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「アオサギは火の鳥である!」君たちはどう生きるか考察


考察はこれにて一段落です(^^)

体系的な考察は以前の記事でやりましたので、今回はその取りこぼしを回収してお終いといたします。



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アオサギは火の鳥


『火の鳥』は手塚治虫氏の作品で、
古代から未来まで、様々な世界を舞台に描かれており、それぞれのエピソードはそれぞれのエピソード内で完結しています。

物語上で唯一関連するのは永遠の命を持つ「火の鳥」と呼ばれる鳥が登場することです。

「火の鳥」の存在により、それぞれの独立した時間と世界は繋がっているということが分かります。



『君たちはどう生きるか』においてはアオサギが火の鳥の役目を果たしました。




私の感覚では、アオサギはそれぞれ独立した世界を

→『現実』→『ペリカンとインコの世界』→『楽園』→『大おじ様の世界』→『現実』→

という具合に円環状に繋ぐ役割を担っていたのだと思います。

この全ての世界を記憶と姿を保ったまま行き来できる存在はアオサギだけなんです。



また、
火の鳥は100年に一度自らを火で焼いて、再び生き返ることを繰り返して永遠に生き続ける存在です。

そして、
エジプト神話におけるアオサギは太陽と同じように毎朝生まれ、夕暮れと共に死んで、次の朝に再び生き返ることを繰り返して永遠に生き続ける存在とされたそうです。

もしも私が動物たちの協力のもと、
実写映画『火の鳥』の監督をするならば、主人公はアオサギにやってもらいます 笑



アオサギは大おじ様の部下のような描写がありますが、
大おじ様の世界が崩壊した後も、ペリカンやインコとは違い、記憶と姿を保ったまま現実へ帰還しています。

ちなみに、
眞人も記憶を保ったまま現実へ帰還しますが それはイレギュラーな出来事であり、アオサギから
「時間が経てば向こうの記憶はいずれ無くなる」
と指摘されています。



たまたまこの時間軸のアオサギは大おじ様の部下であるだけで、本質的には

アオサギはどの世界のルールからも縛られない存在であり、

『君たちはどう生きるか』に存在する全ての世界を繋ぐストーリーテラーであると解釈して良いでしょう。



眞人が不思議な世界へ行った序盤でペリカンに食われなかったのは『アオサギの羽を持っていたから』でした。

これも、アオサギが全ての世界のルールを跳ねのける存在であることを意味しているのかなと思います。



お母さんが生きている可能性


上記のアオサギと少し被りますが、
眞人のお母さんにも『火の鳥』の要素を感じます。

お母さんは火を操り、火の中を通って別の空間へ移動する能力があります。


アオサギとお母さんを足し算すれば『火の鳥』そのものになりそうです。


眞人や夏子さんは不思議な世界へ来たからといって、特殊能力には目覚めませんでした。
身体的には現実世界にいた頃のまま、ごく普通の人間です。

ということは、
お母さんの火を操り火の中を移動する能力は、
お母さんに先天的に備わっていた能力である可能性が高い
ことが分かります。

不思議な世界の中で自在に火を操れるのはお母さんだけです。
キリコさんも火を使いますが、お母さんほどのレベルでは無さそうです。



お母さんは火事で亡くなったことになっていますが、その亡骸は誰からも確認されていません。

真相は分かりませんが、
病院が火事になった際、お母さんは火の中を移動する能力を使って別の場所、別の世界、別の時間軸へ移動したことも十分に考えられます。



悪人のいない世界


『君たちはどう生きるか』では一見悪人っぽい演出がなされているキャラクターがいますが、この作品に明確な悪役は存在しなかったと思っているんです。

例えばラピュタのムスカのような、分かりやすい悪人はいません。




特に同級生たちの行為を「いじめ」と表現している考察が多いんですが、衝突はあったものの、一方的で陰湿ないじめとは違うと思うんですよね。

喧嘩が終わった眞人は服がボロボロですが、出血はありません。
普通に歩いていますので、見えない範囲に大けがを負ったわけでも無さそうです。

この状況、どういうことか分かります?



