとサルは一歩後退したかと思うと別のサルが隙をついてヤギの檻の中に手を伸ばし餌を奪おうとする
しかし、それに気づいた人間がまた石を放つ
そんな熾烈な攻防が夕方からほとんど毎日繰り広げられた
しだいにあたりが薄暗くなり向こうの空が幕が下りるようにオレンジから紫に変わるころ人間対サルの攻防も明日へ持ち越しとなるのだ。
そして、主人は道に転がっている石ころを拾い、屋上の床に並べ明日の戦闘の準備を整え日課を終える。
僕はこの戦いを楽しみに滞在中は夕方になると屋上に上がった
人間の武器がお手製のパチンコというのが面白い
宿の主人もいつもは優しそうな穏やかな顔をしているがこの時ばかりは人が変わったように鬼の形相でパチンコを放っている姿も見ていて面白い
お前もやってみるか? などとは決して言わない
むしろ、遊びではないのだあっちに行ってくれ、というような雰囲気を醸し出しているのがまたスリルがある
この光景を見ているだけでもハンピに来た甲斐があると思う。
つづく
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