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【書評】黒文字棗 - シケイサツ -

おすすめ度:★☆☆☆☆

いじめを題材にした作品。様々な登場人物が登場し、一人称が切り替わりながら進むのが特徴。シケイサツは突然現れて、いじめの加害者を殺害していくという話。テーマやタイトル、カバーに惹かれて何となく読んだのだが、あまりにも稚拙なストーリーと文章でもう少し長かったら途中で読むのをやめていたと思う。

まず、これだけ多くの登場人物を出しておきながらこの長さでは人物それぞれを描き分けられるわけがない。小川歩と吉光勇人の結末の対比を描きたかったのかもしれないが、最後のオチも予想の範疇を全く超えるものではなかった。渡辺を使って加害者側にも被害者の側面があり「アイデンティティとは多面的である」というメッセージも描きたかったのかもしれないが、この試みも中途半端に終わってしまったのは非常に残念だ。

そもそも、設定自体にリアリティがなさすぎる。流石にここまで激しいいじめというのは稀であろうし、学校教師まで生徒をいじめたり、誰一人助けに入ることすらないという状況は本当にあるのだろうか。あまりにも現実と乖離した世界に共感は皆無で、読んでいて白けてしまった。繊細な心理描写もほとんどない、学校の国語の授業で書いた作文コンクールの延長線上の作品。著者の年齢などわからないがもう一度この作家の本が読みたいと思わせる要素はほとんどなかった。

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