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儲かっているお店が必ずしも売りやすい訳ではない【M&A日記】

利益と人気はある程度比例する。

儲かっているお店は良いお店である確率が高く、その分だけ欲しいという買い手も増える。
なので、一般論としては儲かっているお店には買い手がつきやすく、売りやすいとなる。

もちろん、売主が相場以上の価格を求める場合においては、人気があったとしても高すぎて買える人がいないという問題も生じる。
良い事業であっても、価格との整合性は必要で、それがない場合には売るのが難しくなる。

今回書きたかったのは、高値を希望していないのに難しいというケース。
具体的にいうと、儲かっているけれども1店舗だけ、というのは意外と譲渡するのが難しい。

例えば、1店舗で年間5000万円の利益を上げている飲食店があるとする。

仮にこれが10店舗で5000万円の会社だったとする。
その場合、3〜5倍程度の評価がつくので、1.5〜2.5億円ぐらいで普通に売れていく可能性が高い。

しかし1店舗となると、1.5億円でもなかなかにして難しい。
評価としては正当に見えるが、難しい。

難しい理由は、リスクが大きいから。
10店舗で5000万の利益なら、1,2店舗がダメになっても残りの4000万の利益で投資額を回収すれば良いというリスクヘッジができている。
しかし、1店舗でもしダメになるとかなりキツい。
利益が半減すれば、投資回収はだいぶ遠のく。
コロナみたいなことがあったので、利益が半減するというようなことが現実的に起こりうると今は思われていて、難しい。
1店舗に1億円以上かけるというのが、そういうお店を作ってきている会社なら理解できるかもしれないが、そうでないとかなり大きなリスクに感じられる。

また、1店舗でそれだけの利益を上げているという場合には、そこに属人性などの展開や承継が難しい要素が備わっていることが少なくない。
有名なシェフによって成り立っているとすれば、そのシェフがいなくなれば業績が傾くのは容易に想像できることで、それもまた評価に影響を与える。

価格を下げれば売れる可能性は高まるが、売主からすればそれも納得がいかない。

上述したのはあくまでリスクであり、仮に5000万円で譲渡して、何ら問題なく運営されて買い手が1年回収となっていれば、自分ばかり損したと思うのが普通だ。

なので、1店舗の高収益店は、3倍程度での譲渡を試みるものの、難しい可能性も十分にあるので、従業員などに承継して分割で対価を獲得するというようなことも選択肢に入れることをお勧めする。
1店舗の場合は大きな企業と比べて社内承継は幾分かやりやすい。
マネジメントも限定的だし、収益ベースで対価を支払っていくのであれば個人のリスクも限定的になる。

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