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言い訳の記号 - 2020年12月8日のニュースレター

年末になると「今年の◯◯」や「2020ベスト◯◯」などのニュースが増え
そんな事あったね、や、やっぱり選ばれたなどと振り返る事が多くなりますね。

私も、大好きな俳優の佐藤健さんが
東京ドラマアウォードで助演男優賞を受賞したり
modelpressの「今年の顔」男性編に選ばれたりと
嬉しいニュースを目にするようになってとても幸せです。

2020年を代表する人、といったアワードは
日本ではGQ japanが「GQ MEN OF THE YEAR」、
日経ウーマンやVogue japanが「Women of the Year」を毎年発表していますが、世界的に有名なのは、
米国TIME誌の「Person of the Year」です。

これは1927年から続いている、
TIME誌の編集者が、良くも悪くもその年の出来事に最も影響を与えた人物、グループ、ものを特集するというコンセプトで始まりました。

過去にはマハトマ・ガンディー、フランクリン・ルーズベルト、ジェフ・ベゾス、エリザベス2世やアキノ大統領など、その年のニュースの中心にいた人物や、
1982年「The Computer」
2006年「You」
2017年「The Silence Breakers」(MeToo運動に関連して)
などが選出されています。

2020年のPerson of the Yearは現在投票を受付中で、
12月10日に発表予定です。


ボリス・ジョンソン、ドナルド・トランプ、ジャシンダ・アーダーンなどの政治家達や、
サンディー・ピチャイ、エリック・ヤン、ジェフ・ベゾスなどのCEO達、
ビヨンセ、BTS、ビリー・アイリッシュ、アリアナ・グランデなどアーティスト達、
エッセンシャルワーカー、TicTokクリエイター、Black Lives Matterアクティビスト、
他にも多くの作家やスポーツ選手、CEOやアーティスト、アクティビストや
文化人が候補に上がっています。


今日ピックアップするニュースは
TIME誌が今年創設した「Kid of the Year」のファイナリストの記事です。

「Kid of the Year」は、8歳から16歳までの5,000人以上のアメリカ人の中から選ばれた、最年少世代の新進リーダーの特集です。

史上初の「Kid of the Year」に選ばれた子は
いったいどんな活動をしているのでしょうか?


※本日は7000字近い長文になってしまいました…

【本日のピックアップニュース】


過去92年間、TIMEはPerson of the Yearを選出してきました。

2019年には、当時16歳だったグレタ・トゥーンベリが史上最年少で受賞し、25歳以下の個人としては初の受賞者となりました。

気候変動を止めるための彼女の運動は、
近年の、他の世界を変える運動の中でも今日の若者が大きな影響力を持ち、
その影響力で、自分たちのビジョンに合った世界を形成していることを表しています。

今年、TIMEはニコロデオン(アメリカで人気の『スポンジ・ボブ』など
幼児・児童向け番組を専門とする放送局)との提携により、
アメリカの若い世代を代表するリーダーを選ぶ「Kid of the Year」を初めて表彰しました。

米国を拠点に活動する5,000人以上の候補者を対象に、
今年のポジティブな影響力と、今後もリーダーシップを発揮していく審査を行い、最終候補者を絞り込み、究極の「Kid of the Year」を選出しました。

最終選考に残った5人は、
危機に瀕している人々のために食料を育て、
障害を持つ子供たちのためにより良いおもちゃをデザインし、
人種的正義について新しいコミュニケーションを始めています。

「Kid of the Year」に選ばれた15歳の科学者であり発明家でもあるGitanjali Raoは、その卓越したリーダーシップが際立っていました。

Raoさんは、人工知能やカーボンナノチューブセンサー技術などの科学的なツールを研究し、いじめや水の汚染など、日常生活で目にする問題に応用しているだけでなく、
他の子供たちの好奇心を刺激する方法を教え、イノベーションの世代を作ることを目指しています。

アカデミー賞を受賞した俳優であり、国連難民高等弁務官特使でもあり、TIMEの寄稿編集者として活躍するアンジェリーナ・ジョリー氏が
Raoさんをインタビューしました。


Kid of the Year【Gitanjali Rao, 15】

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「観察し、ブレインストーミングし、
研究し、構築し、コミュニケーションする」

これは、才能ある若い科学者・発明家のRaoさんが、
俳優であり活動家でもあるアンジェリーナ・ジョリー氏に、
コロラド州の自宅から、学校の休憩時間に彼女のプロセスについて語った言葉です。

彼女は、汚染された飲料水からオピオイド中毒やいじめに至るまで
テクノロジーを利用して課題を解決する彼女の仕事について、
また、世界中の問題を解決するために若いイノベーターのグローバルなコミュニティを作るという彼女の使命について話しました。

Rao:
「私はいつも誰かを笑顔にしたいと思っていました。
それが毎日の目標でした。
そしてそれはすぐに、“どうしたら自分たちが住んでいる地域にポジティブさとコミュニティをもたらすことができるだろう”ということに変わっていきました。

