ランニングと競技パフォーマンス(有酸素性能力を測定するフィールドテストは、連続的多段階トラックテストと、最大努力による多段階シャトルランテストの導入によって変革を遂げた)
有酸素性能力を測定するフィールドテスト
ランニングと競技パフォーマンスに対する関心が増大した1980年代、有酸素性能力を測定するフィールドテストは、連続的多段階トラックテストと、最大努力による多段階シャトルランテストの導入によって変革を遂げました。
これらのテストはいずれも強度が次第に増加して、テストが終わる頃には、被験者の最大努力による運動を必要とし、通常は、録音された音に合わせて運動を行ないます(ビープテスト)。
しかし、それぞれのテストは独自のものであり、異なる方法でアスリートの身体を評価しています。
最大酸素摂取量が高い選手と低い選手のYo-Yo IR2テスト
U-13からU15までの各測定時期で最大酸素摂取量が高い選手と低い選手に分類し、Yo-Yo IR2テストの結果を比較した結果、U-13では酸素摂取量が高い選手と低い選手にYo-Yo IR2テストの結果に違いはみられませんが、U-15では明らかに最大酸素摂取量が高い選手のほうがYo-Yo IR2テストが良い結果になっています。
これらの結果は、Yo-Yo IR2テストの制限因子が中学生年代を通して無酸素性能力から有酸素性能力に変化することをが起因しています。
以上を実際の指導現場にて当てはめて考えると、U-14以前においては、Yo-Yo-IR2テストの結果、あるいは試合を観察することで評価される選手の持久力(間欠的運動能力)は、その選手の有酸素性能力を反映していないといえます。
また、Yo-Yo IR2テストの結果や試合での持久力の短時間での改善も、必ずしも選手の有酸素性能力の向上を意味しません。
それらは下肢の筋量・筋パワーの発育発達に基づく無酸素性能力の発達の程度が影響し、そのため成熟段階の個人差に強く左右されます。
その結果、早熟な選手ほど一時的に有利な状況が生まれますが、U-15以降では、成長の遅速にかかわらず無酸素性能力以上に有酸素性能力がYo-Yo IR2テストに影響するようになります。
したがって、U-14以前において有酸素性能力を十分に高めておく必要がありますが、それはYo-Yo IR2テストでは妥当に評価できません。
すなわち、中学生年代におけるサッカー選手の指導においては、Yo-Yo IR2テスト以外にも、選手の有酸素性能力を身体の成熟段階の影響を受けることなく評価可能なテストが必要と考えられます。
Universite de Montreal Track Test(UMTT)
Universite de Montreal Track Test(UMTT)は連続的多段階テストの一例になります。
参加者は、25m間隔でコーンが設置されたトラックまたはフィールドを連続的に走り続け、初期ペースは10km/hに設定され、2分ごとに1km/hずつ増加します。
被験者は、次のビープ音が鳴るまでに次のコーンの2m以内に到達しなければならず、これを3回連続で失敗すると、被験者の最高速度に達したと判断されて、その被験者に対するテストは終了します。
25mの半分まで到達している場合は、記録速度は0.5km/h加算され、この速度が、最大有酸素性速度(MAV)を示していると考えられます。
テストの妥当性と信頼性
Dupontらの引用によると、Leger&Boucherは、このテストが、トレーニング経験有および無の若年および中年男女のVO2maxを予測するにあたって妥当性が高く(r=0.96、標準推定誤差:SSE=2.81ml・kg-1,min-1)、信頼性が高い(r=0.97、SSE=1.92ml・kg-1,min-1)ことを見出しています。
被験者は競技サッカーに参加する可能性が高い層であり、したがって適切なテストであると考えられます。
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