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何度も味わいたい!とにかく嬉しかった人生初の体験|三洋化成工業 森田三佳さん

子供の頃、ドラマの影響で理系はカッコイイと思ったそうで、中学生の時には理系の道に興味があった森田さん。奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)では、近赤外線領域のエネルギーを電池材料で有効に活用するための研究をされていました。三洋化成工業へ入社して、携わったシャンプーが上市された話は、本当に嬉しかったということが強く伝わってきました。今の仕事に対するやりがい、奈良先端大で経験したことで仕事に活かせていることを含めて、詳しくお話を伺いました。

森田 三佳(物質創成科学研究科 博士前期課程2015.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、電池等に使用するための近赤外線領域における材料開発、有機合成に取り組む。博士前期課程修了後、三洋化成工業株式会社に入社。入社後は界面活性剤の開発、現在は化粧品事業で主に化粧品向け原料の開発を行っている。

就職活動における会社選びの軸

ずっと化学、有機合成ばかりを取り組んできたので、それを活かせるものが良いと思い、化学メーカーの研究職を目指していました。ただ一方で、トイレタリーメーカーにも興味がありました。日用品のような製品は化学品でできているんですね。だから、そういう少し川下寄りのところにも興味があって、その分野も受けていました。

結果的に、化学メーカーに入社しましたが、凄く面白いと感じています。その理由は、三洋化成工業はBtoBメーカーの化学原料メーカーではありますが、川中のような感じで、本当に多様な分野に取り組んでいます。バイオメディカルから農業、車関係の原料、ウレタン、界面活性剤、ポリマー等、それらが様々な分野に、例えば、車のシート、洗剤の中身等、生活にとても身近なところで使われているので、結局は願いが叶ったのかなと思っています。

最終的に三洋化成工業への入社を決めた理由

BtoBの原料メーカーではありますが、実は身近なところでも役に立っていることを知り、そういうところの研究に携われたら、すごく楽しい、幸せなのではないかと思ったことが最大の理由です。

また、ドクターへの進学のお誘いも受けましたが、アカデミックに突き詰めていくより、すぐにでも商業化、何か人の役に立つ方が合っていると思っていました。大学も20年後、30年後に技術革新の起こる、素晴らしい研究をされていると思いますが、私はそういうタイプではなかったから、企業に入社することにしました。

大学院での知識を活かせた入社後の仕事

入社から4年間は界面活性剤研究部という部署にいました。界面活性剤は弊社の強みで、例えば、食器用洗剤や洗濯用洗剤、シャンプー、トイレのスタンプの抗菌剤、工業用潤滑剤、分散剤等、本当に色々なところに使われています。界面活性剤研究部では、その中でも日用品に近い場所で、抗菌剤やシャンプーの原料等の研究を行っていました。界面活性剤は結局、有機合成なんですね。だから、大学の時の知識や経験が全部活きていて、とてもラッキーなパターンだったと思います。

その後、2019年から、本格的に化粧品の事業部が立ち上がって異動しました。元々シャンプー向けで取り組んでいたことも引き継ぎつつ、洗浄剤だけではなく、例えば、メイク品やスキンケア化粧品の方にももっと手を広げていきたいと考え、日々研究を進めています。

界面活性剤やお客様とのやり取りの面白さ

界面活性剤の面白みは、一つの材料がとても多様な使われ方をしていること。例えば、Aという製品が化粧品に使われています。実はトイレ用の抗菌剤にも使われているし、工業用途にも、工事現場でも使われています。このように、様々な分野で商売していることが興味深かったですね。

また、もう一つの面白みとして、BtoCメーカーのお客様と一緒に材料の共同開発をする時に、お客様が欲しいというニーズに対して、「つまり、このニーズはこういう機能が欲しいということだ」、「それはこういう構造にすると良いんだ」と、社内で行う翻訳作業、そういう落とし込み作業がとても新鮮で面白かったです。お客様と一緒に、「ああでもない、こうでもない」と言いながら、「そのニーズに合わせて、こういう風に翻訳して、私達なりに開発してみました」と、提案しに行って触ってもらっても、やっぱり違うこともありましたが、そういうやり取りが凄く面白かったですね。入社して最初に、それが体験できて良かったと思います。

現在の化粧品事業における業務内容

現在の部署は化粧品の部隊なので、より末端のお客様に近いですね。例えば、私はBtoBメーカーの研究員でもあり、末端消費者でもありますが、そういうBtoBtoCという考え方があります。界面活性事業部の時は、BtoCメーカーの担当者とやり取りをして、そのニーズを探っていましたが、現在いる化粧品の部隊では、口コミサイトを見たり、部内や全社で化粧品使用感のアンケートを取ったり、エンドユーザーから直接ニーズを抽出することができるので、そこからのニーズの翻訳による開発も行っています。入社前に携わりたかったことに、とても近いですね。

