出生の秘密、家族との葛藤、そして「許し」へ―志賀直哉の『暗夜行路』③
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8月第2作目には、志賀直哉の長編小説、『暗夜行路』を取り上げます。
『暗夜行路』は、志賀直哉が1921年~1937年の16年余りをかけて手がけた唯一の長編作品。
主人公・時任謙作の複雑な家族関係や恋愛での葛藤が克明に描かれ、彼の内面的な成長を辿っていく大作です。
志賀直哉は、文芸思潮『白樺派』を代表する小説家の一人で、芥川龍之介は「創作の理想」とするなど、多くの日本人作家に影響を与えました。
『暗夜行路』――出生の秘密、家族との葛藤、そして「許し」へ
志賀直哉(1883~1971)
【書き出し】
私が自分に祖父のある事を知ったのは、私の母が産後の病気で死に、
その後二月程経って、不意に祖父が私の前に現れて来た、その時であった。
私が六歳の時であった。
【名言】
※あらすじは、第1回目・2回目の記事をご参照下さい🌸
【解説】①
もしも自分が、祖父と母の間に生まれた不義の子だったら――?
現代から見ても衝撃的なテーマを持つ、『暗夜行路』。
私だったら……と思うと……耐えられないかもしれません💦
他の兄弟とは違い、自分だけがこのような出生の秘密を持っているとしたら。
一体どんな顔して家族の中にいたらいいんだ?
となってしまう気がします。
主人公の時任謙作が自分の出生の秘密を知ったのは、大人になってからですが、それでもショックを受けますよね。
子ども時代に知らされなかったのがせめてもの救いなのか、それとも……?
好きな人への求婚を断られた理由も、自分の出生の秘密にあったらしい、と後から知ったならば、
「なんでもっと早くから教えてくれなかったんだ!というか、自分以外みんな知ってたんか!」
と激しく凹みそうな気もします。
求婚を断られたショックから、放蕩生活を送るようになった謙作ですが、
出生の秘密を知って、さらに乱れた生活は続きます。
ショックだからそうなるよね……
と放蕩生活を擁護するわけではないのですが、
行き場のない憤りをどのようにぶつけたらよいかが分からない場合、子どもでも非行に走ったりしますよね。
この時任謙作の様子を見るに、現代的に分析すると、幼少期に親との適切な愛情形成ができなかった、「愛着障害」とよばれる状態に陥っていると思われます。
🌟愛着障害について、詳しくは共育LIBRARYりょーやん先生の記事をどうぞ!↓↓
充分な愛情形成ができなかった謙作の異性関係は、放蕩生活をおくるなど、非常にいびつなものです。
さらには、祖父の妾に恋をして一緒になりたいと願ったり、
せっかく授かった我が子をすぐに病気で亡くしたり、
可憐さに惹かれて結婚したはずの妻が、不義を犯していたことが発覚したりと、
時任謙作の人生もかなり波乱万丈です。
小説なのでドラマチックな要素が入るのはよくあることかもしれませんが、
あなたの人生に落ち着く瞬間はないのか、謙作よ……と言いたくもなってしまうかも。
・女性に振り回された人生
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