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学生時代のアントレプレナー経験を経て、AI研究のプロフェッショナルへ|NTTドコモ 田中宏昌さん

修士の時も、入社後から今でも、とても充実した日々を過ごしている印象を受けた田中さん。会社では主にAI関連の研究に取り組まれており、現在は奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)の博士後期課程にも進学されています。また、奈良先端大で実施している、イノベーション人材育成プログラムのGEIOT(ガイオット)にも修士の時に参加して、非常に良い経験ができたそうで、その辺りも含めて、詳しくお話を伺いました。

田中 宏昌 (情報科学研究科 博士前期課程2018.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、バイオサイエンス研究科と共同でタンパク質に関連した機械学習の研究と、機械学習の解釈性に関する研究に取り組む。博士前期課程修了後、株式会社NTTドコモに入社。入社後は主にAI関連の研究開発に取り組んでいて、現在は奈良先端科学技術大学院大学の博士後期課程にも進学している。

就職活動で会社を選んだ3つのポイント

研究室の同期から逆求人のイベントがあると聞いて、そのイベントに行った時に、声をかけていただいた企業の中から、応募する企業を選びました。その時に選んだ基準として、1つ目は、休みを取りやすいこと。2つ目は、博士課程に行く制度があって、実際にそれが運用されていること。3つ目は、その社内の人と話して、「この人達とは一緒に仕事できない」と思わないこと、人柄のような部分ですね。

ドコモを選んだ理由は変な人がいたから!?

7社ほど、内定をいただきましたが、ドコモを選んだ理由の一つは、一番休みを取りやすそうだったこと。あとは、博士課程の制度もありましたし、実際に今、博士課程に行っていて、奈良先端大のD1です。それから、内定者イベントでドコモの研究所にいた人と話した時に、「この人、かなり頭がおかしい」と思う、変わっていて、凄く面白い人がいて、「この人と働きたい」と思い、最終的に、ドコモに決めました。他社でも、そういう人はいましたが、ドコモのその人が一番強烈でしたね。大企業の人は保守的で新しいことにトライしないイメージを持っていましたが、その人は全然そういうことはなくて、しっかり論文もトップカンファレンスに、たくさん出して成果を残しているし、博士課程も行っていて、やりたいことを高いレベルで実践していた人でしたね。その時に、ロールモデルとして、この人は良いと思いました。実は、入社して1年目の時に、その人と同じチームに配属されて、今も一緒に仕事をしています。研究指導をしてもらっていて、師匠になりつつある感じですね。

入社から現在までの業務内容

1年目は研究所に配属、3年目頃に組織再編があって、多少チームは変わりましたが、ずっと研究をしています。今は研究だけをしているわけではないですが、基本的には研究開発の組織で、新しい技術の研究と、それを実際に使える形にするための簡単な開発、あとは、新しいサービスの企画も考えます。入社してから今まで、新しいサービスと新しいプロダクトの企画をして、そのための技術と研究開発を行っています。

具体的に、最初に取り組んだことは、スマートフォンで舌の画像を撮ると、口腔癌や歯周病等を発見するAIを開発していました。そして、新規事業の創出プロジェクトで、企業のオープンイノベーションを新しく起こしていく上で、チームとして創造性が高く、プロジェクト遂行能力も高くなるメンバーの組み合わせを提案するAIと、それを使ったサービスの開発をしています。

入社前後でズレは感じるのか?

正直に言いますと、入社前に、どういう仕事をするのかは何も考えていなくて、研究ができれば良いと思っていました。内定後、配属の参考のための人事との面談があり、希望の部署を聞かれましたが、「データサイエンス系の研究開発ができる部署であれば、どこでも良いです」と答えています。その結果、データサイエンスの研究開発ができるところにアサインしてもらい、期待通りの場所だったので、良かったです。一方で、データサイエンスの研究開発という枠の中で、具体的に画像の研究をするのか、自然言語処理をするのかなどのこだわりはなかったので、特に入社前後でズレは感じなかったですね。

社会人ドクターとして過ごす時間

会社で取り組んでいる研究を博士後期課程の研究テーマとして進められるので、大学で行う研究も会社の仕事として扱えます。今は横浜に住んでいるので、奈良先端大の研究室には稀に行っていますね。また、海外の研究者は基本的に博士号(Ph.D.)を持っています。ドコモでも、やっぱりR&Dの組織長になる人は博士号を持っている人が多いので、こういう観点を考えると、持っておいた方がキャリア的にはプラスになると思っています。

十分にパフォーマンスを出すためにできること

仕事で大切にしていることとして、面白くないことは、やらないことです。適材適所、みんなそれぞれパフォームする場所があると考えていて、他の人ができる仕事は、できるだけ他の人にお願いするようにしています。例えば、他部署との調整業務や事務処理等の能力はあまり持っていないと思っているので、その場所でパフォーマンスを発揮できる人にお任せします。一方で、新しく企画を立てること、ビジネスの案を作ること、データサイエンス、機械学習系の研究開発等は、パフォーマンスを発揮できる領域だと思っています。それらの領域でしっかりと仕事をこなして、そうでない領域のことは他の人に任せるように心がけています。そうすることで、とても自由に楽しくさせてもらっていますね。

