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二度あることは三度ある【第9話】

社会人になって今日で10日目、支店配属まであと1週間と研修も折り返しを迎えた。
入社してからの10日間で、すでに2回も遅刻している。(1回はバレてないけど)
だからもうやらかす事は絶対にできない。
しかし....
朝、目を覚ますと7時40分、大寝坊だ。
どう考えても間に合わない。
振り返れば入社2日目に遅刻した時に人事から
「連絡を入れないとダメだよ。次から気をつけてね」と言われた。
また、研修でも報告・連絡・相談は必ずする事と学んだのに、無能は寝坊したことに焦り、電話連絡のことなんか頭の片隅にもなく大急ぎでスーツに着替えて駅まで全力疾走し、電車に飛び乗った。
満員電車に乗り込み、心拍数が落ち着いた時に連絡していない事を思い出した。
しかし、今この状況で電話なんてできない。
頭の中でひたすら言い訳を考える。
9時15分、研修会場に35分遅れで到着した。
人事部:「おはようございます。また遅刻、連絡もない。何があったのですか?」と聞かれた。
無能は電車の中で考えた言い訳を放つ。
無能:「鞄の紐が電車の扉に挟まってしまい、反対側の扉が開く2駅先まで電車を降りる事ができませんでした。申し訳ありません。」
人事:「それならなぜ連絡をしないの?」
無能:「満員電車で出来ませんでした。2駅先で降りた時も、戻りの電車がすでに停車していたのですぐに乗り込みました」と。
人事:「わかりました。とにかく研修はもう始まってるので早く席に着いて準備しなさい。」
気まずい雰囲気の中、研修が始まった。
最近はマナー研修を全て終えて、銀行員に必要な知識を学ぶ専門的な研修が本格的に始まった。
12時、昼休憩を迎えて人事部の方に呼ばれた。
人事:「無能くん、6月までの3ヶ月間は正社員かもしれないけど試用期間だからね?わかる?」
無能:「あ...はい。分かります」
人事:「それだけ、昼ごはんどうぞ」
明らかに怒っているのが分かる。
ただ、今の時代は声を上げて暴言を吐くとパワハラになるのかそれ以上は何も言われない。
まあ、クビになる可能性を示唆されたのだろう。
正直無能の中でこの時にはもう、辞めたい気持ちが大きすぎたので、焦る気持ちは無くどうでもよかった。
昼からの研修も寝る事はないけどノートも殆ど取らずにぼーっと聞いていた。
-つづく-

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