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持株比率のマイノリティとマジョリティ【M&A日記】

企業を買収したり、出資したりする際に、対象企業が発行している株式の内、過半数以上を取得することはマジョリティ(多数派)といわれ、過半数未満の取得はマイノリティ(少数派)と言われる。

私が支援する中堅中小企業のM&Aでは、対象企業の株式を100%取得することが多いが、同じマジョリティでも80%だけ取得するというような場合もあるし、30%程度のマイノリティとなる場合もある。

では株式の取得割合によって何が変わるのか?
マイノリティとマジョリティの場合、一番違うのは「経営権」の取得だ。
経営権というのは便宜的に使われている言葉で、実は法的な意味はない。
(※余談だが、社長とか会長とかという言葉にも法的には意味はない)

じゃあマジョリティの株式を取得すると、経営権を得られるというのは具体的に何を意味するかというと、取締役の選任と解任だ。

企業の経営は株主から取締役に委任される。
なので、企業の経営を行うのは取締役だ。
企業によって、取締役会がある場合とない場合がある。
取締役会がある場合は、一般的には最高意思決定機関は取締役会となり、取締役会がない場合は代表取締役となる。
代表取締役の選任は企業によって異なるが、取締役会or取締役の互選によって選出されるというのが一般的。
そして、取締役会では、多数決によって決議がなされる。
まとめると、企業における意思決定は取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では代表取締役によって行われるということになる。
経営権とは、企業における意思決定ができることをいう。

①代表取締役が最高意思決定機関の場合
代表取締役は取締役の互選で選ばれる。
互選というのは取締役たちが、取締役の中から選ぶということ。
多数決なので、取締役の内、過半数の人間の意見をまとめられる立場にいれば、代表取締役は自由に選任できるようになる。
取締役の内、過半数の人間の意見をまとめるには、自分の意思を反映してくれない取締役を解任し、反映してくれる取締役を選任することだ。
なので、取締役の解任と専任の権限を得ることは、即ち経営権を取得するのとイコールになる。

②取締役会が最高意思決定機関の場合
取締役会の決議は多数決だ。
なので、取締役の内、過半数が自分の意思を反映してくれれば、意思決定は自由となる。
①と同様に、取締役の解任と専任の権限を持っていれば、経営権を取得できることとなる。

では、何故マジョリティの株式を保有していると、取締役の解任と専任ができるようになるのか。
それは、取締役の解任と専任は株主総会における普通決議事項であると会社法で定められているからだ。
そして、普通決議事項は、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数を必要とする決議方法だ。
即ち発行済み株式の内過半数を取得していれば、単独で株主総会における普通決議事項を決議することができるようになる。

※厳密には発行済み株式の過半数ではなく、議決権の過半数。議決権のない株式を発行しているようなケースでは要注意。

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