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やる気の空回りで大失態【第4話】

入社4日目、今日は昨日人事部からアナウンスがあったとおり、配属先支店を訪問してから本社で新人研修だ。
しかし......
朝6時、絶対に寝坊しないように少し遠くに置いたアラームで目を覚ます。
昨日、早め早めの行動をとったおかげで何事もなく仕事を終えられたので、これからこの心がけを大切にしていこう、心にそう決めた。
電車が遅延する可能性、忘れ物をする可能性、様々なリスクを想定して30分前に着くように家を出た。
それなのにこの後、とんでもない大失態を起こすなんてまだ、頭の片隅にもなかった。
何事もなく最寄駅に到着し、研修会場に到着すると、どうやら今日は1番に着いたみたいで人事の方を含め、まだ誰もいない。なんだか勝った気がして嬉しい。辺りを見渡すと中央に置かれたホワイトボードに何か書かれている
"支店訪問お疲れさまです。研修は午後13時から行いますので早く本社に戻ってきた方はこちらのテーブルに置いてある課題をして下さい、また12時から昼休憩でお願いします"と書かれていたのだった。
無能は大失態を起こした。そう、昨日人事部が言っていた支店訪問の話を朝目覚めた時には完全に頭から消えて忘れてしまっていたのだ。
パニックになった無能は一目散に本社を飛び出した。急いで電車に乗り、配属先支店へ向かう。連絡することさえ忘れていた。
始業時間の8時45分に行く予定だった配属先についたのは9時30分。大遅刻だ。
体を震わせながら支店に入り、窓口にいた女性に声をかける。
無能:「おはようございます、すみません。こちらの支店に配属になった新入社員の無能と言います。本日支店訪問で参りました、支店長いらっしゃいますでしょうか?」
窓口女性:「分かりました。中に案内しますのでこちらからどうぞ」そう言われて支店長室に案内された。
中の椅子に座って待っていると5分ほどして支店長がやってきた。
支店長:「おはよう!新入社員の無能君だね。」
無能:「はい!そうです。これからよろしくお願い申し上げます。」
支店長「はい、よろしくね。」
そのあと30分ほど色々話し込んだ。とても優しくて色んな話をしてくれて楽しかった。
支店長「それじゃあ、また新人研修が終わったらこちらに来るのを待ってるからよろしくね」
無能:「はい!よろしくお願い申し上げます。」
無能は支店訪問を後にして本社に向かう。
11時過ぎ、本社に戻ってきた。
同期も既に7割ほどは帰ってきており、テーブルに置いてある課題に取り掛かっていた。無能も同じように課題をする。
12時になり、昼休憩が始まった。みんな楽しそうにご飯を食べているが無能は今日も1人。寂しくなんてない、もう慣れた。
午後からはまた専門的用語について学ぶ研修を定時までみっちり行い、今日の仕事が終わった。

大失態を犯したが支店長は人事部から詳しい時間までの連絡は無かったのか、おそらく遅刻したことに気付いていない。
人事部の方も朝遭遇してないので、無能が間違えて本社に来たことは知られていない。
それならこの失態はチャラだ!
バレなかったことにウキウキしながら帰路についた。
-つづく-

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