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1990年より前に設立された会社を譲受けるときは要注意【M&A日記】

会社に係る法律は、会社法で定められている。
この会社法は2006年に施工された法律であり、まだ若い。
それ以前は、基本的には商法で会社のルールは定められていた。

1990年に商法の改正が行われ、株式会社の発起人の下限数が7人から1人に変更された。
そう、実は1990年の改正前は、株式会社の発起人=株主は7人以上いないといけなかったのだ。

私は昨年独立したが、7人の発起人を集めよと言われたら結構困ったかもしれない。
それぞれでお金を出し合って会社やろうぜ!という7人を同じタイミングで集めるのは結構難しいことだと思う。
ましてや7人でスタートして誰が経営者やるの?とかうまくやれるイメージがわかない。
それは当時も同じで、なので7人の発起人は集めるものの、実態としては名義株という方法が用いられることが多かった。
お金は中心となって会社を設立・経営していく人間が拠出し、他6人は出資したというテイにする、というもの。

これがM&Aの際にややこしい問題を起こすことがある。

例えば1980年に設立された会社があったとする。
設立の中心人物=社長は20歳で、親戚などに相談して、結果当時40歳の両親×夫婦、40歳の叔父・叔母に発起人になってもらった。
現在社長は63歳、他の発起人は存命なら83歳。
亡くなった親の株式は相続してきたが、叔父・叔母とは疎遠になってしまっていたため、連絡を取っていない。
社長も年齢的に事業承継を考え、会社の譲渡を進めることにした。

いざM&Aを進めようと思うと、自社の株主を明確にし、かつ彼らの譲渡意思も確認しないといけない。
存命の親の分は問題なかったが、叔父・叔母の確認が必要だった。
連絡を取ってみると、叔父は既に亡くなっていたことが分かった。
叔父・叔母には子供=社長のいとこがいるが、社長とは折り合いが悪い。
叔父が保有していた分の株式は、一部がいとこに相続されてしまっていた。

そんなドラマみたいな!なんて思うかもしれないが、普通にあることだ。

◆いとこが売ることを拒否するために、買収候補企業は対象会社の支配権を取れない可能性を危惧してM&Aが進まない。
◆いとこも叔父・叔母も会社の経営には1ミリも携わっていないのに、M&Aが成立したらその持ち分分がいとこに対価として支払われる。

というように、社長からすれば何でこんなことに…というようなことになってしまいかねない。

また、買収側としては、1990年以前に設立された会社であれば、必ず最初は7人以上の株主がいるので、M&Aの提案時点では一人に集約されていると言われたとしても、その変遷の確認が必要だ。
株式が一人に集約される過程において、それは適法に行われている必要がある。
適法に行われていなかった場合、万万が一、譲受後に発起人の一人が株主としての身分を主張してきたりすれば、めちゃくちゃめんどくさいことになってしまうのだ。


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