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能の秘曲「道成寺」②

まず道成寺を披く(初演する)事が決まると囃子方にご出演をお願いしなければなりません。多くは自分が習った先生を頼みますが、やはり「座付き(ざつき)」にこだわる方もいらっしゃいます。

囃子方には全流儀のシテ方の謡に対応する手組が出来てはいますが、曲によっては詞章の違いなどで微妙に具合の悪い部分があることもあります。特に道成寺の場合は初めてのシテに神経を使わせたくないので一番具合の良い座付きの流儀を選ぶことが多くなるわけです。

稽古は早い人は2年がかり!普通でも1年かけて準備をします。特に小鼓との一騎打ちである「乱拍子(らんびょうし)」の部分は昔は百編稽古と言うくらい入念に稽古が必要です。

乱拍子は小鼓方にとっても一番の秘曲であり、相手をするシテ方は手組を教わる時には神文誓詞(しんもんせいし)と言う絶対に他言しないと言う念書に血判を押して小鼓方に渡したそうです。(私が初めて道成寺のお稽古のときに「誓詞はどういたしましょうか?」と伺ったら「その台詞久しぶりに聞いたなぁ。今時だから結構ですよ。でもそう言う教えはお子さんにも伝えてくださいね」と言われました。)

今はビデオも録音機器も充実しているので稽古も楽になりましたが、やはり気合だけは本人同士が数をこなさないと揃いません・・・私の場合は1年半前から稽古に掛かりましたが、もっと早くに始めるべきだったと後悔しました。

本番までには数回の下申合(したもうしあわせ)を行い、本番の数日前に装束も附けて本申合をします。もうこの頃にはシテは目がつり上がりピリピリした緊張感に包まれていますので近づきたくない感じになっています。

そしていよいよ本番当日。装束の間には屏風が立てられ装束も人に見えない状態で着附けられます。装束附けにも秘事口伝と言われる部分があり、道成寺経験者のみが(後見は別ですが)その場に立ち合えるのです。

鐘の中に面等を納めるのはシテの仕事。他人は決して鐘の中には入れません!全てシテの責任に於いて準備をする事になっています。

次回からはいよいよ曲の中のお話しに入ることにしますのでご期待下さいませ。

◇公益財団法人鎌倉能舞台HP   http://www.nohbutai.com/

◇「能を知る会東京公演-道成寺」 
◆日時 2021年6月20日(日)13:00
◆会場 国立能楽堂(JR千駄ヶ谷駅下車徒歩5分)
◆入場料 正面自由席13,200円/脇中自由席9,900円
◆演目
講演「隔てるもの・乗り越える力」葛西聖司
仕舞「清経」津村禮次郎
  「海士」永島忠侈
  「融」 駒瀬直也
狂言「樋の酒」野村萬斎
仕舞「砧」  観世喜正
  「卒都婆小町」観世喜之
能 「道成寺」中森健之介 
詳細 https://blog.canpan.info/nohbutai/archive/816


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