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近隣校育成リーグ はじめました

はじめに

「近隣校育成リーグ」
我ながら名前がダサい...。

これは私が作った小さな大会(リーグ戦)の名称です。
私の指導する中学校から、徒歩で移動できる圏内にある近隣の中学校3校を参加校としてお誘いしました。また、勝敗を争うことよりも、選手個々の育成を目的としているため「近隣校育成リーグ」という名前にしました。

今回は、このリーグ戦について紹介させていただきます。

近隣校育成リーグの特徴

特徴①近隣校だけで行う

私の指導するT中学校が主催となり、K第1中、K第2中、J中の3校をこの大会に招待しました。この3校は、本校からはすべて徒歩で移動できる圏内にあります。自転車で移動すれば10分ほどで到着できます。保護者に車を出してもらう必要もありません。場合によっては平日の放課後に移動して、試合をすることも可能です。


図1:T中学校を中心とした場合の4校の距離
どの学校も徒歩30分前後、自転車だと10分前後の距離にある。

見落としがちですが、中学生の大会のあり方として「移動に時間がかからない」というのは費用対効果を考えると、非常に重要な要素ではないでしょうか。
中学生は部活だけでなく勉強もしないといけません。大会に参加するための移動時間を1時間短縮することができれば、その時間をシュート練習の時間や勉強の時間に充てることができるはずです。

また、コロナ禍の中では、教育委員会からの通知で「練習試合は近隣校のみとする」となることが度々あり、その度に様々な大会や練習試合が急遽中止になりました。そのような中でも、安定して継続できる大会を行うためにも、参加校を近隣校のみとしました。

特徴②競技開始年齢を基準にしたグループ分け

普段、試合に出る機会の少ない部員に試合経験を積ませたいー。
元々、この大会を作るきっかけとなったのは、そんな思いからです。

私が指導するチームは1・2年生だけで約30名の部員が所属しています。
当然ですが、生徒の技能や意欲、経験値はバラバラです。
夏の中総体を一番の目標にしながらチームづくりをしていると、
どうしてもミニバスを経験してきた生徒や、早熟傾向の生徒を中心に指導を進めることになってしまいます。
その結果、ミニバスを経験していない生徒や晩熟傾向の生徒は日々の練習に意欲的に取り組むことが難しい現状になってしまっていると感じています。

そのような生徒たちも、定期的に試合に出場するチャンスがあり、他校の同程度のレベルの選手たちと競い合う機会があれば、日々の練習に対する意欲が高まるはずです。この大会は、そのような大会を目指して作られました。

さて、グルーピングの方法ですが、ここでは2つの案を考えました。
一つは生徒の発育傾向(早熟型、平均型、晩熟型)によってグループを分ける方法。もう一つはバスケの経験年数によってグループを分ける方法です。

選手の発育傾向が早熟型、平均型、晩熟型のいずれかを判別するには成長速度曲線を利用すれば良いのですが、成長速度曲線から発育傾向を知ることは、少しハードルの高い作業になるので、複数校を招待する大会でのグルーピングには不向きかな…と考え、不採用としました。

そこで、今回の大会では生徒のバスケ経験年数(=競技開始年齢)によってグループ分けをする方法を採用しました。
具体的にはHOPリーグ・STEPリーグ・JUMPリーグという三つのリーグを作り、各リーグの参加要件を以下の通りに設定しました。

図2:各リーグの競技開始年齢を基準とした参加要件とその注意事項

簡単に言うと、HOPリーグはミニバス未経験の生徒たちのリーグです。STEPリーグはミニバス経験はあるものの、経験年数の浅い生徒たちのリーグです。JUMPリーグはミニバス経験があり、経験年数も長い生徒たちのリーグです。

注意事項にもある通り、HOPリーグの参加要件を満たす生徒はSTEPとJUMPに、STEPリーグの参加要件を満たす生徒はJUMPリーグに参加することは可能ですが、その逆はできません。

また、各学校、どのリーグに何チーム出場させてもOKで、登録メンバーを5名以上10名以内として、なるべく選手の参加機会を確保できるように工夫しています。
つまり、ミニバス未経験の生徒が10名いれば、10名で1チーム作ることも可能ですし、5名で2チーム作り大会に参加することも可能だということです。そこは、チームの実情やコーチの考え方で様々なパターンが考えられます。

その結果、今回の近隣校育成リーグでは、参加チームは以下のようになりました。

図3:各リーグの参加校数

ミニバス未経験者のリーグであるHOPリーグが最も参加チーム数が多いリーグとなりました。これは、盛り上がりが期待できそうです。

特徴③総当たり2回のリーグ戦形式を採用

総当たりを2回行うリーグ戦形式の大会なので、1回目の試合を振り返り2回目の試合に向けて練習を行うことができます。シンプルですが、やはりM-T-Mメソッドは大切です。今回は以下のような星取り表を作成しました。


図4:HOPリーグの星取り表

普段、試合に出場する機会の少ない生徒にとって、試合で明らかになった自分の課題を持ち、日々の練習に取り組むことができるというのは、モチベーションの向上に直結するはずです。

参加チームが一番多いHOPリーグについては、総試合数が12試合になります。
STEPリーグは2チームですので2試合。JUMPリーグは3チームですので6試合。
全リーグで合計20試合を行うことになります。

参加4校の顧問で日程調整し、この20試合を8月から11月の間に全て行うことができたらと考えています。また、各リーグ優勝校には賞状を準備する予定です。
さらに、このリーグ戦がうまくいけば、第2節を2月から4月の3カ月間で行えたら…とも考えています。

このリーグ戦を通して、普段、なかなか試合に出ることのない選手がやる気を持ってバスケに向き合い、さらには技能を高めることのできる環境を作ることこそが、このリーグ戦の一番の目的です。
指導者としても、このリーグ戦を通して選手一人一人の振り返りを練習に活かすことができればと思っています。

おわりに

私の所属するX県では、以前より競技開始年齢が若い選手や早熟型の選手で運動能力や技能が高い選手は、私立強豪校に入学したり公立強豪校に転校する傾向がありました。近年、Bユースの参入やクラブチームの増加により、今後は競技開始年齢が早い選手や早熟型の選手が一部の強豪チームに集中する現象は加速していくことでしょう。これはつまり、学校部活動や一部のクラブチームでは、中学生になって初めてバスケットボールを始めた子どもたちが占める割合が大きくなる可能性が高くなるということです。

このような中、部活動を支える指導者として私がやるべきことは「競技開始年齢が遅い子どもたちも十分な試合を経験し、技能の向上に向き合うことのできる環境づくりをすること」だと考えています。

競技開始年齢が遅い子どもや晩熟型の子どもにも才能のある選手は少なからず存在しています。このような子どもたちの才能を漏らさないパスウェイ作りに、そのような環境づくりは寄与しますし、何よりも、特別な才能があるわけではない子どもたちにとっても、バスケットボールを通して人生を豊かにできる環境を提供することができると思うのです。

「近隣校育成リーグ」は手探りで始めた大会です。
そこには、今後の部活動のあるべき姿を模索する私の思いが込められています。
上手くいくかどうかはわかりませんが、とりあえず小さくはじめてみます。
というか、大きくするつもりはありません。小さくできることがこのリーグ戦の魅力でもあるから。

近隣校育成リーグの成果と課題については、リーグ戦の日程を全て終えた後、またご報告できればと思います。

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