小学2年生か3年生の時には、
科学技術を使って社会を変えるにはどうしたらいいかを考え始めました。

10歳の時に両親に
『デンバーの水質研究所でカーボンナノチューブセンサーの技術を
研究したい』と話したんですが、
母は『え、なに?』と言うだけでした。

この仕事はもうすぐ私たちの世代の手に渡ることになります。
他に誰もやらないのなら、私がやるしかありません。」

そして2017年、11歳の時にRaoさんは
「アメリカで最も優れた若き科学者」に選ばれます。

アメリカでは財政破綻した街で上水道施設が劣化したことで
水道水が鉛によって汚染されてしまうという事件が2015年ごろに起こり、
大きなニュースになりました。

Raoさんはこの事件を受けて、誰でも簡単に水の鉛汚染を検知できる装置を開発したのでした。

参考:

Raoさんの最近の発明のひとつが、インターネット上のいじめを抑制するアプリです。

これはKindlyというサービスで、人工知能技術を使っていじめを早期に発見することができます。

アプリとChromeの拡張機能があり、いじめと思われる言葉をエンジンが取り込んで、似たような言葉を検知して投稿者に、編集するかそのまま送るかの選択肢を与えてくれます。

Rao:
「目的は罰することではありません。
ティーンエイジャーである私は、ティーンエイジャーが時々怒り出す傾向があることを知っています。

その代わりに、自分が何を言っているのかを考え直す機会を与えて、
次に何をすべきかを知ることができるようにしました」

アンジェリーナ・ジョリーが
「人々に気づかせ、成長させるためのツールとしてのテクノロジーの話は新しくて、これまでとは異なるもののように思えます。

先見の明のある若い女性の発明家がいるということはとてもエキサイティングなのですが、どんな影響がありますか?

私は、女性は優秀だと思っていますが、
科学技術分野では女性が非常に少ないですよね。」

とたずねると、

Rao:
「私がテレビで見ているのは、年配の白人男性が科学者になっているものばかりです。
私にとっては、性別や年齢、肌の色などの役割が決められているような気がして不思議でした。

私の目標は、世界の問題を解決するために自分のデバイスを作ることだけでなく、他の人も同じように動いてもらうことにシフトしています。

なぜなら、自分ひとりでやるのはなかなか難しいからです。
だから私は本当にこのメッセージを伝えたいのです。

私にできることなら、あなたにもできるし、誰にでもできる、と。」

彼女は今、農村部の学校やSTEM組織、世界中の博物館、上海国際青少年科学の技術グループや、ロンドンの王立工学アカデミーといった組織と提携して、イノベーション・ワークショップを運営しています。

Rao:
「私たちの世代は、これまでに見たことのないような多くの問題に直面しています。
しかし同時に、いまだに存在する古い問題にも直面しています。

例えば現在、新しい世界的なパンデミックの真っ只中にいますが、
同時に古くからある人権問題にも直面しています。
気候変動やテクノロジーが助長するいじめなど、私たちが生み出した問題ではなく、今解決しなければならない問題があります。

何よりも必要なのは、
自分たちが情熱を持って取り組んでいることを一つだけ見つけて、
それを解決していくことだと思います。

すべてが違いを生むのです。
焦って大きなことを思いつかなくてもいいんです。」


「Kid of the year」ではRaoさんの他に、4人がファイナリストとして選ばれました。


Finalist【Tyler Gordon, 14】

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Tyler Gordonさんは、すでに多くの困難に直面してきました。

ビタミンD欠乏症のために足と腰の骨を折ってしまい、
2年近く車椅子を使わなければなりませんでした。

彼は生まれつき耳が聞こえず、5歳の時に手術を受けて聴力を取り戻しましたが、今でも吃音で話しています。
そのため小学校ではいじめにあって、ほとんど話すことができませんでした。

しかし10歳の時に母親が絵を描くのを見て、自分も描いてみようと思い立ったGordonさんは、学校の美術コンテストで校長先生の肖像画を描き1位を獲得しました。

それ以来4年間で500枚以上の黒人の肖像画を描いてきており、最近では、次期副大統領のカマラ・ハリスが、Gordonさんに「素晴らしい」「才能がある」と伝えました。

彼の大ブレイクは2018年、NBAスターのKevin Durant選手の母親が
Gordonさんが書いた選手の肖像画を300ドルで購入して、それがバズったことがきっかけでした。

セレブがコミッションのために肖像画を求めたので
ジャネット・ジャクソン、ケビン・ハート、ジェニファー・ロペスなどの肖像画を描くようになりました。

2019年には、セントラルパーク・ファイブの肖像画が10万ドル以上の値がつき、2020年のグローバル・チャイルド・プロディジー賞を受賞しました。

「時々、言葉が出てこない時があるので、アートを通して話すんです」
とゴードンさんは言います。

絵を描くことで、彼はいじめを克服するのに役立っています。


Finalist【Jordan Reeves, 14】

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Jordan Reevesさんにとって、四肢の違いは、
彼女がよりアクセシブルな世界を思い描くのに役立っています。

