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このクソ暑い夏に部活してたなんて狂ってたとしか思えない

先週抜いた親知らずがズキズキ痛む中、縫った糸を抜いてもらいに病院まで自転車で向かった。午後11時。マンションを出ると、一体なんだこりゃ。ここはサウナですか?とありきたりなツッコミが自然と飛び出すほど暑い。

病院まで向かうわずか10分ばかり自転車を漕いだだけで、すっかり汗をかいてしまった。どうやら気温は35度を超えているらしい。もう23年も生きているのに、ちっともこの猛暑に慣れないのは何故なんだろうか。滴る汗を拭いながら、疼く歯の痛みに耐え診察を待つ。

思えば、いつもこの病院はテレビを流していた。ちょうどこの時期なら甲子園が流れている頃だろうか。昔、野球少年だった僕はここで順番を待ちながら白熱する試合を固唾を飲んで見守っていたのが懐かしい。でも今年は甲子園がない。そして待合室はときどき咳が聞こえる以外は無音だった。テレビをつけても流れてくるのはコロナの話題ばかりだからか、古ぼけたテレビも撤去されていた。

10分後、無事に糸を抜いてもらった僕は近くの薬局で痛み止めをもらい、またコンクリートが溶けるくらいの暑さの中に飛び出していった。

その帰り道、近所の学校のグラウンドの近くに、信号待ちで止まった。いつもと違って、セミの泣き声が響き渡るだけ。「バッチコーイ」とか「行けー」とかも「ッシャース」とかもはやなんて言ってるか理解不能な掛け声は聞こえない。誰もいないグラウンドの砂は、卵を落とせばあっという間に目玉焼きが出来上がってしまうくらい暑そうだ。

こうして信号が青に変わっているのを待つ間にも、汗はとめどなく流れる。今日は半袖のポロシャツに半ズボンにサンダルという人間ができる最大限に涼しい格好をしているのに、耐えがたい暑さとは一体。

しかし僕は昔、このクソ暑い夏にしっかりユニフォームをきて、毎日部活に行っていたのだ。今となっては信じられないが、ソックスを履いて、パンツを履いて、一丁前にアンダーアーマーを着て、汗だくになりながら、いや、汗も乾いて塩まみれになりながら白球を追いかけていた。もう思い出すだけで熱中症になりそうだ。

おまけにこの鉄板みたいなグラウンドにうつ伏せに寝っ転がって、背筋の力だけで上体を起こしてボールを投げてキャッチボールするなんて鬼畜な練習もあった。考えてみてほしい。このクソ暑い日に、近所の公園で地面に四つん這いになんてなれるだろうか?今思い返せば監督が嫌がらせとしてやったとしか思えないような練習だ。もう時効?なのか今となっては何だか暑苦しいけど懐かしい思い出になったけど。

そんな昔の記憶が蘇っているうちに信号は青に変わり、またせっせと自転車を漕いで家に帰った。またゼロから部屋を冷やすのも億劫なので、クーラーはつけっぱなしで外出していた。「フウー」と冷気に癒されながら、冷蔵庫のコーラを取り出してグビグビ飲む。うーん、至福。

こうやって人類の発明の恩恵に預かってる身からすれば、なんで当時、あんなにクソ暑い夏に部活をしていたのかさっぱり理解できない。家にいればこんなに快適な空間があるし、なんなら勉強だって捗る。グラウンドで必死こいてボールを追いかけても、ユニフォームは汚れるし、汗もかくし、なんのプラスにもならない。

でも、これだけは言える。どんなに不合理でも、今考えれば意味不明でも、あの頭が蒸発するくらい暑い夏に、みんなで野球をしてた日は、最高に楽しかったんだと。そして、ああやって全力で汗をかくことの楽しさを、今の僕は忘れてしまったんだと。でも、忘れることが悲しいことだとは思わない。価値観は変わるものだし、ステージが変わるごとにやるべきことも変わる。もう昔みたいに狂ったように外で走り回るよりも、家でのんびり本を読んで仕事をしていた方が今の僕は楽しい。

ただ、このクソ暑い夏に、全力で汗をかいて走り回って楽しんでいる人たちを、心の底から尊敬している。このクソ暑い夏に部活してたなんて、今となっては狂ってたとしか思えない。でも、もしかすると今、狂っているのは、僕の方かもしれないんだ。

最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!