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多動で意志の弱い人間がアルコール依存症から抜け出そうともがいている(現在進行形)

やばい。

記憶がない。



ここのところ、酒量が多すぎる。



前回の人間ドックの数値が悪すぎて、パーソナルトレーナーなるものに通うことを決心した。

「パーソナルトレーナー」と聞くと、なにやら金持ち感が漂うが、んなこたーない。
ライザップやトータルワークアウトはブランディング・プロモーションの金額も相まって高くなっているが、ほとんどのトレーニング内容は、ワンルームマンションでできるようなものなので、実に5分の1ほどの金額で同等のサービスが実現できるのだ。

トレーナーはなかなかのイケメンだが、サディスティックな量のウェイトトレーニングを課す人で、言うとおりの食生活を続けていたら、サクッと7kg痩せた

しかしここから、ピタリと落ちなくなった
あと4kg落とすと、20代の自分と並ぶのだが、もう少し!というところ停滞してしまったのだ。

「中村さん、ここからは….酒ですね」


そこからは、毎週ループのように、アルコールと筋トレがいかに相性が悪いかを呪詛のように投げつけてくるイケメンに、
「つい飲んじゃうんすよね。てへへ」
などとバツの悪い顔をしながら、ごまかすようにブルガリアンスクワットをこなす生活が続いた。

しかしぼくは、なんとかアルコールだけは維持しながら痩せることが可能なんじゃないか、と密かに思い続けていた。

また、ぼくのアルコール摂取スタイルにも、トレーナーは驚いていた。

中学生の時から中島らもに憧れていたため、大学生になり、大っぴらに飲める年になったところで(※ちょっと早いが時効ということで)、あっという間に酒に飲まれるようになった。

限界まで酒を飲むことを信条としていた。
友人や同僚とも飲みに行くが、独りで飲むことを好んだ。

そもそもなぜ飲むのか?

現実が嫌だからに決まってるでしょうが。

この愛すべき、反吐が出るような現世空間で、多動ゆえにたんまりと仕事に翻弄され、常に人の尻を拭き、また時には偉そうな説教を語り、他人を褒め、嫉妬し、夕方になると「オレって何にもやってねー」と澱のように溜まる自己嫌悪がある。でも自殺や失踪なんてことをすると、愛する家族にも迷惑かけるしなあうむむ、などという感情のパーツをひとまとめにし、ピザ生地のようにぐりぐりとこねて、人差し指でクリクリまわし、みょーんと引き伸ばして、彼我をあいまいにする。これがぼくが酒を飲む理由だ。

つまりは、自己肯定感の低さのあまり、酩酊して現実逃避するためにハイボールを飲む。

というわけで、人と飲む酒と、独りで飲む酒は、ぼくにとってはぜんぜん違う。前者では、人並みに日本酒の銘柄の知識などもあるが、独りで飲む時は、銘柄や細かい味の違いなんてマジどうでもいい。目が潰れなければ、メチルアルコールでもいい。あとバーに行ってマスターに顔を覚えられたら、そこには2度と行かない。

トレーナーは全く意味のわからない顔をする。

「現実が嫌いなら、なんで筋トレやってんですか?」

そうですよねハハハ、と苦笑いをする。お前には一生わかんねえよ!と思いながら。

この世には2種類の人間がいる。自分の意志の力で自制したり鍛え上げることができる類いの人間、そして、あらゆる誘惑に弱く、何一つ続かないゴミのような類の人間だ。
前者の人間は、後者の人間が「なぜ自制できないか」の理由が永久にわからない。「怠惰だからでしょ」って感じですよね。そうですよね。
しかし、後者の人間からすると、どうやっても自分の努力じゃ自制できないのである。これにはADHD特有の報酬系機能の問題らしい。

ぼくは自分の意思で、楽なもの、楽しいものに抗えたためしがない。酒もタバコも、おおよそ落とし穴というものにはすべてはまり続けてきた。社会生活をかろうじて送れているのは、逆に社会を踏み外すことにより、収入がなくなり、飲めなくなるのが怖いからである。

そんなぼくが、体重を減らしていくために最近使っていた手が
「夜は飲んで、ほぼ食わない」
というものだった。酒はエンプティカロリーなので、それだけでは太らない。


これを実践した当初は痩せた。


しかしあるとき、恐るべき事態が起きた。


酒量が増え、


途中から記憶が飛び、


夢遊病者のようにコンビニに行き追加の酒とつまみを買い、貪っていたのだ。


あまつさえ、つまみも、あたりめとかならかわいいもんだが、
「ハニーローステッドナッツ」
みたいな、それ絶対夜食っちゃダメですよ中村さん、といわれるものを買って食った形跡がある。脂質を糖質でコーティングし、しかもお腹にたまりづらいのでガンガンいけるタイプ。

しかも知らないうちに、蒸留酒だけと決めていたはずが、家にあった赤ワインを飲んだ形跡がある。さらに妻が、

「わたしが買ってきたパンが、ネズミのようなものに齧られている。これあんたよね」

これには我ながら引いた。
ひとのパンまで知らずにかじっていたのかと。

体重を減らすはずが、これでは完全に逆効果だ。若いころは、どんなに飲みすぎても、記憶がなくなるということは滅多になかったのに。

案の定、体重が3kg戻ってしまった。

しかしぼくは、繰り返すが、精神力だけでは絶対に酒を辞めることができないのだ。夕方に頭をもたげてくる「あー飲みたい」に打ち克つには、なにがしかのライフハックを行わなければならない。

こんなぼくだが、実は、一ヶ月前に禁煙に成功していた。成功には二つのキーファクターがあった。

ひとつは、VAPEというニコチンゼロの電子タバコで吸いたいときに誤魔化していくというメソッド。

もうひとつのファクターは、シンプルだ。

肺のCTスキャンに、影があったのである。

この「まあもう客観的にやめどきだよね」という要素と、具体的な衝動を避けるためのツールという2連チャンで、終止符を打つことができた。

しかし、酒はもうちょっと厄介なものだ。まず、完全な禁酒というのが、非常にしづらいドラッグである。さまざまな社会生活で飲んで打ち解けるということは大事だし、そのたびすべてノンアルで避けていくのも説明が面倒である。休肝日をつくれば、健康上の数値はそれほど悪くならないこともわかっているが、ぼくの場合、飲み進めるうち休肝日はなくなってくる。「禁酒セラピー」も残念ながら効果はなかった。

というわけで、今(2023年9月3日)の仮説。

(1) 3週間で一生アルコールがやめられるトレーニング

(2)新薬「レグテクト」を輸入。

旧来のシアナマイド的な、「飲んだらメチャクチャ悪酔いする」薬ではなく、飲みたいという欲求そのものを緩和する

この組み合わせで、まずは完全に飲まない期間をつくる。
まずこれに挑戦してみます。実はこのnoteも、酒を飲まなくなった時間を、エッセイに充てようとして書いています。つまり、このnoteがまったく更新されなくなったら、失敗したということですね!
薬の輸入まで3週間かかってしまうので、結果はまた報告しますね。

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