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日米のフォーカスグループインタビューの違い

米国のマーケティングリサーチ企業から日本のマーケティングリサーチ業務として、「米国と同じような対象者をリクルートして、フォーカスグループインタビューをしてくれないか。」という依頼が時々やってきます。

日本の事情をよく知る欧米の企業であれば、調査の目的を伝え、グループインタビューの質問内容や質問の順番(いわゆるインタビューフロー)を決める裁量を持たせてくれるのですが、たまに英語のインタビューフローを機械翻訳したものが送られ、その通りにインタビューして欲しいという依頼がくることがあります。もちろん、あまりにも不自然な質問は、インタビューを行う前に「○○○では、答えに詰まる場合がありますよ。」と、黄色信号を点灯させ、表現を変えたり、質問を変えることができないかを確認します。

米国生まれのフォーカスグループ

そもそも、フォーカスグループは、第二次世界大戦中、米国の社会学者のロバート・K・マートン(「フォーカスグループの父」)が、マスコミュニケーションの社会的・心理的効果を明らかにするために、焦点を絞った(フォーカスした)インタビューを行うことから生まれたそうで、今では市場調査に広く使われている方法です。(出所:2017年2月21日 Research Live, "Five focus groups that changed the world”より)

ダイナミックな米国のフォーカスグループ

米国のフォーカスグループを観察すると、グループ参加者が自発的に自分の意見を言い、他の参加者の意見に対して自分は同じ意見、または異なる意見を言います。モデレーターは、フォーカスグループで質問を投げかけ、グループのディスカッションを促します。参加者同士で活発なディスカッションされていると、口を出さずに様子を見て、適宜次の質問やトピックに移っています。

とは言え、中には場を仕切ったり、他の参加者の発言を遮ったりする参加者がいるときは、モデレーターが他の人を当てて意見を聞く調整も行っています。

参加者同士の気遣いが見られる日本のフォーカスグループ

日本のフォーカスグループは、米国とは違って、司会者(モデレーター)が場を和ませたり、順番に参加者を当てて意見を言ってもらったり、参加者が平等に発言できるように気をつかっているのが伺えます。参加者の方も、他の参加者に気遣いながら、発言する順番を待つ様子をよく見かけます。

特に日本のフォーカスグループが米国のフォーカスグループと違うと感じることは、時折参加者の自己紹介のところで「他の人の意見も聞きたいので、グループインタビューに参加しました。」という人がいることです。確かに、フォーカスグループは、参加者同士の情報共有の場になっているかもしれません。

日本のフォーカスグループ - コラボワークには適している?

トピックとグループの構成によるかもしれませんが、日本のフォーカスグループは、自分の意見を述べる場というよりも、似たプロフィールの参加者同士が協力して何かを作り上げる場として、適しているのではないかと思います。

残念ながら、リサーチを依頼してきた米国のマーケティングリサーチ企業は、日本のグループコミュニケーションの特徴を気にしていない様子です。日本特有のコミュニケーションスタイルから、日本発の新しい発想も生まれると思いますので、もっと世界に向けて日本についての情報を発信しなければ、と自分にプレッシャーを与えています。


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