事業分野は大まかに、ヘアケア、スキンケア、メーキャップに分かれています。例えば、スキンケアであれば、化粧水や乳液を手に出した時、水みたいにサラサラだと困るため、少しトロッとさせるための増粘剤を作ったり、水と油を混ぜる乳化剤を作ったり、メーキャップであれば、ファンデーションや日焼け止めにも入っている粉体の開発等も行っています。

これまで、本当に有り難いことに望んだように仕事ができていて、界面活性剤事業部の時は、BtoBメーカーでの面白みを感じ、化粧品事業に来てからは、BtoBtoCのエンドユーザーのニーズを意識したマーケティングも含めた研究を体験できていて、面白い仕事をさせていただいます。

開発に携わったシャンプーが上市された時の大きな喜び

私のやりがいは、お客様(BtoCメーカー)に採用いただいて、末端消費者向けの化粧品が上市されること。例えば、開発に携わったシャンプーがドラッグストアや通販等で販売された瞬間がやっぱり一番嬉しくて、もうずっとそれは変わらないです。実際に、私が開発した製品が入っているシャンプーが上市された時は、本当に凄く嬉しかったし、親戚にも配っていましたね。「ピウセリアAMC」と言うフケやかゆみを抑制する添加剤になりますが、株式会社ファーマフーズの「ニューモ Vactory シャンプー」に配合していただきました。Web広告も流れていたので、これが販売された時はとても強いやりがいを実感できました。

再び上市するため、お客様に寄り添う人材になる

シャンプーで上市できたことは、私の人生初めての体験で本当に嬉しかったので、もう一度体験したいと思っています。次はスキンケアの分野で、現在取り組んでいる開発品で同じように体験したいと考えていますので、今後も開発に注力していきます。

ただ、採用に至るまでは非常にハードルが高いです。BtoBtoCのニーズ調査でも的外れな提案をすることはあるので、今は特にニーズ聴取に力を入れていこうとしています。それは、お客様(BtoCメーカーの開発者)に寄り添って、お客様に信頼してもらった上で、一緒にプロジェクトを立ち上げるような、そういった人材になりたいなと考えています。研究開発というよりは、技術営業寄りになりますが、今はそのアプローチに興味があります。やっぱり自己満足ではなくて、お客様ありきですからね。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

今は実感できないかもしれませんが、社会に出てからも、とても役に立つような経験をしています。これから、つまずくことが出てくるかもしれないですが、今後、今の経験は活かされていくはずなので、目の前の研究活動を頑張ってください。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

奈良先端大は凄く刺激的で楽しいです。大学院から新たにスタートという感じで、みんなスタート地点が一緒です。国内の様々な大学の学生が集まって来るのはもちろん、海外の留学生の比率もとても高く、本当に面白い環境の大学だと思います。それだけではなく、研究する上でも綺麗で設備も整っている大学ですので、研究に集中するには良い環境です。ぜひ、入学を検討されている方には来ていただきたいです。

奈良先端大の研究生活で印象に残っていること

京都大学のような日本トップレベルの大学から全国の私立大学、高専まで、多様な人材が集まり、活発な意見交換が行われる研究室でした。非常に刺激的で、学生の時に経験できて良かったです。本当にアットホームな研究室で、月に一回の飲み会もあり、楽しい研究生活になりました。奈良先端大は研究も学生生活を送るにもとても良い環境だったので、大学からそのまま同じ大学院に行くのではなくて出て良かったなあと今でも思っています。

他に印象的だったことは、学会に出させていただいたことです。就活を除くと実質は一年年半ほどしか研究できませんが、その中でも、教授、准教授、助教授の皆様が手厚くサポートしてくださって、何とか研究発表会、学会に出せるレベルまで持っていっていただけました。学会に出られたことで非常にやりがいを感じましたし、自信につながりました。私達の研究室は有機化学の分野の特性上、実験に時間がかかる苦しさは多少ありましたが、全力で支えていただいていたので、今となれば、辛さは全く残っていないですね。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

まず新しい分野の研究を始めるにあたって、どのように勉強したら良いのか、その心構えを奈良先端大では教えていただき、新しい分野にチャレンジする精神を学びました。例えば、新卒で化学メーカーの研究職になったとしてもほとんどの場合、大学で研究していたテーマをそのままは活かせません。ただし、そうだとしても、大学院の時の経験が活きる時があります。それは研究に対する姿勢です。例えば、PDCAを回す、コミュニケーション能力、分からない時は抱え込まずに相談する、そういったところをしっかり育ててもらったと感じています。社会人になる前に、社会人の研修を受けていたような、半分そういう感じで、社会人になっても、その部分はあまり苦労しなかったですね。

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