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なぜ企業は早期退職を募集するのか。

先日、フジテレビが早期退職を発表したのだが、次の社長のコメントが気になった。

「目的としましては、うちの社員の人員構成として比較的高齢者が多くて、若年層が少ない。逆ピラミッド型になっている。・・・50歳以上を支援するのに加え、少ない若年層は中途入社を募集している」

この「逆ピラミッド型」という言葉に違和感を感じたのだが、別に年齢が逆ピラミッドになっていようが、組織がピラミッドになっていればなんら問題ない。要するに、年齢が高い人でも、組織上は下層に位置付けられる仕事をし、それに応じた処遇をすれば組織のピラミッドは保たれる。
問題なのは年齢が高いほど賃金が高いことであり、年齢が逆ピラミッドになることで、人件費が膨らんしまったことなのである。

これは、日本の大企業のほとんどが抱えている問題である。
賃金制度の話をすると、今の日本の大企業のほとんどが職能資格制度を採っている。

職能資格制度:
①企業が従業員に求める職務遂行能力によって等級づけを行う制度
②職能資格制度で決定される等級は必ずしも組織内の職位と一致するわけではない

要は、従業員が企業で発揮できそうな能力に応じて賃金を支払う制度である。

ただ、この職能資格制度には、「果たして職務遂行能力は図れるのか?」と「職務遂行能力で格付けられた等級が組織内の職位と一致しない」という2つの問題がある。

つまり、職務遂行能力が図れない場合に、結局は年功的に処遇が決まってしまうということと、成果やポジションではなく職務遂行能力で処遇が決まるので、人件費が肥大になりやすいという問題である。

少し深掘ると、ちょっと前に流行った「成果主義」も、最近流行っている「ジョブ型」も言葉の使い方は置いておいて、この上がりすぎた賃金を下げる目的で用いられているケースが多い。要は職務遂行能力ではなく、成果もしくは仕事で賃金を払うことにより、人件費を適正な水準に変えたいということである。

恐らく、フジテレビの早期退職の募集年齢の50歳か新浪さんの45歳定年説か分からないが、その辺りで実際の職務遂行能力と賃金が逆転しているのが実体だろう。

だから、フジテレビの社長も「うちの社員の人員構成として比較的高齢者が多くて、若年層が少ない。逆ピラミッド型になっている。」と平然と述べるのである。

ちなみに、日本は「労働条件の不利益変更」については厳しいが、60歳定年退職再雇用の中で賃金を下げることを法律的にも認めている。早期退職を募集している企業は、従業員が60歳になるのを待てず、人件費を下げたい層に自ら辞めてもらった方が、たとえ退職金を積み増したとしてもメリットがあると、考えているのである。

良し悪しではなく、これが企業が早期退職を募集する理由だと思うし、この流れは暫く続くだろう。

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