『技術同人誌を書いたあなたへ 著者の幸せなミライ』と同人誌の商業出版まわりのメモ【前編】('19.5.10、23時台に後編リンク追加)
1.はじめに
先月の末、私のTwitterまわりで話題になっていた論文の電子版公刊のことを研究室ブログに次の記事の後半にまとめました:
該当する部分を簡単にまとめると、
学術誌の「二重投稿禁止」規則に絡む問題で「中国語で発表した論文→日本語に翻訳して交換したい」場合、問題点を解く選択肢の1つに、志学社論文叢書を例として、論文単体の電子版公刊のお話をさせて頂きました。
(平成末期の「献本」や論文の電子版公刊のこと~研究関係の本や学術論文の出版にまつわる文化の話~ - 仲見満月の研究室)
という感じ。
こうした研究関係や学術出版まわりの話が気になる一方、ふと、私の周囲のIT業界で仕事をなさり、技術書典に出展されている方々は、どうなさっているのか、気になりました。よく聞く話だと、技術書典で出した同人誌が出版社に「見初め」られ、商業書籍として出版される方々の体験談を読んでみたくなったのです。研究をベースにした論文や学術関係の著作物は、技術書典で頒布されるIT関係の技術同人誌とは、出版される背景や市場は異なるものの、一部ではテクノロジーの研究開発を扱う物として重なるものもあるのではないでしょうか。
以上のように考えた私は、前から気になっていた技術同人誌の商業出版に関する本を読んでみました。本記事で中心となるのは、主に次の作品です(内容はDL版も書籍版も同じ)↓
本書は、著者のmochikoさんが技術書典に出展し、出した同人誌が2000部以上も売れ、出版社の方(本文では「王子様」)から声がかかったことをきっかけに、商業出版のメリットやデメリットを調べ、現段階では商業出版をしなことに決めるまでの「あれこれ」をまとめた作品です。序文「はじめに」によればもとは、こちら:
の記事を加筆・修正したもので、「noteでは大っぴらに書くには少々はばかられた内容」も加えられているんだとか。本文には、著者が商業書籍の検討にあたり、
・同人誌と商業出版での利益率の違い
・SNSのリプライで質問されたことで、著者にとって利益還元が多いのはBOOTHとnoteとKindleのうち、どれか?
といった話題も含まれていました。
今回は、mochikoさんの『技術同人誌を書いたあなたへ』のレビューを中心に、本文で紹介があって読んだ他の体験談や、私が関係すると考えた読んだ著作権に関する本なども含めて、技術同人誌の商業化まわりの話をメモとしてまとめておきたいと思います。中心となる本の著者が「noteでは大っぴらに書くには少々はばかられた内容」だとおっしゃっているため、その事情を考慮し、本記事は課金式にすることに致しました。ご了承の上、お買い上げいただき、お読みください。(その前に、mochikoさんの『技術同人誌を書いたあなたへ』を上記のBOOTHページからお買い上げいただくのが、ベストかと)
書いていたら、思いほか、長くなりました。今回の前編と、次回の後編に分けさせて頂きます。
それでは、本書のレビューにうつりましょう!
2.出版社こと「王子様」に見初められた著者~「はじめに」からChapter1まで~
まず、「はじめに」のところで、本書がどういった読者に向けたものであるのか、確認しました。こんな感じ↓
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