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【シンプルイズベスト】上野の極上サウナ「北欧」でビールをゴクゴク。

この日は寒い夜だった。午後8時。上野駅。まだ一週間が始まったばかりの月曜日。上野駅の東口にはあまり行ったことがない。道路の上に広がる歩道橋を一人歩きながら、僕は寒さに震えていた。

「サウナに入りたい。」

いつからか僕は日常的にそう思うようになった。

「みんながハマるブームになんて、乗っかるもんか」

昔はトガっていた僕も、今ではすっかりサウナの虜だ。骨まで凍えそうな夜にはサウナしかない。僕は足早に上野の街を歩いた。

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今回のサウナは「北欧」。上野で圧倒的人気を誇るサウナだ。人気の少ない路地を行くと、北欧の真っ赤な看板が見えてきた。深紅の背景に真っ白の文字。この看板がそうであるように、北欧のサウナもまたシンプルイズベストなのだ。

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今回、共ににサウナを楽しむのは10歳年上の社会人の方と、中国の大学に通う20歳の青年。どんなメンバーやねんとツッコミたくなる気持ちも分かるが、2人とも僕の大切な友人であり、共にサウナを楽しむ仲だ。裸になれば年齢も国境も関係ない。受付を済ませ素っ裸になり、僕らは大浴場へ向かった。

ガラガラガラ

ドアを開けると「古き良きサウナ」と表現すべき光景が広がっていた。大きなお風呂。シャワー。程よい深さの水風呂。そして露天風呂。いい意味でギラギラしていない。北欧に来るのは初めてだったが、すでに何度か訪れたことがあるかのような居心地の良さが、そこにはあった。

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<大浴場 北欧 ホームページより引用>

体を洗い、まずはお風呂へ。程よい温度で気持ちがいい。芯まで冷えた体が温まっていく。僕はいつもサウナに来ると、まずはこうしてお風呂で体を慣らす。温まってからサウナに入った方が、より短い時間で体が熱くなる気がするからだ。

「ふーーー」

大きな息が漏れる。僕は一人暮らしの大学4年生。バストイレ一緒の家で湯船に浸かることはない。いつもシャワーだ。そんな僕にとってサウナは唯一のお湯に浸かれる時間だ。これもサウナの魅力の一つ。

お風呂で文字通りのウォーミングアップを終えた僕らはサウナへ向かった。

北欧にサウナは一つしかない。15人は入れる大きなサウナは100度近い熱さだ。ちょうど上の段が空いたので3人で座った。この日来た中国の大学に通う20歳の青年は初サウナだった。おしゃべり好きの彼だがサウナでは私語厳禁だと事前に伝えてある。3人でじっと座って熱さと戦った。

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<サウナ 北欧 ホームページより引用>

サウナで大切なのは湿度だ。湿度が高いほど熱く感じる。要するに湿度が高いということは高温の水を浴びているのと同じだ。同じ100度でも湿度が低ければそこまで熱く感じない。ジメジメした日本の夏よりカラッとしたアメリカ西海岸の夏の方が過ごしやすいのはそのためだ。

北欧のサウナはその点素晴らしい。僕らが入ったときはすでに温度が高く、序盤から汗が吹き出た。僕は熱さを測る指標の一つとして鼻の穴に注目している。鼻から息を吸って鼻腔がツーンと痛くなるほど熱いとかなり良い。北欧はまさにそれだった。特別面白い仕掛けはないが、王道をいっている。サウナに必要な温度と湿度、それが両方揃っている所は案外少ない。

野球で言えば150kmのノビのあるストレートでバンバン三振が取れる様なピッチャーだ。小手先のテクニックではない。このサウナは、サウナそのもので勝負をしている。ならば、僕らも真っ向勝負するしかない。北欧の期待に応える様に、僕らは7分ほどじっと熱さに耐え、外に出た。

北欧の水風呂もまたシンプルだ。4人でギュウギュウになりそうなコンパクトな水風呂は、肩まで浸かれる深さを誇る。汗をシャワーで流し、いざ中へ。水温は11度。約90度の落差に体は喜びの悲鳴を上げる。

