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ブルー・インク(川上未映子著)を読んで  

春のこわいものに5番目に収録されているブルー・インク。
これは私の不完全な解釈と感想です。

僕は基本、物事を考えすぎない。良い意味でも悪い意味でも。
自転車のシールをある場所も見えればどこでも良いとか、
学校に忍び込む時の服装だったりでそう感じた。


一方で彼女は、事をする前に予め結果とか可能性を考えるタイプだ。
だから自分の感情を吐露したものを紙に残して、失くした時のことまで考えるのかもしれない。人がそれを読んだとして、その後のネガティブな結果を予想して怖くなるのかもしれない。


しかし彼女は、魂を込めた手紙をそんな僕に渡した。
ただ万が一失くされた時のことを考えて名前も記さなかったし、
内容も非常に抽象的なものにした。
誰が書いたが予想されないように。


そして僕はそんな2通目の手紙が失くした。
つまり彼女の魂は受け取られた手からすり抜けて、どこかに行ってしまった。
そして見つけてもらえなかった。


魂が失くされた彼女は、もはや今までの彼女じゃない。
彼女は見つけてもらえず、だから、手紙を見つけられないと分かった時の彼女の声は、もう彼女の声じゃないように僕は聞こえたのだと思う。
だから僕にレイプされている時も、すでに魂が抜けているので、ただぼんやり空中を見るだけだったのかもしれない。


少し遡って、手紙を校内で探している時、暗室の話があった。
昔この校舎の暗室で、誰にも気付かれずに暗室に閉じ込められて亡くなった女の子の話。その時、彼女は「鍵がかかっていなくても、あるいは同じ事は起こったかもしれない。」誰かにちゃんと見つけてもらえる人と誰にも見つけてもらえない人がいる、どこにいるかは関係ないと彼女は言った。
それに対し僕は、自分が閉じ込められていなかったら、動けるなら、自分で助けを求めに行くよねといった。
彼女は答えなかった。
彼女はそれができないから。
そして僕は、閉じ込められてないのに、動けるのに助けを求めない人が存在する事に気づいていない。

そしてその翌日彼女は学校にこなかった。たぶん亡くなったからだと思う。

何となく感じたのは、動けるのに助けを求めに行かない人が存在する事を知らない人が無意識に人の気持ちを傷つけて殺してしまうのかもしれない。

魂を込めた手紙を失くしてしまうその行為は、無意識に相手の気持ちを蔑ろにしてしまい、最終的には気持ちを殺してしまうのかもしれないと思った。

でも正直考えれば考えるほど、この解釈が間違っているような気もするんだけど、、、でもあっていたら、私は相手の考えが理解できなくても、理解する努力をしようと思った。どうしてそう思うんだろう?どうして泣くんだろう?どうして怒るんだろう?どうしてそういう行動に至ったんだろう?疑問で終わらせず、その先を考えたい。関わる人全員にはできないけど、家族とか大切にしたいと思う人には、しっかり理解する努力をしたい。

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