AIの起業はハードウェアを創ることから参入しても良いかもしれない / テクノロジーをどう装うか

AIという投資/起業テーマにどう立ち向かうか

AIは今の2020年代の大トレンドであろう。いや機械学習的な意味においても含めるとずっとトレンドであるといっても過言ではない。全てがこのAI時代に対しての準備だったのではないかと思えるぐらい、下準備が進んできた。インターネットという情報の海にデータ化がされたものがこの十数年爆発的に増え、それを養分にAIというものがデータをどんどん学習することによって、今の生成AIのトレンドまで到達してきた。

一方でAIの進化が早すぎるかつLLMに近いところへの投資以外は、LLMの進化によってすぐに陳腐化する可能性がある領域であるように感じている。そのような環境の中で、USなどのOpenAIやAnthropicなどのようなLLM開発企業が巨額のお金を集めている。そこに対しての投資は理解できる。日本でいうとSakanaAIなどにお金が集まるのも理解できる(Sakanaが日本企業かという疑問はある。)

つまりAIのアプリケーションレイヤーというか、ソリューションに近い領域は3ヶ月後には他の解決方法ある!ということになる可能性が現状ではある。そのため例えばコンサルティングの領域などはあるだろうなとそれは思うし、逆にその変化を捉えながらずっと作り続けるみたいなものはある気がしている。例えば投資先でいうと自分はAkumaAIは画像系でずっと論文などで検証されているものを取り入れつつ行っているし、Carnotも特定のソリューションというよりは技術に対峙しながらValue propositionを考えている。


ハードウェアを創ることでスイッチングコストを高められる

いまのタイミングなどのAI分野から考えるとハードウェアから作るような入り方は個人的には筋が良いかもしれないと考えるときはある。なぜならソフトウェアとしてはできることは日進月歩で変化していくなかで、それをPCやiPhoneというハードウェア上のソフトウェアとして選ばれる力をつけていくことはなかなか大変なのではないかと思ったからだ。
例えばいま自分のiPhoneのホーム画面をみてもAI系だけでも、ChatGPT・Perplexity、Claudeの3つが最初のホーム画面にあってそれのどれを使うかって現状だけでも迷うというか難しい。そしてもちろん細かい特徴があるのはわかるが、一般的に利用する人からすると正直自分含めて違いはわからない。

そのためまずハードウェアから販売し、実際にAI技術の進展とともにハードウェアができることも増えていくことが可変にできるはずである。ハードウェアから入ることによってスイッチするコストを高くし、AIの技術進化しながら、その瞬間にあったAIサービスを提供していくという順番はあるのではないか。

それは例えばテスラなどをみていてもハードウェアがある強みを感じる。自分はテスラオーナーではないが、テスラオーナーに話を聞くとハード買ってからずっとソフトが進化し続けているという話を聞く。去年まではマップがおかしかったけどいまは良くなっていると。実際に購入画面にいってもいままだできないことだがオプションが最初からある。しかしこれならハードで囲い込みながらソフトウェアの開発もできる。

実際にハードウェアから参入する企業

実際にいくつかのAI企業はハードウェアから参入している企業もある。有名なのはRabbit AIやAI pinなどがある。最近ではFriendなどもでてきたりしていて、AI-naitiveなハードウェアみたいなものはテーマとしても面白いのではないかと考えてはいる。下記にいくつか事例を上げてみる。

Rabbit AI:最もシンプルなコンピューターというビジョンで始まった。カメラと音声で入力をし、PerplexityAIのLLMでスピーカーと画面を通じて返答してくれる。