「ひーーーーー」

30秒ほど浸かり、外へ。今、僕の体の中には熱気と冷気が共存している。体から発散される熱気を、今さっきまとった冷気が外に逃げないように押さえ込んでいる。

その相容れない2人を開放すべく、僕らは露天風呂に向かった。ここ北欧は外気浴ができる。露天風呂のサイドには椅子が置かれ、横になれるインフィニティチェアもある。幸運にもインフィニティチェアが空いていたので僕と20歳の青年で横になった。人生の大先輩である社会人の方は静かに椅子に座って目を瞑っていた。先輩、先に行かせていただきます。

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<露天風呂 北欧 ホームページより引用>

椅子の上に文字通り一直線に寝る。地平線と体が、一直線に平行になる。この瞬間、僕の体は地球の一部となる。生まれたままの裸の姿で、僕は空気と繋がる。外気浴。それは地球と一体化することに等しい。そしてさっきまで僕の体に宿っていた熱気と冷気は、争うことをやめ、共に夜空へと吸い込まれていく。自分の体の一部が自然に帰っていくような、そんな感覚だ。そして僕の意識も空へと上って行く。

「ふーーーーーーーーー」

この気持ち良さのために、僕はここにいる。この一瞬のために、ここに来て良かった。そう思わせてくれるサウナ、それがサウナの王道を行く、北欧なのだ。

その後2セットほどこなした僕らは、少し早めにサウナを出た。実は北欧でやらなくてはいけないことがまだあるのだ。

向かった先はレストラン。そう、今日のメインはサウナではなく、北欧のご飯なのだ。

実はここ北欧のレストランはサウナ界で非常に有名なのだ。サウナで食べるご飯のことをサ飯というらしい。ここ北欧のサ飯はあのサウナブームの火付け役となったドラマ「サ道」に何度も登場する、いわばサウナーたちの聖地なのだ。

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<TVガイドより引用>

ラストオーダー30分前に到着した僕らは、ビールとカレーを頼んだ。サウナに入ると、猛烈に味が濃いものが食べたくなる。レストランに着いた瞬間から、すでに頭の中はカレーでいっぱいだ。そして体は乾きに乾ききっている。

サウナで流した汗。そこから失われた水分を、体が求めている。喉はまるでサバンナだ。100度近い空気を吸い込んだ喉は、少し水を飲んだだけでは潤わない。からっからに乾いた大地が、恵みの雨を求めるように、僕の喉もまたそれを求めていた。

そしてビールがやってきた。

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「乾杯!!!!!」

運ばれるや否や、グラスをカランと合わせ、僕らは乾杯をした。そして、一心不乱にグラスを口元へ運んだ。

「ゴクゴク」

「ゴクゴク」

「クウウウウウウウーーーッ!!!!!」

カラッカラに干からびた喉を、ビールが通り過ぎた瞬間、僕の体は喜びの悲鳴を上げた。

「ゴク。ゴク。」

一口、また一口と飲むたびに、乾いた全身にビールが巡っていくのを感じた。喉を通り、食道を通り、胃を通過し、指先の隅々までビールが駆け巡る。脳のシナプス、一つ一つにまでビールが染み渡る感覚がした。乾いた大地に降った雨が、新たな生命の芽を育むように、ビールで潤った僕の体は「フーッ」と息を吹き返した。気持ちがいい。まさにこれだ。ビールを飲んでこれほど気持ちが良かったことは、これが初めてだ。絶頂。天国。すべてがここにある。

そしてカレーが到着。余計なものがない、これまたシンプルなカレーだ。スプーンでルーとライスを、同じ比率で丁寧にすくう。その黄金比を崩さぬよう、丁寧に口へ運ぶ。一口食べた瞬間、これまた脳が歓喜の声を上げた

「はああああああああ」

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カレーのなんとうまいことか。味の濃い食べ物は、なぜサウナ後の体にこれほど染み渡るのか。

原理的には汗で出た塩分を補うために欲していると説明することができるかもしれない。しかしこの快感は、遥か昔、人類誕生の頃から脳にインプットされてるとしか考えられない。

ビールで潤った大地は、カレーという肥料を与えられ、今、完全に開花した。

花は咲き、鳥は舞い、風は薫り、月が満ちた。百花繚乱。千紫万紅。

この世の春が、カレーと、ビールによって、ここ、上野の地に、いま、訪れたのだ。

シンプルイズベスト。北欧はサウナの王道を行く、極上の楽園だった。


ぜひ、北欧のサウナに入り、ビールで乾杯してみては。それでは素敵な1日を。

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最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!