相手の子供たち、この喧嘩に鎌を使ってないんですよ。



素手の1人 vs 武器を持った状態の複数人

この状況で大怪我せずに帰れてるって、けっこうクリーンな喧嘩だと思うんですよね。

もちろん【この状況の割には】って話で、喧嘩しないのが一番いいに決まってます 笑



あと、
複数人でいじめたように見えますが、まぁこれも当たり前な状況でして…。

あなたは自分の友人と知らない人が殴り合いになっている場合、知らない人に加勢して自分の友人を殴りますか?
っていう話だと思うんです。

ちなみに2回目の鑑賞で確認しましたが、
眞人が複数人に袋叩きにされる描写は無く、1対1の喧嘩でした。

いや、これも喧嘩止めた方が、もちろんいいですよ 笑



相手の立場に立つと、相手側にも言い分があると思うんです。

『君たちはどう生きるか』で悪人に見えるとすれば
・同級生たち
・インコ大王
・大おじ様(私目線では)
あたりだと思います。

アオサギは最終的に眞人とめっちゃ仲良くなるんで省きます。



誤解の無いように書きますが、
私は一方的で陰湿ないじめは100%加害者側が悪だと思っています。
この場合は議論の余地はありません。

この記事は現実世界のいじめの是非の話じゃなくて、
あくまでジブリ映画『君たちはどう生きるか』の考察です。


分かりやすいように、下記でとある会社に例えてみます。



同級生たち


あなたの勤める田舎の会社には、自転車や徒歩で出勤する社員が多いです。


そんな中、
運転手付きのリムジンを会社に横付けし、新入社員が初出勤してきます。

リムジン出勤を見るのは人生初で、あなたや社員たちは面食らい、どんな新入社員が来たのかと噂になります。

この時点では悪い噂というより、「今日こんな凄いことがあったんやけど…!」と驚きを共有している段階です。

実は新入社員のお父さんの意向でのリムジン出勤でしたが、あなたにそれを知る方法はありません。


自己紹介の時間がありましたが、新入社員はなぜか無言で不愛想でした。


この会社では退社時間の直前に、会社内を皆で清掃することが日課です。
翌日の朝から社員皆が気持ちよく仕事を始めるためです。

そして、
皆で清掃する中、今日から入社した新入社員が一人だけ無言でスタスタと帰っていきます。



大人なので喧嘩はしませんが、
「あの、すいません…、
ちょっとでいいので会社に馴染む努力をしてくれませんか…?」

って一言いいたくなりません?

この状況が小学生同士や中学生同士なら、自制が効かずに手が出てしまうかもしれません。



インコ大王


あなたはこの会社のベテラン社員です。
現場の叩き上げで部下からの信頼も厚く、リーダーシップがあります。

しかし、
社長は現場の仕事に無関心で、実務はすべてあなたに丸投げです。

最初の頃は良かったものの、部下は100人以上になり、現実的な業務に支障が出てきました。

個人の努力ではなく、
残業規則や給料や有給休暇の社内規定を、根本的に見直す時期が来ているんです。

このままでは会社がつぶれて、100人以上の部下たちは路頭に迷います。



そして、ようやく、
待ちに待った社長との直接対面の機会が訪れます。

自分を慕ってくれる100人以上の部下たちの期待を一身に背負い、社長室へ向かいます。


まさにそのタイミングで、
たまたま会社に来ていた社長の甥っ子(眞人)が、社長との直接対面をメチャクチャ邪魔してくるんです!




言葉は悪いですが眞人に対して
「はぁ? なんじゃこいつ!?」

ってなりません?



大おじ様


以前の考察で書きましたが、
個人的には大おじ様へかなりマイナスな感情を抱いています。

しかし、
人間性や人格そのものは善人であると思っています。
以下、大おじ様を社長としての例え話です。



この会社は社長が一人で立ち上げた会社です。
会社の設立時には新社員の採用や労働環境の整備など、社長が直接に担っていました。

しかし、
時間が経ち会社が大きくなる間に、実務的な仕事はベテラン社員に任せ、
社長は現場へ姿を見せなくなります。

社長は資金調達やメディア出演には一生懸命ですが、部下たち一人一人の様子や不満は気に留めていません。

部下からの目線で見ると、
現場を丸投げして、理不尽な社内規則を放置したままの人物に見えます。


しかし、
大きく成長した会社を維持するため、
社長は毎日毎日、綱渡りの経営判断を真剣に行っていました。

この様子を部下たちが知る術はありません。




例えると、上記のような感じでしょう。

ペリカンやインコ一羽一羽の不満を聞く仕事は、
この世界の神である大おじ様の仕事ではありません。



しかし、
それぞれの不満を吸い上げて解決する仕組みを作ったり、社内規則を臨機応変に変えて働きやすい環境を整えることは社長の責任です。

大おじ様のように社長が傍観者では、ペリカン達のように社員が傷ついて疲弊していきます。

時には現場の声を真摯に聴く必要もありますし、
社員やお客様が不幸になる状況が多発すればリーダーシップを発揮して職場を改善すべきです。



これ、最近話題の某 大型電動機会社とまったく同じ状況…

…はい、ごめんなさい。

何でもありませんのでお気になさらず。



さいごに


いや~、とにかく映画考察は楽しかったです(^^)

考察は10人いれば10通りの解釈があるのも良いですね。

私は他のジブリ作品との比較はしていませんが、その視点も面白そうです。
または宮﨑監督の人生から考察してみたりとか…。


時間ができたら、他の方の考察も読んでみますね(^^)


あと、私の本業は焼物師(陶器制作)ですので、そろそろ本業に戻ります 笑
明日は窯焚きです。


それではまた~!


2023年7月31日(月) 西川智成

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