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ナカさんの読書記録 「文豪たちの口説き本」 彩図社文芸部編

他人のラブレターを読むなんて、ちょっと悪趣味な気もしますが・・・小説家の書いた恋文ともなれば大いに興味あります。
明治大正昭和に活躍した小説家・詩人たちの口説き文句を集めた本です。
彩図社から去年出版された人気本「文豪たちの悪口本」の第二弾。

表紙に掲載された文句だけでも恥ずかしくて身悶えしてしまう。。
芥川「文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまいたい位可愛い気がします」
中原中也「僕の部屋にきてもいいよ」
太宰治「死ぬ気で恋愛してみないか」
わぁ~~~(頭抱える)なんなのその「レッツ恋愛👍」みたいな殺し文句。まぁ「一緒に死のう」は太宰の定番口説き文句だったようですから、惚れた女性に年がら年中そんなこと言ってたんだと思う。女性の方もそんなこと言われて太宰の横顔みて、ウットリと恋愛に酔ってしまうのだろうなぁ。。。

萩原朔太郎の北原白秋に対する偏執狂的な手紙。あなたの事を思い涙を流しながら絶叫。。。「一たん惚れたら生命がけです。室生(犀星)とあなたに朔太郎の身命をささぐ」男性から男性への情念おそるべし。
石川啄木の恋愛はかなりヒドイ。想い焦がれた女性に「写真送って!」と頼んで届いた写真見て、美人じゃなかったので一気に熱が冷める啄木。そして友人という女性から送られてきた写真が超美人だったのでさっそく乗り換え(笑) 恋文を書いたらなんとそれは男だったという。(今でいう”ネカマ”に引っかかったみたいな?)顔もハンサムだし短歌も素敵なのに。。。あぁ。

中島敦の妻たかに送った手紙が大好きです。
敦は戦時中、南洋庁のパラオ調査に参加して、船旅を続ける間に妻のたかにたくさん手紙を書いてました。手紙魔?ってほど書いてて一日に何通も書いて時もあったみたいです。毎日毎日たかからのの返事を待ちわびてます。
喘息もちで体が弱いし家族に会えなくて心細く弱音を吐いちゃう敦とか、子供たち(桓と格)のことばっかり考えちゃう敦とか、本当に家族大好きだったんだなーと思います。中島敦は若い頃は結構モテて関係ある女性が何人かいたそうですが、たかさんに出会ってからは一途だったみたいです。亡くなるときもたかさんの腕の中で眠るように息を引き取ったそうです。
中島敦の手紙をまとめた「中島敦 父から子への南洋だより 」(川村湊編集)という本があります。とても良い本です。葉書に絵が描いてあったり、子煩悩で優しいお父さんだったんだろうなと思います。

昔の人たちは恋愛に対して貪欲でアグレッシブでしたね。今はどうなんでしょう。告白もメール?酔った勢いで付き合っちゃうとか。そんな軽いノリなんでしょうか。恋愛自体が面倒くさいという若者も増えてるみたいですし。
君が恋しい恋しい、なんて綿々と綴られた手紙なんて送ったら「キモイ」とか「重い」とか言われちゃいそうですよね(笑) 間違っても太宰みたいに「死ぬ気で恋愛しないか」なんて怖くていえないですね。。。

2020.7



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