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団地の狭間に奴がくる。

あの、狭い敷地にみっちり並べられた
まるでドミノの様に建つコンクリートの行列。

昼間は、子供の声やオバハンの声がやかましく、
そこかしこから聞こえて来る生活音や、良いも悪いも混ざったにおい。

そんな昭和の団地で私は育った
高度成長期の終わり頃。

昼間にうじゃうじゃ居た人々は、夜にはそれぞれの部屋へと片付いて
外は、嘘のように“シン…”となる。

団地生活をされた方ならわかるかもしれないが、

建物の狭間って、昼間は気付かないけれど意外と音が響く。
夜は、ヒソヒソ内緒話もそっと歩く足音も
ベランダでの出来事が耳に入るみたいにホン間近に聞こえて来る。

それも、慣れれば苦でもなく
妄想力を養って、むしろ楽しいものになったりする。



ある夜、ひとりで寝ていると…遠くから音が近づいて来た。

ボ ボボボ ボン ボボン
ボボン ボーンボボボボ ボンボンボン 
(重低音のリズム)

ボボーン!ボボーン!

ウイーン
(窓が開く音)

ドン!♫バ!ズンズン!バッ♪ズン♪ジャーンジャンジャジャン!バッ♫

(重低音の正体)

「ぅお〜い‼️ Sッ夫ーーーッッ!」

(S夫?)

スパーーーンッ!

(景気よくアルミサッシの窓が開く音)

「おぉーっ! 今行くで、ちょっ待っててくれやー‼️」

(S夫、登場!)

「おー!」

(S夫のお友達了解)

ズパパン♪ン,ザ、ジャジャン。ドン!ドン!ギャーギャギャ♫ドン♪パン

(車の窓開けっ放し。何某かの流行歌らしいが、音量が大きすぎてよく分からない曲)

に合わせて、

ゥオ〜オーゔぁ〜ヴィンヴェおぁぁンーンンゔぁゔぇごぅぅんダァ〜

(音が大きいせいで音程がわからないのか?元々そうなのか?とにかくジャ◯アンな歌声)

リサイタルは続く…
早く出てこいS夫!お友達もご近所みんなも待ってるぞ!

ガシャン!
デデデデ
デデデデ
デデデ

(鉄の扉を飛び出して階段を駆け下りる)
S夫の家は二階にあるんだね。

バン‼️

(ジャ◯アンの車に飛び乗るS夫。)

ぉお〜♫ゔぉ?なに⁉️
あ‼️
ズパパ♪バンバンド♫ジャジャンジャジャン!

ウイーン
ジャン♪ジャ! ボン、ボボンボン♪ボン♪

(急に歌声が止み、窓が閉まったらしく音楽もフェードアウト)

ボボーン!ボーン!ヴォロヴォロゥゥー‼️

(去って行くS夫とジャ◯アンを乗せた、重低音車。)



そんな昭和の、

(笑いすぎて)眠れなくなった私の思い出話。






その後、S夫がカーチャンにこっぴどく叱られたのか?
お友達が自分のジャ◯アンリサイタルを知ってしまったからなのか?

重低音車がS夫を迎えに団地に来ることは、
二度となかった。




今頃はいいお父さんになってるのかも知れないなぁ。



ありがとうございます!楽しく見て、読んで、愉しんでくださったら嬉しいです\(//∇//)\ 🔔出来るだけ気をつけていますがコメントへのお返事を頂いたのに気づけない事があるかもしれません。もしも失礼があったらごめんなさい😅💦