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失われた「夏目漱石賞」を復活させて欲しい

芥川賞、三島由紀賞、谷崎潤一郎賞と、偉大なる文豪を冠した賞が数々ありますが、その中でひとり肝心な人を忘れている気がします。

それは、つまり夏目漱石先生のことです。夏目漱石賞、ありそうでない賞です。

しかし、いろいろ調べてみるとかつては存在したそうです。1946年に桜菊書房というところが、夏目漱石没後三十周年を記念して、賞を作りました。

その栄えある第一回が渡辺伍郎「ノバルサの果樹園」という小説でした(残念ながら消えてしまいましたが)。

この夏目漱石賞。なぜか第一回限りで終わってしまいました(武者小路実篤を始め選考委員がとにかく豪華)。
その後に長い中断があり、1968年に河出書房が第二次という形で作ったのですが、その主催者の河出書房が倒産してしまうという悲劇に見舞われて頓挫してしまいました。

そこから、さらに50年近くたち、かつてお札までになった夏目漱石先生を冠する賞がないのは、夏目漱石を尊敬する小説書きとしてはとても寂しいことです。

というわけで、この際、時代も令和になり、没後100年も過ぎたので、そろそろ夏目漱石賞を復活させてもいい頃だと思いませんか。

それも、芥川賞を主催する文芸春秋社や、三島由紀賞の新潮社などの縄張り意識満載の単独一社による主催ではなく、出版業界全体の共催、それも、文学界総力をあげて、最大の栄誉ある賞として。

夏目漱石という名を冠する以上、それぐらい大々的に行ってもいいぐらいの賞だと思います。

さらには、他の賞のように作品に対してではなくノーベル賞のように、生存している(亡くなった人を顕彰しても意味がない)作家個人を対象にするのはどうでしょうか。つまり、野球界で言えば沢村賞のような。

日本最大の賞が、何となく芥川賞、直木賞というイメージが多くの人についているのはどうにかならないかと常々思っています。これらは、あくまで新人賞ですから。

外国では、文学界の最大の栄誉ある賞というのは、文学をよく知らない日本人でも聴いたことがあるぐらいにはっきりしています。
イギリスだったら「ブッカー賞」、フランスだったら「ゴンクール賞」、アメリカだったら「ピュリッツァー賞」というように。
これらは、出版社同士のせせこましい垣根などとっくに取り払われています。

と、出版不況と言われる現在、また賞ばかり作っても文学の悪あがきと言われてしまう気もしますが、文学における日本最大の賞というものがないのは、何となく寂しい気がします。

そして、もし夏目漱石賞が出来たととき、栄えある第一回は誰になるのでしょう。考えるだけでもわくわくします。大江健三郎、村上春樹、吉本ばなな、村上龍、北方健三、上橋菜穂子、もう少し前なら、中上健次、石原慎太郎・・・。

候補者は目白押しです。

その中でも、芥川賞をもらっていない村上春樹さんとか、吉本ばななさんなど、もうそろそろ日本の文学業界全体で、大々的に顕彰してもいい頃だと思います。

選考はぜひ書店の人にとお願いしたいところもありますが、本屋大賞という賞もあるので、ネットで読者の自由投票が妥当かなあとは思いますが、個人的には各出版社の一番大きな賞受賞者でやって欲しいです。つまり、各出版社の賞を受賞した作家が選ぶ、賞の中の賞として。

そして、受賞した作者に贈られる賞品としては、それぞれの出版社で関連特集記事を出す。一年間フェアを行う。その作家の作品を一番多く出版している会社が全集を編むなんてどうでしょう。

と、思いつくまま勝手な妄想ばかり書いていますが、栄えある夏目漱石賞を作っても、作家にとっても出版社にとっても、そして低迷する文学界にとっても決して損にならない話だと思います。
まあ私は、一生もらえることはないでしょうが・・・。

ではまた


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