【眠らない猫と夜の魚】第10話
「落下と移動」②
爺ちゃんはウキウキしながら釣り竿を磨いていた。
「釣りに行くの? また亜樹と?」
「ああ」
「亜樹は私の彼氏なんだけど」
「心配するな、夕まずめ狙いだから夜には帰す」
「別にいいけど……で、今日は何やればいい?」
「先月分の帳簿の入力を頼む」
目が弱くなってきた爺ちゃんは、データの入力を孫娘の私に頼む。それで空いた時間は、たいてい釣りに出かける。相方はもっぱら亜樹だ。亜樹、最近は私とデートするより爺ちゃんと釣りに出かけることのほうが多いんじゃないだろ