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家庭内での学びの環境のデザインと習慣化

前回に引き続き、「子どもの興味に応じて生活学習環境を整え、日本や日本語の習得をポジティブに捉えるよう働きかける」ためのストラテジーと実践例を紹介していきます。

ストラテジー2: 生活の中で日本語に触れる機会をデザインし、習慣化する

(1)読み聞かせの習慣化
子どもの言語習得における読み聞かせの効用というのは、特に目新しい情報ではないかと思いますが、私自身も、継承日本語の家庭内サポートという点から「1に読み聞かせ、2に読み聞かせ、3にも読み聞かせ!」だと信じています。読み聞かせは、単に本を読んで聞かせる機会というのみならず、本を媒介にして「子どもを観察して、子どもが何に興味があるのか、何を既に知っていて何を知らないのかを把握」する絶好の機会でもあると考えています。
「読み聞かせ」については、あまりに言いたいことがありすぎるので、またいずれ別の機会を作って書いてみたいと思っています!


(2)家庭内の言語使用ルールを決める
バイリンガルあるいはマルチリンガル家庭内の言語使用ルールについて、どの様な方法が継承語教育の観点から最も効果的であるかは諸説ありますが、それぞれの家族に合ったルールを設けて、家族内で言語使用についての共通認識を持っていることは大切ではないかとつくづく思います。(というより、そのようなルールを設けるための事前の話し合いとお互いの考えのすり合わせが大切、と言えるかもしれません)

我が家では、日本語(あるいは英語)を使用する相手、時、場を固定化する様にしています。例えば、私(母親)は子どもには日本語のみで話しかけます。夫(父親)はアメリカ出身ですが、大学時代に日本語を学んでいたため、日本語はある程度理解できるものの、普段の家族内の会話では英語を使用しています。つまり、私と夫、夫と子ども達は英語で話し、私と子ども達は日本語で話します。

私は本の読み聞かせも日本語のみで行い、英語の本は子どもに向けては全く読みません。ただし、子どもが日本語を学ぶのと同じように、自分も英語は学習中であるため、自分のために英語の本を読むこともあること(実際は在米歴も長く、英語で読むのはあまり苦にはなりませんが、子ども達には内緒です!)、だから一緒に頑張ろうというメッセージを伝えています。時々、子どもに英語の発音や表現の使い分けについて質問することもありますが、親に教えられることがあるというのが嬉しいようで、得意げに答えてくれます。

(3)生活の中の隙間時間を活用する
我が家の男児は二人とも、とにかく体を動かすのが好きで、最近では興味も多方面に広がってきて、日本語の「勉強」のために机に向かわせるのは至難の業です。教員でもある身としては恥ずかしい限りですが、自分の子ども相手だと、はっきり言ってどうやってやればいいか、想像もつきません!
そのため、動き回れず、他にあまりやることがない隙間時間を日本語に触れる時間に転化できないかと考えました。具体的には、車での移動中とお風呂の時間です。

アメリカの中堅都市に住んでいるため、習い事や買い物など移動のほとんどが車頼りという生活。最近では、車内にはいつも日本語の本を何冊か、最近は、興味を持ち出した漢字が書かれているカードを忍ばせておくようにしています。特に、これを読めとかあれをやれという指示はしませんが、移動中は暇なので、気づけば本や漢字カードに手を伸ばしています。長時間のドライブの時は、オーディオブックで、お話をかけっぱなしにすることもあります。(気分が乗らない時は「聞きたくない!」と一蹴されることもありますが)Audibleでは最近日本語コンテンツがたくさんアクセスできる様になり、重宝しています。「西遊記」や「星座や星の話」がお気に入りですが、大人も一緒に楽しめます。

また、お風呂には、日本の100円均一で購入した、日本地図とあいうえお表(最近では、漢字表)を貼っています。とはいえ、お風呂はリラックスタイムなのと、大抵私自身も疲れ切っているので、明示的に文字や単語を教えたりはせず、あくまで興味喚起と言語景観を整えるため。もちろん子どもから質問があれば答えますし、余力がある時は、描かれている内容に基づいてその場でクイズやゲームを作ることもあります。クイズは親が出題するだけではなく、子どもにも出題者になってもらいます!

言語習得は一朝一夕に達成されるものではなく、ましてや、アメリカではマイナー言語である日本語を継承語として学ぶ子ども達(そして、その保護者)の苦労は並大抵のものではありません。だからこそ、毎日の生活の中で学びが起こりやすい環境を整えて習慣化することで、親も子もなるべくストレスを感じず、あくまで楽しみながら、継続につながってくれればと願っています。
何らかのご参考になれば幸いです!
 

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