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非上場企業の株式を少量保有する意味を考える【M&A日記】

種類株を発行していなければ、基本的には株式数=議決権数。
議決権数は、株主総会における決議において重要な意味を持つ。

株主総会における決議内容は以下3種類に分類される。
決議要件は決議の種類によって異なる。
株主にとって重大な事案(普通決議→特別決議→特殊決議)ほど決議にはより多くの賛同が必要となる。

  1. 普通決議
    決議要件:議決権の過半数を有する株主が出席、出席株主の議決権の過半数以上

  2. 特別決議
    決議要件:議決権の過半数を有する株主が出席、出席株主の議決権の3分の2以上

  3. 特殊決議
    決議要件:
    ①議決権を行使できる株主の半数以上、かつ当該株主の議決権の3分の2以上
    ②総株主の半数以上、総株主の議決権の4分の3以上

具体的にどの事案がどの決議に類するかは、別途検索して確認してほしいが、例えば取締役の選任・解任は普通決議事項、ストックオプションの発行は特別決議事項だ。

各決議ごとに、決議要件がことなるため、自身でどれだけの議決権数を持っているかによって、各決議を単独で通すことができるのか、あるいは他株主の同意も必要となるのかが変わってくる。

非上場企業と上場企業の根本的な違いは、株式の流動性だ。
すなわち、株を簡単に売れるかどうかで、上場企業であれば仮に持ち株比率が0.1%しかなく、株主総会決議にはほぼ影響しないような株数であっても、その株を売れる可能性は高い。
それは株式の流動性が高く、また株価が上がったり下がったりするために、投資対象として見やすいからだ。
しかし、非上場企業の場合、0.1%の株式には殆ど価値がない。
対象会社がM&Aによって買収されることになれば、0.1%の株式にも価値がついて対価の受け取りができるが、そうでもなければ、0.1%には議決権上の影響はほぼないし、流動性が極めて低いために、投資目的でそれを取得したいという人はまず出てこない。

とすると、上述した決議要件を踏まえて考えると、非上場企業の株式を、議決権比率25%未満となる割合で所有している場合、単独では株主総会決議は何も通すことができなく、かつ流動性が低いために、実質的にはとても価値の低い株式を保有しているともいえる。

もちろん、実際には例えば株式100%の価値が100億円の会社の株式を20%保有していれば、20億円相当の資産所有者ということになるし、M&Aともなれば相応の対価を受け取るし、その株式を相続・贈与するとなれば、相応の税金もかかってくるので、価値がないというのは語弊がある。

ここで私が考えたかったのは、元々100%の株式を保有していたオーナー経営者がM&Aによって株式を譲渡するときに、20%とか10%の株式を残しておくことに意味があるか?という点だ。

結論から言えば、その残した株式が将来的に譲渡できる可能性が高ければ意味があるし、譲渡できる可能性が見えないとすればリスクが高いと考える。

PEファンドのように、買収した会社を必ずまた売却するという前提であれば、20%の株式を残しても、数年後にファンドがまた売却するときに一緒に売却できる可能性が高い。
ファンドが保有していた期間で、20%の株式価値が上昇していれば、一部株式を手元に残していた意味が出てくる。
しかし、売却を前提としない企業に譲渡した場合、例えば8割の株式を取得した企業からすれば、株主総会における決議は基本的に単独で通せるので、残りの2割を追加で取得するインセンティブはあまり働かない。
とすると、その2割の株式は実質塩漬けされたような形となり、換金が難しければ議決権上の力も小さいし、相続のときには税金だけ発生してしまうことにもなりかねない。

一部株式を手元に残しておく時には、予めその出口を想定しておくことが
大事だ。

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