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よりよい未来をつくるために「好き」を起点に買うこと、働くことを考える-『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』

これまで「お金」を学んだり、積極的に関わることなく現在にいたる私。
5歳の息子が最近、家にある小銭を入れてみたいということで豚の貯金箱を先日買いました。
いずれ息子にお金の話をするときに…という視点でも気になって今回読んでみたのがこちら『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』。
「お金の話」とはあるものの、「お金」を軸にした生き方について書かれています。

投資の世界とは無縁の私も名前だけは知っている「ひふみ投信」で有名なレオス・キャピタルワークス代表取締役会長 投資家の藤野英人さんが14歳の自分に向けて話かけるように書かれている新刊です。(発売1週間で重版がかかっているとか!)

人は生きている限り、無条件で誰かを支えている

最初に「お金」のことという章から始まるのですが、その中で特に印象に残ったのがこちら。

経済は大人だけのものじゃない。子ども、もっと言えば、今この瞬間にオギャーと生まれた赤ちゃんにだって深く関わるものなのです。
僕たちはこの地球上で生きているだけで、大いに経済に貢献しています。
(中略)
僕は世の中の誤解を解きたい。
「働いて稼がなければ経済に参加していない」なんて大間違いだと、声を大にして言いたい。
(中略)
人間は生きている限り、無条件で誰かを支えている。そこには年齢も性別も就労の有無も関係がない。すべての人が誰かを支えている。この相互扶助の考え方、つまり、互いに助け合う「互助」の関係こそが「経済」の基礎です。
経済とは、人と人が支え合う営みのことなのです。
(藤野英人(2021),14歳の自分に伝えたい「お金の話」』マガジンハウス p.39-44)

お金を生み出していない=社会に参加していないような感覚は、育休取得中に私自身も感じたことがあって、一方でその当時であれば赤ちゃん用品などのそれまでに縁遠かった新たな消費をたくさんしていました。
今、5歳になった息子は最近だとお気に入りのアニメの何かを誕生日プレゼントで親や祖父母が買ったり、CMを見てこれがいいと言ったり我が家で何を買うかの意思決定にときどき関わっていたりしています。
つい先日も息子と一緒に親子トレッキングがしたくなって、トレッキングウェアもいろいろ買い換えてしまいました、笑。(トップの画像は息子と家族3人でボルダリングに初めて挑戦した様子)
改めて、お金の動きという視点でみても、地球に生まれ、生きているだけで誰もがお互い影響し合って生きていると当たり前なはずなのに見落としがちな事実も思い出させてくれます。

人間の本音は”売るもの”ではなく、”買うもの”に表れる

お金の使い方の章では「お金を使う、すなわち「買う」という行為には必ずその人の〝意思”が伴います。(p.81)」という話から始まります。

ある人は言いました。「人間の本音は”売るもの”ではなく、”買うもの”に表れる」と。たしかに、会社で働いている大人たちが自社で売っている商品のすべてを本気で好きかは疑わしいけれど、自分のお金で買うものに関しては「欲しいから買っている」という事実は揺るぎないはずです。
(中略)
コンビニに立ち寄って、何気なく手にしたそのペットボトル。それが君自身の”意思”そのものです。好きなものは買うが、嫌いなものは買わない。ピュアな「好き嫌い」が表れる行動、それが買い物なのです。
(藤野英人(2021),14歳の自分に伝えたい「お金の話」』マガジンハウス p.82-83)

この日々の消費というピュアな「好き嫌い」が表れる行動を「好き」目線でみていくのが、私が日々向き合っている「ファンベース」(ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や事業価値を高めるという考え方)だったりします。

何気なく商品やサービスを選ぶ時点から、積極的に選ぶ段階まで、無意識だとしてもそこにはかならず「好き」があるのですごく共感しました。

買い物は一番身近で簡単な「生き方の主張」なのです。
そして、前章にも書いたように、誰かの消費は誰かの売り上げになる。間接的にその会社を応援し、結果的にその会社の成長につながる。
つまり、「未来の風景を変える」という結果に少なからず影響しています。
(中略)
君が手にしている千円札は、”未来をつくる投票券”です。
(藤野英人(2021),14歳の自分に伝えたい「お金の話」』マガジンハウス p.83-84)

日々のなんとなくの選択の積み重ねが社会を作っているという事実。改めてひとつひとつを考えて選択していく大事さを感じます。

価格が成立している時点で、どっちもうれしくて、ありがたい

よく「お金を払っているほうがエライ」という価値観から、お店でふんぞり返った態度をとる人や、下請け会社(とあえて嫌~な表現を使う)に上下関係を感じさせる態度をとるなんてこともちらほらあるわけですが、それについてもこんなお話が。

買い手と売り手が相互に納得できたときに初めて、価格は成立する。価格の成立においては、買い手と売り手のどちらがエライというわけではなくて、どちらも必要な存在。価格が成立した時点で、「お互いにとってメリットがある交換ができるよね」と納得し合えている。この理解がとても重要だと僕は思っています。
(中略)
価格が成立している時点で、お互いの「買いたい」「売りたい」が均等に成り立っているのだから、買い手のほうがエライなんてことはあり得ない。どっちもうれしくて、ありがたい。お互いが得をする関係がそこには生まれているのです。
(藤野英人(2021),14歳の自分に伝えたい「お金の話」』マガジンハウス p.106-108)

「お客様は神様です」的ないきすぎた信条をつきつめていくと、労働時間は延び、労働生産性が落ちていくという日本の働き方の問題点もあると思います。
原点に返ってお互い笑顔でいられるか?というシンプルな問いが大事なんだなと思いました。

仕事や働き方も「好き」を大事にする

その後、仕事についての章では、仕事を「好き嫌い」で選んでいいという話が続きます。外的動機で「有名企業だから」とか「給料が高いから」とかそれで絶えずやる気を発揮しつづけられるならいいかもしれないけど、自分の「好き」とか「楽しい」といった内発的動機を感じられないと結構つらいかもしれないと私も思っています。
藤野さん自身が高校生の頃、将棋部と陸上部と生徒会と応援団をかけ持ちしていたというパラレル部活のエピソードも紹介されていて、もし窮屈に感じるなら古いルールは変えればいいという話が紹介されています。
自分の見えている世界が当たり前になってしまうからこそ、外の世界や書籍にも触れて、常識とされていることを疑う、窮屈に感じるなら変えようとすること大事だなと思います。

最後の章では、先輩を真似して、積極的に取り入れながら、自分ができるようになったら今度はおしみなく人にあげるという話も紹介されています。
私自身も自分の感じた子育てや働き方の課題からプロボノやボランティアなどの活動に関わることで、何かしら持っているできることをどんどん循環させていくことの大事さを経験しました。その経験がなければ、今の仕事にもチャレンジできておらず、いまだにモヤモヤしていたかもしれないなと思います。
「まず自分から与える。誰かから与えてもらったら、きちんと感謝を伝える。そして、他の誰かにまた与える。(p.195)」
お金も、情報も自分だけのところに貯めようとすると澱んでしまう。どんどん水のように循環させることが大事なんだなと改めて思いました。

14歳に向けてという題名ではあるけれど、大人も知っておきたい考え方や生き方について書かれている一冊です!

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