短編SF小説「失楽園」
九作目。名古屋猫町倶楽部課外活動「ライティング倶楽部」で13年1月に書いた短編SF。またまた恒例パクリタイトルw。しかし今回は、「さーて、どっちのパクリなんでしょうね?」て感じにしている。まぁどう考えてもあっちの可能性のほうが高いと思うがw。
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一回こういう法廷劇みたいなのやってみたかったんですよね。あと文学の怖さ、影響力も描きたかった。文学はこうやって人の人生を、場合によっては人類の歴史までも変えちゃう力を持っていると思っています。積んで行く本は選びましょうねw。
こういうね、「世界のことなんて知らんがな」てこと誰でもあると思うんですよね。童貞だから知らんけどw。
一つ解説しとくと、追放とか島流しとかより「死刑でうれしい」てのは土葬とかされることを想定しているんだけど、よく考えてみたら宇宙葬みたいなことされちゃう可能性もあるよねw。
全作品通して読み返して見ると、童貞のくせにこういう愛だの家族の絆だのってテーマのをオラよく書いてるw。
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失楽園
「被告人ラファエル・ディアス一等航宙士を求刑どおり死刑に処す」
本法定の裁判長を務める船長の宣告は、ラファエルの眉一つさえ動かすことは出来なかった。
「被告人、最後に何か言うことはあるかね?」
「どうせ言ってもだれもわかってくれませんよ」
水を打ったようであった傍聴席が当惑と怒りの囁きで満たされた。
「静粛に!被告人、君はこの重大事件を引き起こしてからというもの、今までその動機について一言も語っていない。なぜ君のような経歴に非の打ち所の無い人物があんな破壊工作を引き起こしたか、私を含めて全乗組員二百万人が知りたがっているのだがね。事情によっては減刑も有り得るのだよ?」
「減刑なんて御免被りますね。私は死刑判決にむしろ感謝しているんですから」
「被告人、幸いな事に、君が本船の主エンジンを破壊した直前に、我々が探し続けていた理想的な居住可能惑星エデンが発見されている。そこまでであれば補助エンジンで到達可能だ。だから君の犯行により全乗組員二百万人の命が危険にさらされるわけではない。もしエデンが発見されていなかったら、我々は無限に広がる大宇宙のど真ん中で立ち往生し、十数世代六百年に渡る偉大な航海の努力が水の泡になるところだったわけだが……」
「心にもないことをおっしゃらないで欲しいですな、裁判長殿」
ラファエルの思いもかけない言葉に、絶えず囁きが交わされていた法廷は再び静寂を取り戻した。
「……被告人……何を根拠にそのような侮辱を……」
呻くようにようやく沈黙を破った船長に対し、ラファエルは氷のような冷笑で報いた。
「根拠?裁判長殿、いや、同胞諸君、あんたら本当にこの船を出たいと思っているのですか?」
「被告人、居住可能惑星の発見とそこへの移住は、この船の建造目的であり……」
「裁判長、いえ、二百万の同胞の皆さん。あなた達は本当にエデンの発見を喜んでいるのですか?母なる地球をこの船で旅立ってから六百年、我々はもちろんのこと、我々の親も、祖父母も、十数世代に渡って誰一人として惑星上の暮らしなんて経験して来ませんでした。この金属とグラスファイバーで造られた巨大な宇宙船こそが、我々の唯一の家だったのです。この六百年間、それで何の不都合もなかった。エデンなんてものが無くても何不自由なく暮らしてこられた。気温も湿度もあらゆる環境が快適にコントロールされ、あらゆる必需品が無人の艦内工場から供給されるこの理想郷を捨てて、今更豪雨や暴風にさらされながら土にまみれて大地に這いつくばる生活を、あなたがたは本当に望んでいるのですか?」
「被告人、君も承知のように、乗組員の一部に君のような主張をして本船の目的に疑問を投げかける勢力が存在することは確かだ。だからこそ、本日は本船の去就を決定する民主的な投票を行なう予定だったのだよ」
「そしてその御大層な民主的投票とやらの結果、裁判長殿を含め誰ひとり何の責任も痛痒も感じること無く、エデンを素通りして安楽な宇宙生活へ逆戻りってわけですか?」
「被告人、君はなぜそこまでして惑星上の生活にこだわるのかね?何が君をこのような凶行に走らせたのだね?まさか、人は大地で生きるべきだ、などという理想論のためではあるまいね?」
「私はそこまで夢想家ではありませんよ。無論同胞の皆さんの中には、そういう主張を強硬になされている方々がおられるのは承知していますがね。私はただ、妻のためにやっているだけです」
「亡くなられた奥さんのことかね?」
「裁判長殿、エデンが発見された前日、私の妻は不幸な事故で逝ってしまいました。妻と私は古典文学が大好きでしてね、特に「失楽園」は何度も読み返しました。そんな我々夫婦は、結婚以来長年に渡って出産割り当てを待ち続けたんですがね、不許可不受理を知らされるたびに失楽園を思い出しながら話し合ったものです。このような狭苦しい宇宙船を飛び出て、どこまでも地平線が続く惑星上に降り立てば、思う存分家族を増やすことができるね、と。そんな妻をエデンの大地で永遠に眠らせてやりたい、ただそれだけが私の望みです。その大地で私も一緒に眠れるなら本望だ。ね?言ってもだれもわからないでしょ?船長」
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