見出し画像

【映画音楽】映画『哀れなるものたち』の劇伴が良すぎる話。(ネタバレなし)

ナジです。

先日、と言ってももう2ヶ月前くらいになりますが、映画『哀れなるものたち』を観てきました。

エマ・ストーンの体当たりの演技に仰天、そしてヨルゴス・ランティモス監督が手掛ける独特な世界観に140分魅了されっぱなしでした。
(ちなみに、同監督の過去作『籠の中の乙女』もこれまた独特で、個人的にはとてもオススメ。空気感がなんというかグロテスクです)

『哀れなるものたち』あらすじ(公式サイトより引用)
天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。


本作で何より感激したのは、映画音楽!!
あまりにも前衛的な音づくりがキテレツな映像美とマッチしていて、映画の世界観づくりに大きく貢献していました。

音楽の知識があまりないので、専門的なことは何一つ言えないのが歯がゆいのですが…とにかく素人目(素人耳?)にもその異質さが明らかなほど、とにかくすンごかったんです。
米国アカデミー賞でも作曲賞にノミネートされていましたね。
受賞は『オッペンハイマー』に譲ることとなりましたが、個人的には本作の音楽のほうがより印象に残っています。

Apple Musicで配信もされているので、よければ聴いてみてください。


無垢さが創作の武器になる

さて、こんな音楽がいかにして生まれたのかが気になっていたところ、興味深いインタビュー記事を発見しました。

この記事で、劇伴を担当したジャースキン・フェンドリックスが語るには、

「ヨルゴスと話し始めたのは、撮影の6ヵ月ほど前。脚本やセットデザイン、衣装のイメージを渡されて、こう言われたんだ。ほかの映画や映画音楽を一切参考にしないように、と。だから僕は渡された素材だけを基にして、今回の音楽を発想していったんだ」

とのこと。

すごすぎ……。

フェンドリックスは様々な音楽的背景を持ってはいるものの、映画音楽を手掛けたのは初めてだったそうです。
その上で、既存の映画音楽を参考にするな、というかなり攻めた指示。

映画音楽に対する”無垢さ”を重点に置き、フェンドリックスの解釈が一切希釈されないままナマの状態で表出されることで、今作のような音楽が生まれたのかなって思います。

そういえば日本には、心技を発展させるためのセオリーとして「守破離(しゅはり)」という言葉がありますが、それとは対極を成すようなスタイルじゃないですか?

ここで、物語の主人公ベラについて説明します。
彼女は、いろんな意味でまっさらな状態からスタートします。
体当たりであらゆることを経験し、良いも悪いも丸呑みして、驚くような成長を遂げます。
その過程はかなりぶっ飛んでいて、型破りを地で行くようなキャラクターです。

今作の音楽づくりの背景は、そんなベラの成長の様をそのまま現しているようにも思えます。非常に理に適っているなと。

ちなみにフェンドリックスは1995年生まれ。29歳になるとしですね。
私も同世代なので、ほんとにエグ……という気持ち。


本作は、映画予告編も良いぞ


おまけですが、本作の本予告もとても好みでした。

30秒前後あたりで見られる、ベラのダンスシーンがお気に入りです。
その2カットだけでベラの成長がうかがえます。

予告全体を通してはあまり物語に言及がありません。
本編を観る前にあまり情報を入れたくない派なので、これくらいの情報量に抑えてくれる予告編だとありがたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?