脱水と水分補給における競技パフォーマンスへの影響(口渇反応のメカニズムは、血漿浸透圧が280~295mOsm/kgH2Oの範囲に維持されるように作用する)
体水分とパフォーマンス
最近の研究により、体水分が正常な状態で運動を開始することの重要性が明らかになっています。
脱水状態で運動を開始すると、心拍数と深部体温の上昇により、パフォーマンスと生理学的機能が低下することが明らかになっています。
研究の結果、若年者を含むアスリートは練習開始時、さらには競技イベントの開始時でさえ脱水状態であることが多いと複数の報告があります。
したがって、このようなアスリートに対しては、特に運動開始時における自身の水分補給について教育を施すことが重要になります。
水分補給と脱水
運動前後の体重変化のほとんどは体水分量の変化によります。
たとえば、運動後に体重が2kg減少していたら体水分がほぼ2kg減少しています。
運動中に1kgの水分を補給した時、運動後の体重減少量が2kgだと、発汗などで失われた水分量は3kgになります。
運動後は運動で減少した体重1kg当たり1.2~1.5Lの水分の補給をすることが勧められています。
※回復過程での代謝物を尿中に排出するために水分が不足しないようにするためです。
大量に脱水した場合の水分補給には、ナトリウムが必要になり、運動後に食事をする場合は通常、脱水状態の回復に必要なナトリウムは食事から摂取できると考えます。
しかし、運動後に食事をしない場合は飲料にナトリウムを含んでいる必要があり、飲料に必要なナトリウム量は約40~80mg/100ml、食塩換算で0.1~0.2%になります。
運動中の水分の推奨摂取量
運動中の水分の推奨摂取量については、スポーツの現場、医療の現場、カンファレンス、および研究において広く議論がなされており、議論がなされるには大きな理由が2つあります。
・不適切な量の水分摂取による障害や死亡事例が発生するのを防ぐ
・競技パフォーマンスの低下を防ぐ
しかし、すべてのアスリートに通用するベストな方法を求めて議論することは現実的とはいえず、それは個人の水分需要は複数の因子によって決定され、それに応じて変動する可能性があるからです。
涼しい気候の中でマラソンをする選手と、高温多湿環境で防具をつけ、1日2度の練習を行うアメリカンフットボールの選手に、同じ推奨摂取量を適用することはできなく、同様に、同一人物であっても、冬の水分需要は暑い夏とは異なる可能性があります。
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