エジプシャン・フォークロアダンス【ハッガーラ】

マフムード・レダは、エジプトの様々な地域のダンスをフィールドリサーチの一環で、地中海西側の港湾都市であるマルサ・マトルーフに到着します。

地元の民族の踊りとして、【ハッガーラ】を紹介されました。

ハッガーラは、隣国リビアの移民から伝わったリビアの伝統的な踊りだとされています。

レダ一行が鑑賞したハッガーラという踊りは、結婚式のエンターテイメントとして女性プロフェッショナルダンサーにより踊られるものでした。

ハッガーラという言葉は、女性ダンサーのことも指します。

女性ダンサーは、女性のみが集う家の中で準備を始めます。

レダは男性であったので家の中に入ることが出来ず、結婚式に参加する男性達と共に屋外で待機していたので、室内で何が起こっているかを知ることは出来ませんでした。

結婚式の為に集った男性達は待ちきれず、1カウントに手拍子が一回というとてもシンプルなリズムで手拍子を打ち始めます。

女性ダンサーは手拍子の音が大きくなり鳴り響くのを待った後、屋外に出て行き彼らの為に踊り始めます。

男性達は3−5人ずつのグループに分かれ、手拍子を打ち続けます。

ダンサーは手拍子が一番大きなグループの所に向かい、グループの男性達の為に踊ります。

他のグループが負けじと大きな手拍子を打ち出すと、ダンサーはそのグループの方へ向かい踊り始めます。

ある男性は立ったまま、ある男性は興奮を抑えきれずに立膝をつき、ある男性は横になりながら手拍子を打ち続けますが、彼らは踊ることはありません。

男性達はダンサーの気を惹く為に手拍子を熱烈に打ち続け、ダンサーはグループの間を渡り歩きながら踊り、エンターテイメントは一時間程で終了します。

ダンサーの動きはとてもシンプルで、砂漠地帯の砂の上では足をスライドするにはむかない為、足を上げ下げするステップになったようでした。

※ハッガーラの語源とされる1つは、スキップやホップという意味を持つハガル。もう1つは、砂が暑過ぎて飛び上がるように歩くシナイが原産国の鳥であるハガル。だそうです。

ハッガーラ(女性ダンサー)の社会的役割にはいくつか報告がされており、レダが結婚式で鑑賞したハッガーラは、エンターテイメントの為に雇われたプロフェッショナルダンサーであり、新婦でもなく、若い女性でもありませんでした。

フォークロアダンスのフィールドリサーチを続けていく中で、レダはフォークロアダンスのステップもフォークロア音楽の旋律も繰り返しが多いという結論に至ります。

ハッガーラの場合、音楽は同じリズムの手拍子が繰り返されるのみであり、踊りは同じステップ(ハッガーラのステップ)が繰り返されるのみでした。

フォークロアダンスは、自ら参加して他の人々と共に歌ったり、手拍子をしたり、踊ったりして皆んなで楽しむもの。

このままでは舞台芸術にはなりません。

【私の作品はフォークロアではない。私の芸術はフォークロアにインスパイアされたものである。私の作品は、その土地の人々の踊り、背景となる物語、迷信、音楽、人々の生活からインスピレーションを得て出来上がった芸術である。】-マフムード・レダ-

レダは、ハッガーラをステージパフォーマンスに相応しい演目にする為、既存のイメージや背景はしっかりと残しつつ、ハッガーラ(女性ダンサー)のステップには伝統的ではない動きを加え、男性ダンサーにも動きを与え、音楽は手拍子ではなく、ハッガーラ用の音楽を制作しました。

衣装はリビア人女性とマルサ・マトルーフの女性の洋服を参考に制作しました。

このように、マフムード・レダは、様々な地域のフィールドリサーチで知り得たフォークロアダンスに独自のインスピレーションを加え、400以上の振り付けを生み出したそうです。

【ハッガーラ】映像
(スペインのダンサー・ネスマ監修)


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