見出し画像

インフレ 物価高騰 原油高は全部◯◯のせい

最終更新日:2022/07/15
※本記事の内容は筆者の個人的な政治的信条とは無関係です。

2022年7月11日のBloombergで、民主党有権者の64%が2024年の大統領選でバイデン大統領とは別の候補を希望していることが報じられました。

本記事を読めば、アメリカの大統領なんか興味がないあなたでも、別の大統領を望むことでしょう。

今回の教養は下記の書籍を参考に執筆しています。

山中 泉『アメリカの崩壊 分断の進行でこれから何が起きるのか』(方丈社、2022)

Amazon.com

現在(2022/06)、Amazonの「アメリカ・中南米の地理・地域研究 の 売れ筋ランキング」で1位のベストセラーとなっている本書の著書、山中 泉(やまなか せん)氏は、1980年に渡米してから35年間、下記のような経歴を経てアメリカで活動を続けています。

  • イリノイ大学ジャーナリズム科を卒業

  • ニューヨーク野村證券米国株トレーダーとして勤務後に企業

  • シカゴで複数の企業を経営

  • 国際武道空手連合三浦道場師範代として大勢の米国人を指導

世界で続くインフレ、物価高、原油高

現在(2022/06)、世界的にインフレや物価高、原油高が続いており、下記のように社会経済が混乱しつつあります。

 物価高で「生活に打撃」7割超す ~対策は食費削減がトップ。岸田内閣不支持が支持を上回る~

NHK

大手電力10社 7月分の電気料金 過去5年間で最高水準に

PR TIMES

粉ミルクショックが示すインフレの深刻さ 価格3倍で「国家の危機」

日経ビジネス

では、なぜ世界中でモノの価格が上がっているのか、説明できるでしょうか?

こうした出来事はさまざまな要因が複雑に絡み合って起こるため、その全てを把握することはできないでしょう。

ただ、そのうちの主要な要因を把握することはできます。

ここでは、その要因の一部を見ていきましょう。

インフレは2022年1月から始まった

現在、私たちが苦しめられているインフレは、2022年1月にアメリカで始まりました。

年間の「消費者物価指数(※1)」は1982年以来の7.5%アップを記録し、食品とエネルギー価格を除いた「コア消費者物価指数(※2)」もまた40年ぶりに6%アップとなりました。

※1:消費者物価指数とは…
消費者物価指数は、全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格の平均的な変動を測定するものです。

消費者物価指数に関するQ&A(回答)丨統計局

※2:コア消費者物価指数とは…
「消費者物価指数(CPI)」の一つで、天候や市況など外的要因に左右されやすい食料(酒類を除く)とエネルギーを除いて算出した指数の俗称。米国など海外諸国では物価の基調を把握するために同指数が利用されており、国内でも徐々に注目されるようになった。

証券用語解説集丨野村證券

35年間アメリカで暮らしている山中氏は、「これほど急激なインフレは経験したことがない」と語っています。

インフレは「コロナによる抑圧のせい」ではない

このインフレについてメディアは「新型コロナのせいで長らく抑圧されていた消費者の購買意欲が高まったせいで、供給網が逼迫していることが原因だ」としています。

しかし、本当にこれだけで世界的にここまで混乱するのでしょうか?

実は山中氏は、昨今の物価高騰はアメリカのバイデン大統領の失策が原因だとしています。これにより、アメリカでは「バイデンフレーション」と呼ばれているようです。

なぜ、バイデン大統領の政策が物価高騰につながったのでしょうか?

バイデン大統領の「パイプライン建設の凍結」

バイデン氏は大統領に就任した2021年1月20日に、17本の大統領令にサインしています。

山中氏は、このサインがインフレのきっかけとなったとしています。

なぜなら、この大統領令のなかには「アラスカからのキーストン・パイプライン建設の凍結令」があったためです。

この政策によって、バイデン政権が発足してから9ヶ月後にはガソリン価格が60%も高騰し、急激なインフレーションに陥りました。

では、このパイプライン建設の凍結はどのようなものだったのでしょうか?