14歳のデザイナーであり活動家でもあるReevesさんは、生まれつき左腕が肘の下までしかなく、この身体的な違いが彼女のデザインへの情熱に火をつけました。

過去4年間で彼女は、3Dプリンターで生分解性の”キラキラ”が噴出する
子ども用の義手をつくり、Mattel社のような企業のために身体的な違いを肯定するおもちゃを作るためのコンサルティングを行っています。
そして障害を持って育ったことから、何を学んだかについて回顧録を書いています。

彼女は、優れたデザインは障害を持つ人々に力を与える手段だと捉えており、彼女と母親は共同で、Born Just Rightという非営利団体を設立しています。

「障害を持つ子供たちの多くは、世界に対して異なる視点を持っています。

私たちは問題解決をしながら育ってきたので、このような素晴らしいデザインの発想があるんです」と彼女は言います。

しかし、子供たちが直面している最大の障壁の一つは、
イノベーションを起こす自信を見つけることだと彼女は言います

「自分を信じることはとても大切なことです。
自分を疑わず、他人がどう思うかを考えずに、がんばってみてください。」


Finalist【Bellen Woodard, 10】

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Bellen Woodardさんはまだ10歳ですが、インクルージョンの使命を担っています。
彼女は、幅広い肌の色を反映した独自のクレヨンを作り、世界初のクレヨン活動家の称号を得ました。

2019年春、Woodardさんは多様性クレヨンとスケッチブックを全国の学童に4万ドル以上寄贈した非営利団体「More Than Peach」を立ち上げました。

Woodardさんは、自分のメッセージがこんなにも早く広まったことに驚いています。
クレヨンのことを先生に話したことから始まり、学校の他の生徒から声をかけられ、今では全国の学校から、クレヨンを配布してほしいと電話がかかってくるようになりました。

3月には彼女の活動が評価され、バージニア州議会から特別表彰を受け
彼女のクレヨンの詰め合わせは、バージニア州歴史文化博物館の常設コレクションに加えられています。


Finalist【Ian McKenna, 16】

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Ian McKennaさんは3年生の時、学校で4分の1近くの子供たちが家で十分な食事が取れていないことを知りました。

彼は協力したいと思いましたが、地元のボランティア団体からは「まだ若いから」と追い返されてしまいます。

自分で解決策を見つけることにした彼は、何年も前から母親と一緒にガーデニングをしていたので、その野菜を炊き出しに回すことを思いつきました。

そして、学校に畑を作って困っている子供たちが食べ物を持ち帰ることができるようにしたらどうだろうか?と考え、学校に畑のスペースを確保するよう説得し、近所の人々に、種や機材の寄付を求めました。

7年後の今、McKennaさんのギビング・ガーデン・プロジェクトは
彼自身の裏庭の畑に加え、5つの地域の学校にまで拡大し、
2万ポンド(約25,000食分)以上の有機野菜をオースティンの家庭やフード・パントリーに提供しています。

COVID-19で自粛を余儀なくされたとき、McKennaさんは自宅で100食分の食事を作って空腹な人々に配るようにしました。

ソーシャルディスタンスの影響で、ボランティアがコミュニティガーデンで
働くことができなくなったとき、彼はオンラインで、ガーデニングのホットラインを提供し、他の家族が家庭で栽培できるようにしました。
珍しい野菜の調理法を知らない人がいることに気付いた彼は、バーチャルな料理教室を始めました。

ガーデニングが彼のフォーカスの中心ですが、McKennaさんは常に、空腹な人々を助けるため新しい方法を探していると話しました。

***

Kid of the Yearに選ばれたRaoさんも、ファイナリストの4名も
影響力があるという点から選ばれているので彼らの活動の波及効果は
凄まじいものがありますが、

彼らに共通する原動力は、
自ら見つけた「好きなことをしている」点だと思います。

“しなければいけない”ことから起こっていることなんて
ひとつもないのが見事です。

選ばれた5人のプロジェクトの中身を知ると、
売上や、周囲の評価や、小手先のテクニックなんて
やりたい!や 好き!に比べたらちっぽけで浅はかで
少し恥ずかしいものに見えてきてしまいました。


このニュースレターでは、「年齢はただの記号」というテーマで
何回かニュースを取り上げています。

参考:

今回ファイナリストに残った5名がたとえば20歳だったら?30歳だったら?
あなたはどのように感じるでしょうか。


何歳であっても彼らの活動は素晴らしいものですが
それは全員が年齢を言い訳にしていないからだと思います。

McKennaさんのように年齢を理由にボランティアを断られても
それを原動力にして、自らのフィールドでできることはないかと探し、
結果的に25,000食という、ものすごい量の自分の畑で作った野菜の食事を提供できるようになるのです。


若さが影響を与えることがあるとするならば、
それは年齢や、言語や、予算や、性別といった記号における言い訳をしていないその純粋さです。

Raoさんの言うように
「何よりも必要なのは、自分たちが情熱を持って取り組んでいることを一つだけ見つけて、それを解決していくこと」で

「すべてが違いを生む」のだから
「焦って大きなことを思いつかなくてもいい」と
自分を受けいれることなんじゃないかなと若きリーダーたちに教えてもらったのでした。

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