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アスリートの垂直跳びの高さを増大させる伸張性局面の時間(伸張性局面における力発揮の時間が長いことが、CMJにおけるVJの高さの最大の要因であるとされる)

垂直跳びにおける生理学的反応

垂直跳び(VJ)の高さは、短縮性筋活動の前に反動動作(CM、カウンタームーブメント)を加えることにより増大できます。

このCMは、伸張-短縮サイクル(SSC、ストレッチショートニングサイクル)といわれる重要な筋活動の一部になります。

SSCはさらに2種類の活動として定義できます。

ひとつは、長いSSCで、骨格関節の大きな角変位を伴いCMが250ミリ秒を超えます。

もうひとつの短いSSCは骨格関節の小さな各変位を伴いCMは250ミリ秒以下になります。

爆発的筋力

力の立ち上がり速度あるいは「爆発的筋力」は、競技動作中に発揮される力の速度を表しています。

一般に、力の立ち上がり速度は力-時間曲線の傾きから決定され、力の立ち上がり速度の値は、素早く、強力な筋の短縮において機能的に重要になります。

例えば、50~250ミリ秒の短縮時間は、ジャンプ、スプリント、あるいは方向転換などの素早い動きに関連があり、最大の力を発揮するには300ミリ秒以上を要するため、このような短い短縮時間での運動で最大の力が発揮される可能性は低く、したがって、力の立ち上がり速度と総合的なパワーを最適化するために、軽い負荷を爆発的に挙上する方法を推奨する研究者も存在します。

SSCにおける3つの局面

Komiの解説によると、SSCには予備活動、伸張性局面そして短縮性局面の段階が含まれ、さらに、伸張性局面と短縮性局面の間には償却局面といわれる時間が存在します。

償却局面は長いSSCと短いSSCを分ける重要な局面であり、トレーニングにおいて、長短どちらかが強調されるかによって異なる生理学的反応が生じます。

SSCでは通常、伸張性局面で弾性エネルギーが貯蔵され、それが短縮性局面で運動エネルギーとして放出されます。

しかし、アスリートのVJの高さを増大させる伸張性局面の時間には、ふたつの重要な区別があります。

伸張性局面における力発揮の時間が長いことが、CMJにおけるVJの高さの最大の要因であるとされます。

通常、短い伸張性局面は短い償却局面と低いVJ高をもたらします。

したがって、パフォーマンスの見地から、競技動作を分析することが必要であり、競技動作はそれぞれ特異的なS&Cエクササイズを要求します。

すなわち、アスリートのジャンプパフォーマンスを左右する適切なエクササイズを決定し実施する際には、長いSSCと短いSSCの違いが重要となります。

プライオメトリックエクササイズの注意事項

プライオメトリックエクササイズの注意事項は、プライオメトリックトレーニングを処方し指導する際の遅いSSCと速いSSCの相違になります。

遅いSSCエクササイズは、カウンタームーブメントジャンプのように、ジャンプする際の筋の短縮時間が比較的長く(>0.25秒)、下肢関節の大きな角変位が特徴になります。

一方、速いSSCは、トリプルジャンプアクションなどの例からもわかるように、比較的小さな角変位と短時間の伸張-短縮の組み合わせ(<0.25秒)になります。

競技パフォーマンスの分野では、力発揮の閾値の限界が250ミリ秒であるため、遅いSSCエクササイズは反射による増強を最大限に利用するために十分とはいえません。

SSCの重要な要素

Komiらは、有効なSSCには3つの重要な要素が必要であると示唆しています。

すなわち、伸張性筋活動から短縮性筋活動への即時的移行になります。

これら必要とされる基本条件は、関節と筋にとってより危険な活動をもたらす可能性があるため、プログラムを作成する場合は、より高強度のプライオメトリックスを行なう前の準備がきわめて重要になります。

高強度のエクササイズは通常、衝撃の強い負荷と速いSSCの両方を伴い(ドロップバーティカルジャンプ、バウンド、マルチプルボックスジャンプなど)、それでもなお、スキップや縄跳びなどの低衝撃で速いSSCを強調することも価値があります。

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