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仕事が楽しいと思える企業に就職できた理由/京セラ 上段寛久さん

入社から希望通りの配属先になり、太陽電池の開発を担当、「今は仕事が楽しい」と話されていた上段さん。現在のお仕事では、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)での経験も活かされているそうです。ご自身に合った職場に就職できた経緯、仕事に対する考え方、社会人になってからも役に立っている奈良先端大での経験などについて、詳しくお話を伺いました。 

上段 寛久(物質創成化学研究科 博士前期課程2014.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、医療などに応用するための超短パルスレーザーの一種であるフェムト秒レーザーの応用技術を研究。博士前期課程修了後、京セラ株式会社に入社。入社後は太陽電池の開発を担当。

就職活動の状況と最終的に企業を決めたポイント

就職活動は11月頃から企業の合同説明会に行き始め、「今この研究をしているから、これをしたい」という方向ではなくて、あまり決めすぎないようにしていました。その中でも、「世間の多くの人に使われるような技術開発に携わりたい」という思いがあり、そういう技術開発に力を入れている企業をまず探していました。自分で探してエントリーして、実際その企業の説明会や社員訪問に行き、技術者の人の考え方や価値観、どういう思いで仕事をされているのか、携わっている技術開発に対する思いを聞いていると、何となくその会社のことも分かるようになっていきました。その価値観や考え方が自分の思ってるいことと似ているところに絞って、どんどんエントリーして、面接を申し込んでいましたね。

エントリー自体は20〜30社ほど、出していて、面接もほぼ受けていました。その中で、京セラが決まったのですが、最後まで候補として残っていた企業は4、5社だったと思います。京セラに決めた一番の理由は、やはり技術力ですね。高い技術開発力に魅力を感じました。大きい企業ですし、様々な基礎的な研究もして、それを色々な商品に応用していく多角化も自分と合っていると思いました。

入社後の業務内容

入社して次で8年目になりますが、私は太陽電池の開発を担当しています。太陽電池の商品設計で、構想段階から設計、評価して、商品として世の中に出していく過程まで携わっています。配属先は、人事と内定する段階で希望を出して面談し、希望通りのところになりました。

最初、一年目は半年間の研修で全国の研究所や工場を回っていました。そこから、自分の部署で仕事を覚えるため、OJT で先輩の手伝いをして、二年目の後半から、自分でテーマを持って取り組み始め、その後は、どんどん難易度が上がっていくテーマを進めていきましたね。お客様の要望がある中で、その一つのテーマをゼロベースで作り上げていく仕事を一年ほどかけて進めています。

今は仕事が楽しいですね。特に最近は、色々なことをさせてもらえるようにもなってきたので、良い方向に向かっている気がしています。

仕事で大事にしていること

仕事は一人で全部取り組んでいるわけではもちろんなくて、色々な人、部署、お客様も含めて関わっていくため、様々なトラブルもあります。対立もしますし、それぞれの立場があって、生産上の理由やコストなどの問題でできないこともたくさんあります。やはり迷いますし、本来の目的を見失うこともあります。

結局、物として出来上がった時に、最初に思っていたものと全然違うものになっていて、それが良く変化する場合と悪く変化する場合があります。良いものができた時、本質的にお客様が欲しがっているものができた時は、自分が作ろうとしている商品が、「誰のどんな問題を解決するためのモノで、それを今作れているか」を判断基準して決めることが結果、良いものが出来上がっていくと私は思っています。それは、日々仕事していると、見失いやすいですが、大事な変更を決めないといけない時、意見を言う時にも、それをベースに考えています。自分の作ってるいものは何のために作るのか、誰のために作っているのかですね。

今まで携った中で、印象に残ってる仕事

ハウスメーカー向けのカスタム品の設計を対応した時、初めて担当した大きな仕事で、住宅に付くモデルだったので、街中で見るんですよ。使っている人を見ることができました。ハウスメーカーの工場で屋根に組付けるのですが、そこに立ち会わせてもらうと、実際にエンドユーザーのお客様が見に来ていたりするので、そういう姿を見ると、やっぱり嬉しい、自分が携わって作り出したものを誰かが使っている事実が嬉しいですよね。技術者にとっては、やりがいも感じます。

