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オカンブレイク ~ 良い言い換えと悪い言い換え

 永田町界隈では、妙な言い換えが流行しているようだ。

 政策集団、還付(還流)金、留保・・・。

 政治家がこの類の言葉遊びをするのは昔から変わらない。あの人たちは、自分に都合の悪いことを無難な言葉に希釈して問題点を矮小化し、国民の目を逸らさせようとする。

 もしかすると、そういう技術を持つことは、政治家になるための必要条件なのだろうか。政治家の求人広告には必須スキルとして「言い換え」が挙げられるに違いない。

 因みに、私はまったく褒めていない。巷では語彙力ブームだが、こんな小賢しい語彙力なんて要りません。

 その一方で、先日、とても良い言い換えに接した。

 ラジオ番組で、4月から3か月間休みに入るDJ、Loveちゃんが発した言葉だ。

 これから「オカンブレイク」に入ります!

 最初は彼女が一体何を言っているのか、まったく分からなかった。そんな新しい流行語があるんだろうか、もしそうなら自分の時代遅れにもほどがあると何とも微妙な気分になった。が、すぐにそれが「産休」を意味する言葉だと分かった。たぶん、彼女が自分で造った言葉なんだろう。妊娠は「オカンデビュー」なのだそうだ。

 そのとき私は在宅でラジオを聞きながら仕事をしていたのだが、思わず素晴らしい!と叫んでしまった。

 ちょうどその少し前、Twitterで読んだ投稿を思い出さずにいられなかった。ある看護師さんが同僚への挨拶の際、「これから産休に入ります。みなさんにご迷惑をおかけしてすみません」と謝り、誰も何も言えなくてしまった、そんな内容だったと思う。

 子供ができてなぜ謝らなければならないのか。本人にとっては嬉しいことだし、周囲も祝福したくなるようなことのはずなのに、どうして?と胸が痛くなった。これじゃあ若い人たちが子供を作りたいと思えないのも当たり前のことだ。

 とは言え、その看護師さんがもし、ラジオDJさんのように「オカンブレイクに入りま~す」と言っていれば状況が変わったかどうか。それは分からないし、もしかするとむしろドン引きされるかもしれない。

 もちろん、新しい生命を育んでいくのは楽しいばかりではなく、むしろ苦労の方が多いくらいだ。組織がちゃんとしていなければ、誰かが長期休暇をとると別の人に皺寄せがいき、申し訳ない思いをすることも避けられない。

 でも、「オカンブレイク」という言葉の明るくて、ユーモアのある語感は、きっと周囲の心をやわらかくしてくれるんじゃないかと思う。何より、誰もが「お互いさま」と寛大な心を持てるような気がする。まだ子供のいない人たちも、出産、子育てへのワクワク感、希望が少しでも持てるようになるかもしれない。

 そして、当然のことだが、「オトンデビュー」「オトンブレイク」も同様に広まるべきだ。私のような昭和のおじさんにはなかなかできなかったことだが、今の若い男性たちならできると思う。

 ただし、こういうのを国家権力側がやり出したら要注意だ。特に政治家、もっと言えば自民党のおっさん連中。陰謀論めくが、彼らが言い換えを推奨するときには、何か裏があるからだ。何かを誤魔化そうとしている。

 我々庶民の間で、互いを思いやり、力づけるための言い換えがいい。そして、女性からこうした発信があるというのは、とても重要なことだと思う。

 先日の政倫審で蔓延していたようなものではなく、前向きで希望の持てる「言い換え」に満ちた社会になってほしいし、そうなるべきだと固く信じている。

 さて、私はこれから「オジンデビュー」「コウレイシャブレイク」に向けて、明るく生きていきたい。・・・と書いてはみたのだが、スベッている。オヤジギャグにもなっていない。これじゃ「悪寒ブレイク」が必要だ。

 ・・・絶望的だ。政治家以下だ。

 命懸けで精進します。

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