AI pin:Pinバッジのようなもので音声会話ができまた、映像は下記画像のように手にうつすことができる。いろいろ悪い噂はあるが、コンセプトは非常にかっこいい

Friend:ずっとペンダントとしてつけていくことで、会話などを全て記録することでチャットでAIから話しかけられる。Utilityというよりは友達・ケアの文脈。

Limitless pendant会議ソリューションにフォーカス。音声を記録することができそれを文字起こしやサマリーなどを行ってくれる。

生成する元のデータ取得のためのハードウェア

こう見ていると、データの取得のためにハードウェアから入るというのは一つのAI企業の入り方としてあり得るのだろうなと思う。自分のデータアセットをどうつくるかという意味において、記録のしやすさを考えるとスマートフォンより別のデバイスが一つある意味はありそうだ。
またプラットフォーム企業ももちろんこのあたりのハードウェアについては検討しているようだ。例えばSamAltman率いるOpenAIも最近では元Appleのデザイナーのジョナサン・アイブと共同してスマートフォンを創るかもしれないというニュースもある。LLMの戦いにおいても、最終もしかしたらハードウェアの勝負になるのかもしれない。


マーケティング/認知としてのハードウェア

またこれは些細な論点かもしれないが、D2C的な世界にいま生きていることは以前記事でも書いたが、広告費をかけずにユーザーを連れてくるという意味において、ハードウェアというのはレバレッジが効きそうである。
ソフトウェア・インターネットサービスだけだと、それは埋もれてしまうし見え方としても映えないのでなかなかマーケティングコストが重くなる。一方ハードウェアとしてモノがあった瞬間にマーケティング・認知をよりとることができやすくなる効果はある可能性は高い。そういった意味においてもハードウェアっぽいものはより今後でてくるのかもしれない。


Fullstackスタートアップ・・なのか?

馬田さんのFoundXの記事でフルスタックスタートアップについてのa16zの和訳があった。このような概念については非常に理解しうる、ソフトウェアだけハードウェアだけという断裂ではなく、End-to-endにおいてユーザーに一貫して価値を届けることによって提供できる価値は10倍インパクトが起きるものになりえるのかもしれない。
AIという技術に関してもその技術の素晴らしさを十分にとどけるためにはソフトウェアだけではなく、ハードウェアまで開発をすることで下記引用でも記載させていただいたように新技術に対する文化的な抵抗感を克服することができるのかもしれない。

新しい「フルスタック」アプローチは、既存企業や他の競合他社をバイパスして、完全なエンドツーエンドの製品やサービスを構築することです。
(中略)
ディクソン: 先ほども述べたように、フルスタックのアプローチを採用することで、スタートアップ企業は既存の企業を回避し、新技術に対する文化的な抵抗感を克服することができます

(フルスタック・スタートアップ (a16z))

スマートフォンのリプレイスはAI-naitveなハードウェア?

この15年ほどの変化の中で一番大きい変化はスマートフォン/iPhone出会ったことは間違いない。それによって多くのサービスが生まれ、また自分たちの生活も大きく変化したことがある。この変化が社会にとって、良い変化だったのか悪かったなのかは棚上げだが、スタートアップ/VCにとっては良かったことは確かだ。
Next スマートフォンはなにか?みたいな議論はずっとあるが、正直このあたりにヒントがある気がしている。VRは少しまた毛色が違う可能性あるなと。またARグラスまでいくのはまだ遠いと個人的には思っている。そうしたときにAI-naitiveなハードウェアなどを今後登場したりしたときに、新しい会話型インターフェイスであったり技術に適したハードウェアが広まっていくことがNext スマートフォンになりえるかもしれない。ただ今時点でいうとまだまだそう簡単でもないことは、下記記事の引用からも伝わってくる。今後に期待。

テック系 YouTuber として有名な Marques Brownlee 氏は、AI Pin のレビュー動画で、動作が遅く、バッテリーの持ちが不十分で、AI 機能の精度も良くないとし、「これまでレビューした中で最悪の製品」だと述べている。また、Android Authority は、R1は「単なる Android アプリ」であり、他の携帯電話にも APK としてインストールできると批判している

(https://thebridge.jp/2024/05/limitless-pendant-attracts-attention-while-rabbit-r1-and-ai-pin-receiving-negative-reviews)

テクノロジーをどう見せるのか

こういったサービスがスタートアップから出るかはわからないけれども、例えばポケトークみたいなのは良い参考になるのではないかと思う。中身はGoogle翻訳などであっても、ハードウェアがあるだからこその全体の体験がアップデートされている。そういった技術をどう見せるのかということは今後一つ大きなテーマになりうるかもしれない。

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