奈良先端大の経験で、今でも役に立っていること

私の場合、研究していたことは、学問的には仕事に直接繋がっていないですが、人生的には新しいことに躊躇せずに挑戦できるようになりました。奈良先端大に行って卒業して、全然異なる、今の職場に就職できたことは奈良先端大に行ったからですし、人生の転機になったと思います。

今までは、いわゆるトップダウンで仕事があって、専門的な設計を進める中で、深い知識や経験が求められていることが多かったですが、特に最近はボトムアップ型になっていて、与えられた課題を解決していく力よりも、今は、自分で何か新しい課題自体を見つけ出すような力もすごく求められていると感じています。例えば、新規事業の創出は社内でも、とても活発に行われています。そういうところにも躊躇なく挑戦できるようになった、そういうところが変わったと思いますね。

これからチャレンジしたい農業とエネルギー分野

技術者として、深くスキルを上げていく、経験を積んでいくこともありますが、新規事業創出も積極的に取り組んでいきたいと思っています。どの企業も既存の事業だけだと、将来的に存続できなくなる危機感を持っていると思います。社員がそれぞれアイデアを提案できる、「こういうことを解決するために、こういうものを作りたい」と提案できる場所が数年で社内的にとても増えていて、そのような企画書を直接出して、審査会などで認められれば、予算が付いたり、時間を付けてくれたりする機会が多いので、どんどんチャレンジしていきたいですね。特に今までは一つの職種を職人のように進めていくことが技術者として求められていたのかもしれませんが、これから求められることは変わってくるのではないかなと考えています。

学生時代から将来はエネルギー分野と農業分野で、技術者として働きたいと思っていました。実家が農業をしていて、昔から農業が好きなこともありますし、周りに農業をしている人が多いので、近くで課題もたくさん見えてくるんですよね。その中で解決したいと思う問題とその方法として、自分が考えるサービスや技術を提案したり、事業アイデアをブラッシュアップするプログラムにも参加させてもらって、今は何かできないかを考えています。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

学生の時は具体的に将来なりたい理想像がある人、確実にこうなりたい確固たるものを持っている人は少ないと思います。自分もそうでしたし、それを更に実現するために行動できる人は非常に少なく、何をしたいのかが分からないという気持ちを持っている人が多いと思うんですよね。学生時代、特に就活生は悩むはずで、迷って立ち止まることもありますが、最終的にはやっぱり仕事は能力よりも、モチベーションだと考えます。自分が楽しいと思えることは、長く努力できるんですよね。自分がやりたい、楽しいと思えることは仕事と思わなくて、ずっと努力し続けられ、結果が得られるので、迷った時にはあまり考えずに、自分が楽しそう、ワクワクすると思う方向を選んでもらいたいです。結果として、良い方向に行く近道になると思います。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

奈良先端大に来て良かったと、今も思っていて、研究が好きな人が来るにはとても良いところです。研究のレベルも設備もそうですが、同じ方向を向いている人達がたくさんいたことは非常に良かったんですよね。自分のやりたい研究がある人は奈良先端大に来ていただければ、そういう同じ志を持ったたくさんの仲間と出会えます。

同じビジョンを持つ、同期との出会い

学生の同期には様々な分野の人がいます。色々な理由で、自分の大学の研究をやめて、わざわざ奈良先端大に入ってくる人、同じ境遇の人がたくさんいたこと、その時の経験はとても大事でした。自分のビジョンが近く、将来的に自分が描いていたビジョンにも共通している人が多かったですね。

大学の時は、情報科学を学び、プログラミングを扱う研究室でしたが、ガラッと分野を変えて物理学系の研究をしたいと思い、奈良先端大に来たので、最初の半年は全く新しい学問分野の勉強で本当に大変でした。多分、大学受験の入試くらい、一番勉強した気がします。 とても辛かったですが、バラバラな分野から来た同期ばかりだったので、それぞれの専門の人が大体いるんですよね。その人達に教えてもらいながら、彼らと一緒に最初は勉強していました。

研究室に配属されてからも、みんな研究が好きで来てるので、その中で一緒に研究できたことはとても良かったです。そのまま大学にいて進学するよりも、「やっぱり奈良先端大に来て良かった」と、卒業の時にそう思いました。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。