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マイナス60度超も! 巨大まぐろが眠りにつく超巨大冷凍庫のしくみ

「超巨大冷凍庫へようこそ!」 夏の自由研究特集として、さかな一代の中乃一が、お子さんたちの気になるテーマを、わかりやすく?レポートします。

全体_5506

今日は、東京中央卸売市場豊洲市場内にある、株式会社東市ロジスティクスの豊洲事業所へ来ています。実は、さかな一代の共同水産も、この豊洲事業所に隣接する豊洲東市冷蔵庫棟に事務所があって、東市ロジさんはお仕事の上でもとても身近な存在なんです。

梶主任

梶 駿介 主任
株式会社東市ロジスティクス 豊洲事業所
冷凍保管のスペシャリスト エンジン式の冷却装置で24時間の当直監視が必要だった頃を知る貴重な生き残り。当時屈強な先輩方の指導で経験を積み、今は頼れる若手のリーダー的存在。

今日、冷凍庫を案内していただくのは、東市ロジスティクスの梶主任です。よろしくお願いします! まずは、入ってすぐの荷捌きのフロアからですね! たくさんの人が働いていますね、フォークリフトで荷物を運ぶ人もいます。

荷捌き_5500

「はい。この豊洲事業所は、5層の冷凍庫と冷蔵庫からなる施設です。超低温といわれるマイナス60度、冷凍のマイナス25度、冷蔵の2~5度、の3温度帯で飲食品を管理しています。そのすべての荷物の入庫、出庫の引き渡しをするのがここの1F荷捌き場になります。今日の中乃さんの目的は、巨大冷凍庫のしくみでしたよね、まずはその寒さを体験してもらいましょうか。」

入口_5461

うわっ、入口からして物々しいですね、なんだかこれはすごそうですね。

「この冷凍庫が、マイナス60度の超低温冷凍庫です。まずは、こちらの上着と手袋をはめてくださいね。人間が耐えられる温度ではありませんから長居は絶対ダメです。中乃さんがぱぱっと写真を撮ったら、出てきましょう。」

庫内広さ_5466

くはっ、さむっ、、というか痛いです! とにかく、マイナス60度の超低温の世界では言葉が出ませんでした。(カメラのシャッターを押すために片手だけ手袋を外しましたが、この取材後3日たってもまだ指先に痛みがあり、いかにマイナス60度という温度が危険かを痛感しました。)しかし、お目当ての巨大マグロを発見、確かにマグロが眠っていました! それにしてもとっても広い冷凍庫ですね、冷凍庫の端は、はるか向こうです。

冷凍マグロ_5463

そして、冷凍され白い衣をまとったマグロを筆頭に魚がいっぱいだ、感動しますね。一通り中の様子を写真におさめてのち、ぼくは梶さんの後ろについて、一目散に冷凍庫を出て待避所に逃げ込みました。待避所の前には、この冷凍倉庫専用のフォークリフトが置いてあります。屋外でもないのに強固な乗用部のキャビンを備えた専用の寒さ対策済みのフォークリフトです。かんたんには中の作業はできません。

フォークs_5474

「どうでしたか? この冷凍庫の中の温度がマイナス60度です。一般的な家庭用冷凍庫の温度がマイナス20度までだということを考えれば、いかにマイナス60度という温度で、この広い冷凍庫が冷やされていることがすごいことかわかってもらえると思います。すべては、さかなの鮮度を保つこと、さかなのおいしさのためなんです。5階だての豊洲事業所の1フロアをこの超低温の温度帯で運営しています。他のフロアのマイナス25度の冷凍倉庫でも十分すごいことなんですが、このクラスの箱(冷凍倉庫)は日本ではそんなに多くはありません。それでは、屋上に行ってこの冷凍倉庫を冷やす装置を見てみましょうか。その前に、ポンプを見ていきましょう。冷凍庫を冷やすのに重要な役割を果たすのが冷媒といわれるものですが、その冷媒を屋上の装置に送るのがこのポンプで、各階にあります。」

ポンプ_5497

屋上設備_5479

屋上に出ると、あいにくの雨もあつて、大小いくつものパイプが張り巡らされたそこは、まるで化学プラントのよう。梶さんに、屋上施設の囲いを外してもらうと、中は黒や緑のあやしい装置がいくつも所せましと据えられています。よく見ると、黒く見えるのは発砲スチロールのような断熱材で、いくつもの装置がパイプでタンクや他の装置とつながっています。

圧縮機s_5480

「この中にあるのが、圧縮機や凝縮器などの冷凍庫の熱を取り除く装置です。先ほどお見せした、各階のポンプからパイプでこの装置へ冷媒を引き込んでいます。冷媒は、冷凍庫とここ屋上の装置とを循環しています。冷媒は、この循環の過程で、液体になったり、気体になったりしながら、冷凍庫内の熱を屋上の装置へ持ち帰り、この屋上の装置が冷媒から熱を取り、再び冷凍庫へ戻って冷凍庫を冷やします。この装置で取り除いた熱を、こっちの巨大なクーリングタワーから外気に放出するんですよ。」

クーリングタワー_5491

うわっ、エアコンなんかのものと比べるとはるかに巨大ですね。なんでも、梶さんによると、この屋上の装置は2セットあるとのことです。それは、1セットが故障やメンテナンスで停止した場合に、もう1セットで運転されるように設計されているのだとか。もしもの時も安心だね!

みんなに見てきてもらった巨大冷凍庫のしくみ、わかったかな? この巨大冷凍庫には、他にも氷を作る設備などが備わっていて、さかなを流通させることに関してはとても優秀な施設です。東京の、そして全国の「食」に貢献していることがわかりました。東市ロジスティクスの梶さん、忙しい中、ありがとうございました!

さかなの保存の歴史 ”さかな一代” 安部小次郎著 1969年発刊 より

 近ごろの食品は技術革新の結果、研究が進み、冷凍品も目覚ましい進歩を遂げた。1920年ごろアメリカで急速冷凍技術が発明されたが、これは冷凍方法の大革命である。摂氏零下20度以下で急速冷凍された食品では、細菌の繁殖も大分おさえられ、酸素の作用も少なく品質の保善に効果が大きい。しかし昔は、冷凍するのに零下14,5度の冷凍庫の中で、3,4日かけて冷凍したのである。このため、冷凍品も時日をおくと酸化したり、水分が先に凍り、繊維が残ったりしたものであった。

 冷凍食品は技術の進歩により、凍結は零下35度ー40度でわずか2,3時間で凍結するので、解凍すると、生の食品と同じ状態に戻るようになってきたが、我が国は古来から生魚を食べる習慣なので、冷凍食品が全国に普及するというほどにはまだなっていない。最近消費者間にも、冷凍食品の知識が普及し、政府でもコールドチェーンなどの方法で推奨している。さらに、各冷凍会社の競争の結果、製法も改善され、いろいろの製品が出ているので、今後普及の余地はおおいにあり、将来有望な食料品ということができる。

以上は1969年当時のものです。2021年の今日、冷凍食品はわたしたちの日常に当たり前のものとして普及しています。安部小次郎翁の先見性が垣間見れる記述です。

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