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超入門!現代文学理論講座

 高校時代に先生に勧められて読んだ本だと思う。最近再読したがなかなか難しく、当時これをちゃんと理解できていたかは定かではない。けれど、文学って面白いって思った記憶があるので、その時なりに自分に落とし込んでいたのだと思う。

感想

 『超入門!現代文学理論講座』は4つの現代文学理論を実際の文学作品を用いておそらく高校生向けに解説している本である。作家論と作品論を結び付けて考えることが多い学校教育での国語とは別の読み方の紹介になっている。取り上げられているのは、〈ロシア・フォルマリズム〉、〈言語行為論〉、〈読書行為論〉、〈昔話形態学〉の4つである。

 生きてきて本当に耳にしない言葉だったし、象徴的で受け入れにくい概念も多く難しかった。「期待の地平」〈昔話形態学〉が一番面白そうな理論だと思った。筒井康隆の『文学部唯野教授』も読んでみたい。

以下4つの理論について考えたことを軽くまとめる。理論そのものは本文参照。

1.〈ロシア・フォルマリズム〉

 一般的な国語教育を批判していく谷川俊太郎の『いるか』の例が強烈だった。形式に着目するという点では詩の押韻なども分析対象何だろうか。ラップもとりあげたら、形式という点からみても面白そうだと思った。ラップが文学か問題はあるけれど。

 「異化作用」については、たまに見かける「現代アートよくわからない」というのがある程度その意図がわかってすっきりした。一方で、常識を壊すという段階を踏む関係上、そのアートに想定される常識を理解しているものでないと、古い漫画の社会風刺を理解するのが難しいように、その意図を理解するのは無理なのではないか、高度な教養がいるなと感じた。

2.〈言語行為論〉

 たとえば、「醤油どこ?」と聞いたとき、聞いた人は単純に醤油のある場所が知りたい場合と「醤油が欲しいので持って来てほしい」という場合のがあるだろう。そのような言葉を使うときのルールについての理論だった。

 この本では作品の受け取り方の理論を多く取り上げているが、〈言語行為論〉だけ、言語を取り上げており、受け取るのだけではなく、能動的に使う側での理論なので少し他とは違うと思った。言葉を文字通り受け取るだけでは、空気読めなくなるというのがわかる内容であった。

3.〈読書行為論〉

 本文の理論の中で一番難しかったと思う。読者と作品の関係について述べられている理論である。

 現在では本のあらすじや帯、作者、出版社、装丁などからある程度の前情報を得ることができるようになっており、全く新しいものを読み進めることは少ない気がする。全く新しいものを読むより、レビューを見たりして「良い」という前情報があるものを読みがちなのは、読書を通じて少しでもいいものを読みたいということだろう。何をもって良いとするのかはわからないが。

4.〈昔話形態学〉

 本書の理論の中で最も興味深いものであった。「物語あるある」をまとめたものになっていてどの機能も、「あの小説のことだ!」となって読んでいて非常に面白かった。物語のプロットにはある程度のパターンがあるのではないかと思っていたが、昔の人によって既にまとめられていた。自分で読んだ思い当たる本が豊富で理解しやすくとてもよかった。刑事ドラマやラブコメのヒット作から物語のパターンを同様に抽出できれば新しいものを作る手掛かり位なるのではないかと思う。

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