![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120814378/rectangle_large_type_2_8b86567940b44aebea2441c29070e93d.jpg?width=800)
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ
久々に湊かなえさんの著書を手に取った。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120815140/picture_pc_2d49fe985b889e76ba8c1c528623e356.jpg?width=800)
直訳すると「毒娘・聖母」。
題名とウラスジに惹起されて、ブックオフで購入した。
小学生の頃は、赤川次郎さんのミステリーを片っ端から読み漁っていた。
殺人やシリアスな要素を携えるストーリーでもどこかコミカルさが滲むサッパリとした文体で、張られた伏線の回収だったり、ユーモラスなキャラクターたちのおかしな行動だったりに夢中になってページを捲っていると、いつもすぐに読み終えてしまった。
湊かなえさんの書物を初めて手に取ったのは、中学生に上がってから。
最初に読んだのは、『告白』だった。
衝撃を受けたことを覚えている。
なんだこの本は。
私が今まで読んできたものとは全く違う種類のミステリー。
ドロドロとしていて後味が悪い。
赤川次郎作品の読了後の爽快感や充足感とは真逆で、ダークで人間臭くて、救いようがない。
でも、読みたい。
その当時はイヤミスなんてジャンルを知らなかったけれど、そこからは湊かなえさんの作品を読み耽った。
大学生の今、益田ミリさんや石田衣良さん、江國香織さん、瀬尾まいこさんの著書が並ぶ本棚に、同時に朝井リョウさんや辻村深月さん、角田光代さんの作品も佇んでいる煩雑な嗜好性に繋がっていると思う。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120811931/picture_pc_cf9eafaaa774658bf1638c5bb4b729ef.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120812030/picture_pc_13fc2204f60f0ef3e10e724a6ac50b66.jpg?width=800)
様々な母と娘が登場する短編集。
見る視点が違うと、一つの事実の見え方も変わってくる。
印象深かったのは、著書の題名にもなっている『ポイズンドーター』と『ホーリーマザー』の回。
毒親に育てられた過去を公表した弓香に、弓香の母親は毒親ではないと抗弁する理穂。
「極論に値する人以外は声を上げちゃいけないのか、って弓香言ってたよね。わたしはいけないと思う。」
「海で溺れている人にたとえて考えてみてよ。
浅瀬の弓香が大騒ぎしていると、本当に大変な人が溺れていることに気付いてもらえない。迷惑なんだよ」
私はこの理穂の言葉に、異論を唱えた。
死にたいと口にした時に、「あなたが死にたいと言う今日は、誰かが生きたいと願った今日なのよ」と言われた感じ。
だから何なのだ。
希死念慮を抱くほど辛い思いをしているのに、側から見た酌量で「あなたよりもっと辛い人がいる」と言われたところで、うるせぇよ、誰かって誰だよと叫びたくなる。
人には人の地獄がある。
そのことを忘れずに自分の尺度で物事を測らないように慮って生きていきたいし、スタバのジョイフルメドレーが飲みたい。
あなたは優しい人じゃない───。でも、それは決して悪いことじゃない。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120815279/picture_pc_1e2369014bf7810db39e87da74b50931.jpg?width=800)
つやつや
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?