決めるのは、デューデリの弁護士でも会計士でもない【M&A日記】
会社を譲渡する相手が決まると、譲渡契約を締結する前に買収監査=デューデリジェンスを行う。
通常モノの売買をするときは、条件が定まれば売買契約を締結して完了だが、M&Aの場合はその前にデューデリジェンスというステップを踏む。
会社には、特に中小企業には様々な問題があることが普通。
デューデリジェンスではこれらの問題を明らかにする。
事前の検討段階においてはなかなか見つけるのが難しかったり、そこまでコストをかけて調べることが難しかったりするので、条件が定まって買収意向が明確になってから行う。
問題には大小ある。
例えば反社との取引があったというような場合は、問題の大きさから、またその解決の見通しが立てられないため、破談に向かう可能性が極めて高い。
あるいは、残業が十分に支払われていないというような労務問題の場合は、今後是正していくという対策をとれるため、破談にはならないかもしれない。
しかし、それによって利益が減ると見込まれれば、合意されていたM&Aの条件の見直しが必要になるかもしれない。
あるいは、会計処理上の細かなものであれば、特段問題として取り上げる必要もなく、M&A自体にも影響することはなかったりする。
こんな感じで色々な問題を明らかにしていく。
M&Aで一般的に行われるデューデリジェンスは3種類。
①法務・労務、②財務・税務、③ビジネス。
専門家に外注することが多く、法務・労務は弁護士、財務・税務は会計士、ビジネスはコンサルティング会社などが担当する。
さて、デューデリジェンスは問題を明らかにするということが目的のため、調査される会社からすればあまり気持ち良いものではない。
特に、担当する人によってかなり印象が変わる。
デューデリジェンスが売主からすればあまり気持ち良いものでないということが分かっている人は、資料依頼、質問等をケアしながら進めてくれる。
こういう担当者だと、私のM&A仲介の立場からするととてもラッキー。
一方で、そういう売主への感情移入をせずに、ドカドカと土足で上がってくるかのように質問をしてきたり、問題を指摘したりする人もいる。
こういうのは厄介。
売主からすればドンドン不安になるし、気分も悪くなる。
なので、デューデリジェンスが始まる前に私は必ず、揚げ足ばかり取ってくるし、問題の指摘ばかりされるし、めちゃくちゃ大変だと伝えて思いっきりハードルを上げておく。
そして何より、弁護士や会計士がどれだけ鬼の首を取ったかのように問題を指摘してきたとしても、その問題をどう扱うかを判断するのはあくまで買収企業であって、弁護士や会計士ではない。
弁護士が大問題だ!といったところで、買主が「まぁいいんじゃない、買ってから是正すれば」と判断すれば、それが結論。
なので、デューデリジェンスでいろいろな問題が明らかになったとしても、注意すべきはあくまで買収企業の考えであり、対話すべきも買収企業だ。
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