書籍「インド密教史」は学びを深めたい密教修行者にオススメ
長い年月をかけて世界を駆け回り密教の歴史を追い求めてきた偉大な学者さんが、学者人生の総括の一冊としてまとめた書籍ということで、敬意を持って読ませていただきました。
自分の著作や論文が英語や中国語に翻訳されていて、各国の仏教研究者がそれを読んでいて、実は各国の学者さんの間で有名人だったそうなのですが、本人がそのことを全く知らず、国際的な学会その他で歓迎されて驚いたというエピソードが微笑ましいです。
そういう偉大な仏教学者さんが生涯をかけて積み上げてきた研究結果が詰まっているのが、この書籍です。
密教(日本、チベット、ブータン)に興味関心があるor実践しており、歴史的経緯に踏み込んで密教を学んでみたい人にはオススメです。
書籍の内容は、本来は大学で勉強する学生さんに講義するための内容なのだそうなのですが、長年密教の実践をしているベテラン(のつもり)のボクにとっても難しい内容なので、学生さんには高度すぎて厳しいのではないかなあと思います。
密教の行法を知っていて、かつ実践している立場から読むと、
あれは、ここから来ているのか!
と気付かされることが多々あります。
例えば護身法に出てくる仏部、蓮華部、金剛部。
密教が始まる頃には、この3セットでお祀りされていたようです。
行法が先か、お祀りが先にあって行法が生まれたのか、それはわからないけれど、インドにおけるその時代の信仰の実践のあり方が、今でも真言宗及び阿含宗(行法の基本が真言宗の三宝院流憲深方)の北伝密教に残っていて、実際に行われている。
こういう時の流れ、歴史のロマンの中にいることに、どう表現すべきかわからない感慨深さを感じます。
ちなみにチベット密教の行法にも、護身法というまとめ方ではないけれど、同じものが残っています。真言は日本訛り、チベット訛りの違いはあるけど、概ね同じなのでわかります。
↓参照書籍は、たぶんこの本。とても俗物的な内容もあるので注意です
その後の、日本には伝わらなかった後期密教の曼荼羅や密教理論の説明も詳しいです。
密教思想の変貌や曼荼羅の拡大・拡張は、金剛界法の延長にあるのですが、「お前ら、どうして、そうなった???」という謎展開をします。
この書籍で曼荼羅拡張の歴史と後期密教の思想を読み進めると、当時の優秀だけど頭が悪い官僚系エリートな僧侶が実績作りのために屁理屈をでっちあげて膨張に膨張を重ねたとしか、ボクには思えないです。
ボクはこんな感想ですが、各自の仏教との関係性に応じて、学ぶところや感じ方が違う書籍になると思います。
学問的な密教の理解について、厚みが増すことは間違いなしです。
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