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前十字靭帯損傷と股関節の動き(股関節の内転角の増大、股関節の屈曲角の減少、そして内旋角もACL損傷リスクを高める可能性のある動きになる)

膝関節傷害

膝関節傷害には性差が認められ、特にACL(前十字靭帯)損傷では、男子より女子に傷害発生リスクが高くなります。

この理由として、男子より女子のほうが関節の緩みが大きく、筋力が弱く、固有感覚受容器機能やコーディネーション能力も低いと指摘されています。

従来、非接触型ACL損傷は、ジャンプからの着地時やランニングの減速時に膝関節の屈曲動作が不十分な場合に発生し、その際に膝関節への外反ストレスに加えて、外旋あるいは内旋ストレスの複合動作が原因となっていることが多いとされてきました。

近年の非接触型ACL損傷のメカニズム研究によると、不十分な膝関節屈曲による着地あるいは減速動作時における膝関節への過度な外反、もしくは内旋ストレスによってACL損傷のリスクが高まると考えられ始めています。

さらに、後傾荷重の姿勢になると大腿四頭筋による前方剪断力が高まるため、膝関節傷害予防には3つの関節(股関節、膝関節、足関節)の適切なアライメントによる着地姿勢やランニングの減速動作の指導が必要になり、特に女子選手の着地姿勢では、衝撃吸収のために大殿筋より大腿四頭筋を用いる傾向が報告されています。

股関節の動き

股関節の内転角の増大、股関節の屈曲角の減少、そして内旋角もACL(前十字靭帯)損傷リスクを高める可能性のある動きになります。

股関節の内転角の大きさは、高校女子サッカー選手において、カッティング中の股関節の外転もしくは内反モーションの大きさを予測することが示されています。

着地時の股関節の角度

女子バスケットボール選手とサッカー選手はまた、着地中の股関節の内転角も大きく、これが膝関節の外反モーションを招いているとも考えられています。

しかし、股関節の内転モーメント単独では、ACL損傷の危険因子にはならないとみられています。
さらに、男子と比べて女子アスリートは、カッティング時の股関節の屈曲角の小ささは敵選手がいる場合でも認められています。

着地時の股関節の屈曲角の大きさはある程度とはいえ、膝関節にかかる力の大きさを左右します。
なぜならば、股関節の屈曲は、膝関節と足関節の屈曲と結びついて床反力を減少させることを助けるからです。

膝関節のバイオメカニクスの変化

膝関節のバイオメカニクスの変化、特に着地やカッティング動作および減速中の膝の前額面のコントロールの欠陥は、ACL断裂を含む膝の傷害や膝蓋大腿疼痛症候群の大きなリスク因子であると考えられます。

膝のバイオメカニクスの異常がもつ意味は男女で異なり、女性アスリートは男性アスリートの4~6倍、ACL損傷の頻度が高くなります。

男女の青少年アスリート(11~19歳)に関する他の研究でも、着地など、傷害リスクの高い活動中の動的な膝の外反が圧倒的に多いことが示されました。

しかし、動的外反と年齢の関係を分けて考えることが重要になります。

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