今課題に感じていること

時間の捻出が今はとても大変です。博士後期課程に行って、会社の研究以外の仕事もあり、複数のプロジェクトを抱えているので、そのマネジメント推進もしつつ…。

社内ではハードワーカーの方らしいですが、慣れているので、あまりハードワークをしているつもりは正直ないですね。奈良先端大の頃から研究室に入り浸っていて、ずっと研究することは苦でないタイプでした。多分、研究開発が好きなんだと思います。

これから世の中に出していきたいサービス

チーム組成やコミュニティ作りに興味があり、日系企業で言われている配属ガチャをなくしたいと思っています。例えば、既存のコミュニティ、集団、チームに対して、誰が馴染むのか、新規の人は特定のチームに馴染めるのか…。現状は入らないと分からないし、そのミスマッチによって、ヤル気を失う人もいますが、それをなくしたいです。人生の様々なフェーズにおいて、どこのコミュニティに所属するか、どこのチームに所属するかの意思決定は誰にでも何回もあるはずです。例えば、僕の中学校の場合、私立に行って、一緒にいるメンバーが変わりました。一方で、地元の公立中学校に行くと、似たようなメンバーでコミュニケーションを取ることになります。どちらを選択することがその人にとって良いのかを選ぶフェーズはたくさんあると思っていて、こういう時に、その人の後悔をなくす選択肢を提示できるようにしたいと考えています。そのようなサービスを世に出していきたいですね。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

特に情報系の学生は、研究開発職やエンジニア職からの人事の評価は非常に高いです。以前、他社の人事の人から、奈良先端大の学生が優秀すぎる問題があると言われました。ドコモの中でも、優秀な奈良先端大の人はいるので、どんどんチャレンジングな会社を受けて良いと思いますし、普通に研究して、普通に論文を出せれば、十分に評価してくれる会社はたくさんあると思います。だから、「研究は頑張ってください」と言いたいですね。

あとは、GEIOT等、色々なプログラムが奈良先端大にはあります。もし時間が許せば、そういうものも積極的に参加してみると、研究室外とのコミュニケーションも取れて、自分の経験としてプラスになる人も多いのではないかなということも、付け加えておきます。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

奈良先端大は本当に自信を持って、オススメできます。学部から奈良先端大に行って良かったと、今でもずっと思っています。確かに、山奥の場所にありますが、それさえ大丈夫であれば、都市部でしか生活できない人でなければ、楽しい生活と充実した研究環境、投下した時間の分だけのリターンもありますので、強くオススメしたいです。

奈良先端大の研究生活で印象に残っていること

奈良先端大は、めちゃくちゃ楽しかったですね。それに、研究室の周りのレベルが高かったです。数学は得意でしたが、研究室の中でも、プログラムを書くことや情報科学は得意ではなかったので、周りに助けてもらいながら、研究できました。何より大学院に入る前から望んでいた通りに、実際にデータを触って、成果を残す研究ができたと思ってるので、とても楽しかったです。研究室では、みんな仲良く和気あいあいで、深夜に課題を持ち寄ったり、とても先生や助教、博士の学生との距離も結構近く、みんなで晩御飯を食べに行ったりしていました。

また、教授やバイオサイエンスの研究の先生、助教の先生、ポスドクの人に頻繁に聞きに行っても、いつも研究の指導やアドバイスをいただけました。しっかりと研究に向き合っている学生に対しては、誰でも関係なく、教えていただける先生が多かったことは印象的でしたね。

あとは、大学のGEIOT(ガイオット)という、起業家育成のプログラムも受講していました。それも凄く楽しかったですね。そこで、アントレプレナーの活動をして、実際に製品を作り、ビジネスコンテストに出て、賞を取ってアメリカのシリコンバレーでプレゼンしたこと、学生の時に起業家のような活動をできたことは、やっぱり強く印象に残っていますし、非常に良い経験になりました。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

新入社員の中で、自分たちでビジネスコンテストに出る、0から1のビジネスを作る、事業を作るフェーズを経験している人は、ほとんどいません。そんな中で、奈良先端大のGEIOTでの経験をした人、つまり、事業を作る経験がある人は、他の人よりも、頭1つ抜けていて、少し目立ちます。目立っていると社内でも、難しい仕事を振ってもらえますし、何より、自分でやりたいことを通せるようになったと感じています。「何か自分で事業を起こした経験があるから、やりたいことを任せても、そこまで手が掛からない」、「とりあえずやらせてみたら良い」と思ってもらえるようになったことは、GEIOTの経験が役立だったからだと思っています。

※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。