トランプ前大統領がアメリカを「エネルギー輸出国」に変えた

それは、トランプ政権時代の政策が関係しています。

トランプ政権時、「フラッキング(水圧破砕法)(※3)」と呼ばれる新たな採掘技術を用いて、さまざまな地域でシェールオイルやシェールガス開発が推し進められていました。

※3:フラッキング(水圧破砕法)とは…
地下の岩体に超高圧の水を注入して亀裂を生じさせる手法である。高温岩体地熱発電や、シェールガス・タイトオイル(シェールオイル)の採取に用いられている。

水圧破砕法丨Wikipedia

シェールオイルやシェールガスは、アメリカで新たに採れる資源として重要視されていました。

また、アメリカは世界最大の原油消費国であり、中東からは大量の石油を輸入していました。

しかし、トランプ政権の国内石油開発事業の奨励によって、2018年には1949年以降、初めて輸出量が輸入量を超えて、エネルギー輸入国から輸出国へと変わったのです。

バイデン大統領によって「エネルギー輸出国」に逆戻り

ところが、せっかくエネルギー輸出国になったアメリカは、バイデン大統領の手によって再びエネルギー輸出国になります。

その理由は、環境保護にあります。

バイデン大統領は、化石燃料は二酸化炭素を多く排出するため環境保護の観点から使用を控えて、太陽光や風力などの再生可能エネルギーに転換していくべきだとして、方針転換をしたのです。

バイデン大統領がまず行ったことは、環境負荷が大きいとされている「フラッキング」のほぼ全ての新規開発のストップと、すでにあるパイプラインの凍結です。

原油価格の高騰を受けて採掘再開をする

この結果、2022年2月にはアメリカの石油需要は過去最高水準にまで戻りましたが、国内の石油生産量はその需要に追いつかず、ガソリン価格が7年ぶりの高値をつけました。

これにより、アメリカが輸入する原油の量が急激に増え、原油の元売り価格も高騰しました。

これを受けてOPEC(石油輸出国機構)に3度も増産を要請していますが、OPECもそう簡単に了承することはありません。

したがって、ようやくバイデン政権はシェール産業を再開するように要請しますが、すぐに生産量が元通りになるわけではないのです。

なぜなら、シェール採掘には安定的な投資が欠かせないのですが、バイデン政権の反エネルギー政策によって、新たにリスクをとって開発することができなくなったためです。

実際、ニューズウィークでも下記のように記されています。

シェール企業による増産に向けた再投資の動きは鈍化している。政府と米石油業界の溝が深まっていることが改めて示された格好だ。

米シェール業界、増産のための再投資鈍化 バイデン政権との溝深く丨ニューズウィーク日本版

「バンドエイド(絆創膏)政策」と揶揄されたバイデン政権

需要が供給よりも高まれば、価格が上がるのは当然のことです。

例に漏れず、アメリカのガソリンや石油製品価格は、春から高騰し続けて、2020年末に1ガロン(3.785リットル)2.25ドルだったガソリン価格が、2021年末には3.6ドルにまで上がっています。

さらに2021年秋には、中国、インド、日本に対して、緊急時のために備蓄している「国家備蓄石油」の放出を要請したのです。

原油価格が高騰する中、日本政府はアメリカ・バイデン政権の要請を受けて石油の国家備蓄の一部を放出する方針を決めました。

日本政府 石油の国家備蓄 余剰分放出へ 各国協調で異例の対応丨NHK

この政策はアメリカ国内では、「バンドエイド(絆創膏)政策」だと揶揄されてしまいました。

バイデン大統領「なんて大バカ野郎なんだ」

さて、世界的なインフレを引き起こした張本人であるバイデン大統領は、この状況についてどのような言葉を残してきたのでしょうか?

  • 大統領に就任した年の春には、インフレについて「起きていない」と語り、

  • 夏になると「単なる通過点に過ぎない」として、

  • 秋になると「私の責任ではない、コロナのせいだ」と責任転嫁し、

  • 12月には「インフレは景気がいい証拠で、良いことだ」と発言

というように、コロコロと態度を変えていったのです。

そして2022年1月25日の記者会見の終わり際にFox newsの記者に対して、自身のマイクのスイッチが入っていると気づかずに、「なんて大バカ野郎なんだ」と罵っていたことが全米に公開されました。

その実際の映像はYouTubeにも公開されています。

物流停滞・コンテナ不足もバイテン大統領の失策

現在の物価高騰の要因の1つは、前述した「パイプラインの凍結」にありますが、これだけではありません。

物流停滞やコンテナ不足もまた物価高騰につながっています。

日本でも下記のように報道されているため、この点についてはご存じの方も多いかもしれません。

世界の物流網をめぐっては経済活動の再開に伴って中国や東南アジアから欧米などに運ばれる荷物が急増し、世界的なコンテナ不足や運賃の高騰を招いています。
(中略)
コンテナ運賃の高騰が続けば2023年までに世界の輸入価格が10.6%上昇し、輸入品の価格上昇を通じて消費者物価を1.5%押し上げる可能性があると試算し、コロナ禍からの世界経済の回復に影響しかねないとしています。

コンテナ不足 世界の物流混乱 国連“世界経済の回復に影響も”丨NHK

しかし、このような物流停滞・コンテナ不足が生じた原因はあまり知られていません。

実は、ここにもバイデン政権の政策が関係しています。

アメリカの店から商品が消えた

一時期、アメリカの物流が停滞したことにより、店から商品が消えてガラガラになっていました。

なぜ、物流の停滞が起きたのでしょうか?

その答えは、港の沖合に荷物を満載したコンテナ船が大量に停泊しているためです。

日本や中国などアジア諸国からの商品を陸揚げする西海岸の港だけではなく、ヨーロッパからの商品を陸揚げする東海岸の港も完全に満杯になっています。

通常の場合、港に入ってからは数日で荷物をおろせますが、最近は2~3週間もかかっている状態です。

コンテナの流通量は2020年より30%増加しましたが、トラック運送力は8%しか回復していません。

さらに、コンテナの輸送量も値上がっています。

最大で26トン積載できる40フィートコンテナを中国からアメリカまで輸送する料金は、コロナ禍以前は1個あたりおよそ2,000ドルでしたが、最近では1万3,000~1万9,000ドルになっています。

なんとおよそ7~10倍もの値上がりです。そして、この値上がった分を負担するのは消費者となるでしょう。

しかし、なにより事態を深刻にしているのは、トラックドライバー不足です。

トラックドライバーが不足する原因とは

アメリカの物流が滞っている最大の原因は、トラックドライバー不足とされています。

アメリカは日本とは異なり広大なため、全国各地に鉄道網が行き渡っているわけではありません。したがって、日本以上にトラックドライバーば重要な役割を担っているのです。

つまりトラックドライバーが不足すると、途端に物流が滞ることになります。

では、なぜ不足しているのでしょうか?

働かないほうがお金がもらえるから

その理由は、コロナ対策としての失業給付金によって、働かないほうがお金がもらえるからです。

アメリカのコロナ特別給付は、一般的に週に300ドルから400ドル(およそ4万円)を受け取れます。これを通常の失業保険に加えると、一ヶ月で30万円以上もらえるのです。

働かずに保険と給付金でたくさんお金がもらえるのであれば、働くのがバカらしくなるでしょう。

これによりトラックドライバーに限らず、あらゆる業界で人材不足が深刻化しています。

破格の条件でドライバーを募集

それでもトラック運送会社はトラックドライバーを確保しなければならないため、以前では考えられないような破格の条件や高待遇によって、仕事を回そうとしています。

実際、世界最大手の物流サービス会社であるフェデックスは、以前は時給20ドルほどでしたが、現在の募集条件では時給35ドルにまで上がっています。

さらに、契約するとその時点で8,000ドル(およそ100万円)のボーナスが支給する太っ腹な条件です。

こうした破格の条件がさらにインフレを加速させていくでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?